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メアリー・カサット

Mary Stevenson Cassatt001

この絵はメアリー・カサットの芯の強さをよく表している。
女性の眼差しが確固たる意志を表明している。
わたしは見に来た、という眼力を充分に感じ取れる。

彼女はアメリカの富豪の娘であったが、絵画の勉強にやって来たパリで学校に入れてもらえなかった。
試験に不合格であったわけではない。
女性である為に、門前払いを受けたのだ。
19世紀のパリである。
エアリー・カサットは、学びはルーブル美術館で充分と言って作品模写に励む。
観ることで学ぶという。その強い姿勢が窺える。
この自立心はもうすでに男性以上ではないか、、、。

同時代の女性画家(印象派)に、フランスではベルト・モリゾがいたが、彼女はフラゴナールの家系でもあり、師匠にはコローがいた。
彼女の方は、かなり恵まれているか。

しかし、メアリー・カサットもその後印象派に関わり、(結局彼女のお陰でアメリカに印象派が紹介される)そこでピサロ、ドガに絵を学ぶ。
特に、ドガと自分の視座の近いことを認識する。
自分たちは、身近な日常のありのままの現実をもっとも重く見る!
(恐らくこう考えたはず、、、)。

Mary Stevenson Cassatt002

この絵の絶大な魅力は何か、と考えると「濃密な距離」にある。
そこに生じている空間が非常に濃密なのだ。
母の目と子供の目の間の作る時空である。
互いに問いかけ合う関係が重く息づく、、、。
そこには、親密な情もあるが絵空事ではない、無意識的で生理的な嫌悪と、生々しい葛藤も渦巻いている。
自分の感情を静かに内省してみれば、これは誰にも否定は出来ないはずだ。
カサットの絵には、そうした「疲労」が描き込まれている。
その点だけでもわたしは彼女の絵の信奉者である。
母子関係とは、本当に生易しいものではない。

それは「人間」(たかだか200年の概念)の前にある生物学的ヒトとしての迷いと寄る辺なさからくる、疲れである。
(吉本隆明はかつて親子関係を本質的に互いが互いを滅ぼし合う関係であると騙っていたが、余りに大きい説得力に絶句することも屡々である)。


「母子」だけを主題としたのはカサットが初めてではないか。
宗教画や風俗画の一部に添え物として描き込まれることは、それまで~歴史的にあったにせよ。
(間抜け顔した天使像などにもよく見られる)。
まともに写実された歴史は彼女以前には、ない。

「母子」関係の重さは計り知れない。
「母子」関係はやがて成長とともに消えゆくものとは言えず、強固に精神の基調を形作り、一生に深い影響を及ぼすことが多い。
宿命との闘いの始まりの図である。
カサットの絵は、むずがっている可愛らしい子供をあやす微笑ましい母子愛が優しく描かれているだとか、、、いい加減に軽く見ることは許さない毅然とした崇高さがある。

Mary Stevenson Cassatt003

本当に日常の写実である。
彼女は理想的な姿は描かない。綺麗ごとで胡麻化さない。
現実の母子関係は(父子もそうであるが)、日々闘いでしかない。
牧歌的で呑気なものでは決してないのだ。
母子の互いの探り合いを、とても細やかな神経で描き切っている。

それによって研ぎ澄まされた美で湛えられている。
畳みこまれた母子関係~時間が一見何気なく描かれている。
そこに魅了される。

これは、恐らく彼女が姉の看病、母親の介護を長年しながら、女性ということからくる差別とも闘い、果敢に絵を描き続けてきたことで培われた意志の強さと洞察力によるものだと思われる。
ちなみに彼女自身には子供はおらず、兄夫婦や周囲の子供を鋭く観察した過程に生まれた成果である。

Mary Stevenson Cassatt004

彼女はフランスで日本の浮世絵を鑑賞し、影響を受ける。
当時の印象派の画家たちは少なからず、浮世絵の平面性、形体の単純化・強調、色彩に衝撃を受けていたが、彼女もその例外ではない。
しかも題材的にも、母子像の描かれたものに惹かれるところがあったようだ。

銅版画の線の明快な美しさがとても活き活きしていて気持ちが良い。
まるで浮世絵を見るような心持になる。
才能の確かさも改めて確認した。

時折、画集を開いて観てしまう画家である。


プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
コメント、メッセージ頂ければ嬉しいです。

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