バニシングin60″

Gone in 60 Seconds
1974年
アメリカ
H・B・ハリッキー監督・製作・脚本
黄色の1973年型フォード・マスタング、、、エレノア(この車のコードネーム)
H・B・ハリッキー、、、メインドリアン・ペイス(保険会社の属託調査員、車窃盗団のボス)
マリオン・ブシア、、、パンプキン
ジェリー・ドージラーダ、、、ユージーン
”LOCK YOUR CAR IT MAY BE GONE IN 60 SECONDS”
というネオンが劇中に流れる。
鍵をかけないと60秒で車が盗まれるよ、、、という警告だが、実際にここに出てくる車窃盗団は、鮮やかに60秒以内で高級車を事も無げに盗んでゆく。これ程簡単に、、、?と思えるものだ。
彼らは盗む予定の車種にそれぞれ女性の名前(コードネーム)をつけて盗んでゆく。
この映画は恐らく、途中で諦めず何があろうと最後まで頑張り通せば必ず願いが叶うという教育的意味をもったものであろう。
まさしく「ゲッタウェイ」の最後と同等の爽快感である。
こちらは最後の最後で、逃走の果てにボロボロになったエレノアをガソリンスタンドで他の女性のピカピカのものと差し替えてしまう。洗車して出てきた見るも無残な黄色の1973年型フォード・マスタングを自分の車だと思って気絶する女性は気の毒に、、、。
警察を40分以上のカーチェイスの果てに振り切たところで、希のエレノアを運よく見つけてすり替える。そして、さっさと仕事~盗みを完了させてしまう。
クールなギャングだ。
こんなギャングになってみたいと一度は思ったことはないか?、、、わたしは、特にないが、、、(笑。
エンドクレジットの際、H・B・ハリッキーの「夢を叶えてくれてありがとうという」、、、と出てくるところ、この主演監督がもっともやりたかったことなのだと分かる。
(子供の頃からの夢だったりして)。
ファッションスタイルが、如何にも70年代中盤のアメリカ(南カリフォルニア)という感じで、、、暑苦しい。
カーチェイスも大排気量の如何にもガソリン垂れ流し的な車同士の粗削りで武骨でダイナミックなものである。
この年代のアメ車好きには堪らないものだろうが。
ある意味、とっても物質主義で、贅沢で、素朴な時代である。
(劇中、凡そ100台の車がスクラップとなって逝く、、、)。
ペイスは盗難保険に入った車しか盗まない。
保険未加入で盗まれたらそれまでである。
ポリシーがある。
ある日、クライアントから、希少な高級車ばかり頼まれる。
40台の車を次々に盗んでゆくが、一台トランクから大量の麻薬(ヘロイン)が発見される。
グループの一人がそれを売りさばき金にしようと提案するも、ボスのベイスは車ごとそれを燃やしてしまう。
それに腹を立てたその部下が警察に密告してしまい、ベイスは盗みに入るところを待ち伏せされることに、、、。
それからが、この映画の見せ所!
勿論、CGなど皆無、本物の事故としか見えないところもあり、ほんとにフィジカルな作りを久しぶりに見る思い。
マスタングのタフさ加減も十分にアピールされており、フォードの宣伝にも一役買ったか(笑?
このH・B・ハリッキーという人、元カースタントマンであったということから、存分に40分以上の尺を取って、延々とドライビングテクニックを思う存分披露する。
まさにそのための映画である。
いくら窮地に立たされ、追い詰められても、発砲されても、怯まない。
必ずその包囲網の抜け道を見つけ出し、突破してしまう。
張り詰めたカーチェイスは続くのだが、、、
途中、6回くらい不意に寝た(笑。
直ぐに起きるが、、、
いくら凄いといっても、車の追いかけっこである。
別にそれが飛行機であっても、40分の間には、途中コックリコックリくるものだ(爆。
画面の中で激しい動きがあっても、その感覚刺激がエモーショナルなものに共振し連動していかないと、余りに長時間だと単調に感じてきて睡魔を呼び込んでしまう。
実際、わたしは映画の途中でよく寝るが、カーチェイスの時などが多い。
「激突!」みたいなものになると目を凝らして観ているのだが、あれは明らかにこのタイプのものとは異なる。
巨大トラックがピッタリついてくるのだが、その意図が皆目分からない不可解極まりない追跡だからだ。
こちらは、追ってくるというより捕まえに来る理由ははっきりしている。
その逃走に対する逮捕の明白な関係における複雑な運動があるのみだ。
追いつ追われつのゲーム的な楽しさはあるが、こういった動きは自分がコントローラーでも握って参加しているのでもなければ、凡そ他人のやっているゲームを横で観ている感覚に陥るだろう。
面白いことは面白いし、スリリングであることも確かだが、それ以上ではない。
ただ、最後に「黄色の1973年型フォード・マスタング」(このエレノアがなかなか手に入らなかったのだ)が、警察を見事振り切った先で、まさにこれというドンピシャの車を手に入れるのである。
この件については、純粋に感動した。
決してこれは、ご都合主義とかの類ではない。
人生には、こういう奇跡の場は、必ずあるものなのだ。
やはり、決して諦めず頑張り続ける人には、このような恩寵がやってくるのだ!
そう思わざるを得ない結末である。
この爽快感はこの映画を最後にとても印象深いものに昇華させている。
盗んだ名車の数々を収めたガレージで、思わずニンマリする主人公の顔からも、この人車が好きで好きで堪らないのだろうな、というのは充分伝わってきた。
車好きで、70年代アメ車に拘りのある人なら、文句なくお勧め映画だ。
片っ端、ぶっ壊れてはゆくが、、、(爆。
