
The 5th Wave
2016年
アメリカ
J・ブレイクソン監督
クロエ・グレース・モレッツ、、、キャシー・サリヴァン(女子高生)
ニック・ロビンソン、、、ベン・パリッシュ(キャシーと同じ学校の生徒であり軍の少年兵士のリーダー)
アレックス・ロー、、、エヴァン・ウォーカー(アザーズからヒトに寝返った青年)
マイカ・モンロー、、、リンガー(ベンと同じチームの凄腕戦士)
リーヴ・シュレイバー、、、、ヴォーシュ大佐(アザーズに寄生された大佐)
マリア・ベロ、、、、レズニック軍曹(アザーズに寄生された軍曹)
ロン・リビングストン、、、オリヴァー・サリヴァン(キャシーの父)
マギー・シフ、、、リサ・サリヴァン(キャシーの母、医師)
われわれが「アザーズ」と呼ぶ地球侵略者との攻防戦を描く。
彼らは非常にものものしい巨大宇宙船で堂々と真昼間アメリカ上空に現れ、静止状態を暫く保っていた。
(所謂、浮かんでいた)。
そして突然、動きに出た!
以下の戦略をもって地球上から人類を駆逐するための攻撃を始めたのだ。
全体を俯瞰する戦況としては、、、。
First Wave:電磁波の攪乱(電磁パルスにより電気を使用不能に)自動車が突然暴走したり、飛行機が制御を失い墜落したり、、、
太陽フレアの関係で、いつでも電磁波の攪乱は起きており、発電所が稼働停止になるケースも普通にある現象ではある。
しかし電気が完全に使えないと如何にこれまでの文明が崩壊してしまうか、、、これは想像に余る。
如何にわれわれの文明が電気のみに頼っているか、も意識したほうがよい。
単に電気前の文明に戻ったのではなく、電気を失った荒廃した文明後の地帯に住んでいるに過ぎない。
Second Wave:地殻変動(津波・地震など)沿岸地域は津波でほぼ全滅してしまう。
そのほかは地震で多くの人が死んでしまう。
この自然を利用した災害の大きさは尋常な規模ではない。
しかもこの災害はわれわれにとっても絵空事ではないところが、きつ過ぎる。
Third Wave:疫病(鳥インフルエンザ)ウイルスを強化して蔓延させるが、免疫のある人間が生き残る。
ベンもそのひとり。
人類は過去、様々な疫病によって、人口を減らしている。
西洋ルネサンス期の黒死病もそのひとつ。
アステカ王朝もスペイン軍の持ち込んだウイルスで滅んだ例である。
ここでまた多くの人間が侵略者の広めたウイルスで亡くなる。
そう言えば、地球侵略でやって来た
かつての火星人は、地球のバクテリアで死滅した。
地球のウイルス、バクテリアの力は絶大である。
Fourth Wave:寄生(人を完全に乗っ取る)この危機意識は、これまでも多くのSFで取り上げられてきたテーマである。
他者問題に絡む、あらゆる領域に絶えず取り上げられる題材である。
そして人間同士が懐疑的、排他的になり、人間としてのこころを失ってゆく。
「人間を淘汰するにはまず、人間のこころを奪う」(キャサリン)
外見上は相手が敵か味方か分からない。(まさに他者問題)。
難民キャンプにおいて、軍が救出に来たかと思って歓んだのも束の間、リーダーレズニック軍曹以下全員アザーズであった。
親は皆殺され子供は拉致され戦闘員に仕立て上げられる。
Fifth Wave:人類一掃(洗脳した子供兵を使った狙い撃ち)「殺虫剤を撒いても死なないゴキブリは狙い撃ちしかない」(キャサリン)と言うように、侵略者にとって個別に網から逃れた生存者を狙い撃ちしてゆく段階となった。そこで彼らは、人間の子供を洗脳し、ヘルメットに仕込んだ探知機とレンズにより視覚的に敵・味方を識別させる大変有効な方法をとった。(人間は視覚優勢であり、一番分かりやすく理解もし易い)勿論、人間を敵と識別する装置である。
人間の子供が、生き残って隠れている人類を皆殺しにする極めて皮肉なシステム~トリックである。
しかし、その敵が余りに不甲斐ないことに気づいたリンガーが、軍が何かを隠していることを察知し警告する。
ベンも直ぐに疑問を呈し、自分の姿を仲間に見せ、それが明らかに敵であると機器が反応を示していることを隊員とともに確認し、カラクリを知った彼らは基地へと反撃に向かう。
アザーズは地球を乗っ取りに来たのだが、地球環境に対し必要以上のダメージを与えないような方法で進めてきた。
(とはいえ、地殻変動はそうでもないが、、、)。
主人公キャシーを取り巻く状況としては、、、。
彼女は、疫病治療に関わっていた医師の母を失い、弟と父とともに難民キャンプに逃げ込む。
しかしそこに軍の救助隊と称して現れたレズニック軍曹一行に父を含む親たち全員を殺され、子供たちはまとめて軍に連れ去られた。
キャシーは、弟の後を追い軍基地に向かうが、途中でアザーズに狙撃され脚を負傷し気を失う。
数日後に気づくと、自分が謎の青年から傷の手当てを受け保護されていたことを知る。
しかし彼女は、銃を奪われていたことから拉致されたと思いこみ、直ぐにその家から逃げ出す。
だが森でまたアザーズの罠にはまり、今度もその青年に助けられる。
彼女は数回にわたり彼に助けられるが、その青年の力に疑いを持ち、何者なのか訪ねるとアザーズであることを明かす。
すでに以前、彼らは地球に来て長い間地球人として生きてきており(偵察隊か?)、今はどちらとして生きるかを自分の意思で決められることが分かったという。(いまひとつよく分からんのだが、、、キャシーも分からないらしい(爆)。
そして彼エヴァンは、キャシーのため、地球人として生きる決意を固めたという。
キャシーというよりクロエ・グレース・モレッツの魅力の成せる技であろうが、、、。
キャシーを追って軍の基地にまで来て、彼女の弟を救い出す援助をし、基地を爆破して彼女の前から姿を消す。
(同胞に対する徹底した裏切りである。このエヴァンという異星人、謎を深める)。
大概、この第四、第五のフェーズにおいて、単に地球人対異星人(侵略者)という単純な構図ではなく、人間同士の間でも葛藤のみならず、個人的にも派閥(グループ)的にも対立、闘争が起きるはずである。すでに地上の99パーセントが殺戮された人類であっても。(そうなると、ヒト対エイリアンというより、彼らのイディオムを借りれば「愛」を信ずるもの対それに価値を置かないものとの相克の構図ともなろう)。
ここでも、人間同士の対立ではないとはいえ、主人公のキャサリンとベンは、彼女の弟のみを選択的に(まさにピンポイントで)助けだす。
人間対エイリアンとの闘いという次元で考えれば、大勢の人間の子供たちが輸送機に乗せられ運ばれてゆくのである。
そのなかで彼女の弟だけ救い他を見捨てて、ハッピーエンドという問題ではなかろう。
もうひとつ、物語の進行上気になった点であるが、軍の基地においてあれだけ差し迫った緊迫する状況下で、キャシー、エヴァン、ベンの3人の場の空気を無視した愛の語らい(ベンは埒外にあったが)をしている「間」はどうやってできていたのか、よく撃ち殺されなかったと思う「時間」であった。
最後、キャシー、その弟、ベンの3人を爆発する基地まで、リンガーがジープで絶妙のタイミングで助けに来る。
余りにダイレクトに、、、。
ここら辺に関しては、プロットの検討がかなり甘いと感じる。
結局、レズニック軍曹たちは基地を離れ、彼女らは弟だけ助けるに留まり、これからどうするかに対し、人を助けなきゃ、、、これは、「人を助ける気持ちが失くなれば、人間でなくなる」というエヴァンのことばを受けてだろうが、、、数人残った子供部隊で実に覚束無いものである。彼らはもうアザーズの管理・利用から外れた存在である分、身の危険は遥かに高まるはず。
まずは、「明日考えよう」(ベン)である。そうなのだが、大丈夫か?
「希望を持つことこそ人間の証なんだ、、、」(キャシー)何とも楽観的な。
(クロエが言うと不思議に説得力を感じてしまうのだが)。
レズニック軍曹の軍の立て直しと新たな戦略、基地を爆破して姿を見せないエヴァン・ウォーカーの行方、、、
続編を前提に作ったような作品であるが、次作にどれくらいの製作費が当てられるかの要素も出来を大きく左右すると思われる。
確かにエヴァンではないが、この映画クロエ・グレース・モレッツによって、最後まで観続けられた。
他の女優が主演であったら、分からない。