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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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児玉 沙矢華展を観る

gallery00.jpg
post cardに使われていた「空を仰ぐ嘘」

児玉 沙矢華という画家を初めて知った。
経歴を見ると、わたしの高校の後輩であった。
全くどうでもよいことである(笑。


さて、絵であるが、題名がどうしても琴線に触れる。
と言うより郷愁を呼ぶというべきか、、、。
テーマに対する郷愁でもある。(わたしの年代ともなると、、、)

展示されている作品は、次のもの。
最近見た絵の中では、とても瑞々しく共振できるものであった。
素晴らしいというより、好きなタイプの絵である。
少女(少年)期を図象にしていることは、ある意味紋切り型に絡め取られる危険性をかなり内包している。
作者はそれを前提に、違う路を切り開こうとしているはずだ。

「等閑の境界、多重するズレ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「青空の空隙」
「共鳴する空想」
「空事の巣」
「空事の狭間」
「架空の地図」
「空を泳ぐ嘘」
「架空の街へ」
「架空の経路」
「空想の影境界を辿る」
「影絵遊び」

の11枚であった。
絵と画題との対応関係は、もうはっきりしない(謝。
(じっくり観ることが時間的に許されなかった事情から)
ただ、印象に残る絵ばかりであった。
また、時間をかけて観てみたいと思わせる絵ばかりである。
画集が出たら、間違いなく購入したい。
以前、よく絵(版画が多かったが)を買っていた頃であれば、値がついていたら買ってしまいそうである。
だが、今現在のわたしの状況では、買えない(笑。

10点の絵が同じテーマに収束されていることが分かる。
空事、嘘、狭間、巣、架空、空想、影、影絵、空隙、泳ぐ、、、

1点、「等閑の境界、多重するズレ」の作風(形式)が他と異なり、他の作品から大きく踏み出している。
それは題からまず窺えるが、絵そのものが明らかである。
鏡・ガラスがない。ドアをはっきり開けている。幼いながらも立っており、盲目の生きる意志をもっている。頭部は見えるが表情ははっきりしない。
これがまた、印象的である。
彩度を抑えた全体の色調がテーマに強度を与えている。
鋭いまたは煌びやかな輝きを排除し、光を抑え込む。
この絵はこの色調以外に成立しないことが分かる。
少し河原温の初期の絵を思わせる。
この絵の場面が風呂場であったら、凄い既視感を持ってしまうかも知れない。
場面は台所であるが、ものの構図が加速・圧縮されており、その時間性はキリコをも思わせる。
そのまま観たなら、等閑視された子供のある日(いつも)の光景―場所を象徴する高密度で無機的な絵と取れる。
しかしこれに「多重するズレ」と続く。
そう、ズレなのだ。尽く事象はズレて生成する。時間性―速度が加わる。
この絵は、一枚のあるときの図象に見えて、無数にだぶる反復を表している感がある。
ズレとはその時に生じる「差異」である。
生々しい生の現場である。
テーマの飛躍か、、、


同テーマと思われる作品群では「青空の空隙」に特に目がいった。
鏡にできた漆黒の穴を2人の少女が上から覗き込んでいる、その表情が他の作品にない強い意思を感じさせるものであった。
穴と書いたが、穴に見えて漆黒の異物であるのかも知れない。
漆黒それは、光を受け付けない。光―空事・架空のすべてを撥ね付ける。
そこに苛立ち、拘わり苦々しく凝視する。
その漆黒とは何か?空隙とは何か?
そこがいまひとつ、わたしにとっても彼女たちにとってもはっきりしない。

他の作品も意思と感覚を素直に発露させて染み込んでゆく、シーツの皺からガラスの割れ目に構造化してゆく自我の痛みを、その息苦しさを、焦慮の念を、軽い目眩を、充分に肌に感じさせるものではあるが、、、。
微睡みの安らかな表情の内に自閉・内向し、非現実の世界にイメージを遊ばせていることから、異質なカナリゼーションを起こし、内側・内宇宙から他者に向けて立ち上がり、ガラス張りの自己しか写さぬシーツから目を離し、他者―漆黒との関係を新たに切り結ぼうとしているように見受けられる。「青空の空隙。」
ほかの絵が言葉を外に放たないものであるのに比べ、これは自らのことばを明らかに漆黒―他者に向け吐こうとしている。
その意志の強度の内に恐れと闘志の綯交ぜになった感情が垣間見える気がした。
「空隙」という言葉は何というか単なる隙間より異様で異界的な異物感がある。


音で言えば、”Lily Chou Chou”の音楽に重なるものをいくつか感じた。例の「呼吸」


ここまで随分、表情と書いてしまったが、表情―象形になってしまうことで、もはや紋切り型から逃れられなくなる。
この表情から逃れ、これをどうしてゆくか、これは全て(純粋抽象以外)の画家の創作テーマでもあろう。
ここを切り抜けた画家はごく少ない。(フランシス・ベーコンなど数える程)。
これからの動きが気になる。

「等閑の境界、多重するズレ」の可能性を感じる。


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袋小路

Cul-de-sac001.jpg

Cul-de-sac
1966年イギリス
ロマン・ポランスキー監督

モノクロのメリットが効き、抽象性が担保され古さを感じなかった。
もしカラーであったなら、時代感を印象づけられていたかも知れない。

ドナルド・プレザンス
フランソワーズ・ドルレアック
ライオネル・スタンダー

この3人とても良い味を出していた。

海辺に聳える古城というのは、どうもロマンティックというより、住み難そうという感じが拭えない。
特にわたしはアウトドアが苦手で、水洗トイレのないようなところではまず暮らせない。
あのご立派な由緒ある古城は、わたしにとってはテント暮らしと同等の感触しか受けない。

かつて11世紀の作家の古城で、彼の日記や草稿などプレミアものが残されているというが、現在の所有者にもその付加価値以外にさしたる魅力はないように映る。亭主も冬はひどく寒いと不平を漏らしている。
ただひとつ夫婦にとり実質的なメリットととして、かなり隔絶された環境であること。
それによりこの夫婦、何となくやり過ごして行けそうなのだ。
潮が満ちれば、孤島と化す。さすればやはりここは滅法ロマンチックではないか、、、。
(ホントにそれだけの機能であるが)。

若妻は気だるそうに何時も同じLPをかけているし、若い男とカニだったかエビだったかを獲りに行く名目で浮気中のようだし。(その意識かそもそもあるのかどうかもはっきりしないのだが)。何らかの決断を下すほどハリのある生活を送っていないためか、なし崩し的である。(セリーヌ的まではいかないか)。


しかし、現在の城主は彼女の絵を沢山描いている。旦那の彼女への自己妄想的な閉じた入れ込みようは痛々しいほど伝わる。絵そのものは、本人の言うとおり、日曜素人画家であることはお愛嬌として。それを彼女との堅固な対幻想に構築する意志はない。
そのような歪な関係のもと、お互いに暇を持て余しているところに、招かざる客がやってきた。
彼女はハダカで泳いだり、奔放で率直で向こう見ずに見えるが、思いのほか保身に拘り、嘘をついて男を誑かす。女性性ととるべきか、業というべきか。いや幼いのか?しっかりしているように見え、何考えてるのか今ひとつ分からない。兎も角もはや、ご主人に惹かれてないのは確かだ。何で結婚して一緒にいるのか分からない位の関係だがまだうやむやで継続する。早かれ遅かれはっきりしてくるのだろうが、ギャング-他者との関わりにおいて、露呈は加速されたと言えよう。

そのアクの強い粗暴だがどことなく憎めないギャング(2人いたが、個性がさらに強い方?はすぐに死ぬ)とのいつまで続くか分からない共同生活がどうにもカフカ的なのである。
別に「城」から連想して無理やり言っている訳ではない。
ギャングはヘマをやらかし、傷を負って城にたどり着いた。
そこから身動き出来ずボスに助けを請うが、いつ来るかわからない。
なるべくギャングを刺激せず、お迎えが来て去ってゆくまでやり過ごす基本スタンスで夫婦は行く事にする。
そんなところに夫の友人ファミリーが訪ねてきて、ギャングは庭師と紹介されて給仕の仕事までやらされることになる。
態度はデカイが妙に板についているところが下手なコメディよりずっと面白い。
全く可愛げのないそこの子供が悪戯をしまくる。子供は端から皆の幻想から外れた所にいる。
子供の度を越した悪ふざけから、夫と友人ファミリーは決別する。(表向きは)。
友人はすでに若夫婦の状況を見破っており、相談はいつでも受けるなどとしきりに言うことが、現状をあやふやにしておきたい夫を殊の他刺激したのだ。ここで更に事態は加速する。
ギャングは声は暴力的だが適度に紳士的でもあり妻が尻尾を振ってきても取り合わない、夫はギャングの言いなりで過ごす。妻はギャングの言いなりである夫の批判をヒステリックに繰り返す。
そうこうしながらお互いに絶えつつも協力して待つのだが、先方はいつまで待っても来ない。
それぞれの関係の解体が徹底し、白日の下というより満天の星の下はっきり露呈する。
ただ、待つことが3人を1つの共同体にしていた。
誰にとってもそのお迎え―救いの主の登場で全てが解決するという幻想のもとやってきたのだが、、、。

結局、ボスが迎えをよこさない、完全にギャングが見放されたと了解したところで、話は予想外の急展開となる。
ギャングは彼ら(夫)の車でそこを去ろうとする。お迎えを待つゲームからそのゲームの主が抜けようとする。
ギャングはこんなタイミングで射殺され、急に突っ張りだした夫は捨てられ、若妻はまた例によって他の男と逃げてしまう。
最後の最後に夫婦の2人がギャングの銃を避けようと相手を互いに盾にし合うのは、ウケる。
しかし実はこの関係、端からそうだった。
ギャングという触媒により活性しグロテスク化して見えたに過ぎない。
そして、触媒が消えたところで、もう解体し尽くしていた、というよりすでに触媒が有効な環境でなくなっていた。
エントロピー最大となって終わり。


これは、まさにカフカ的なお笑いコメディと言える。

Cul-de-sac002.jpg


フランソワーズ・ドルレアックはこの翌年、1967年25歳の若さで自動車事故で帰らぬ人となる。
Cul-de-sac003.jpg
映画界で最も美しい姉妹(勿論妹はカトリーヌ・ドヌーブ)と讃えられたが、その称号は未だに彼女らのものだろう。



”Bon voyage.”

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