ジェイコブズラダー

時間というものは意識にとって存在するものであり、それ以外の何かではない
この映画には客観的に流れる時間枠というものはない
純粋意識-時間が写されている
そこに夢も現もない
あるのは意識だけだ
この映画は
ジェイコブズが光の眩く射す梯子(階段)を事故で死んだ息子と手を取って登ってゆく一瞬が描かれている
ヤコブの梯子
天使が上り下りしている、天から地まで至る梯子
ベトナム戦争でいきなり始まる
ジェイコブズは銃剣で腹を刺され瀕死の状態でヘリで不気味な野戦病院に連れて行かれる
悪夢からまた別の悪夢へ次々に誘われ
それはあたかもワームホールをいくつも通り抜けるような
めくるめく逃れようのない苦痛が続く
パラレルに異なる生活を同時にしているかのような
そしてどこにでも現れ、付きまとう異形の悪魔たち
あの日にいったい何があったのか?
怯える主人公たち
裏を探ろうとすると
車ごと爆破される
親しい主治医も殺され
弁護士にも誰にも相手にされない
やがて怒りを呼び覚ます「ラダー」という薬を軍部が開発・実験を行っていた
軍部が勝てない戦争に業を煮やして軍-彼の所属する部隊に使ったという
その結果、味方同士で殺しあう壮絶な戦いが起きたと
研究者の告白を聴かされる
彼はほとほと疲れきる
(もうそんな幻視に付き合ってはいられない)
誰もいない自宅に戻り、ベッドに腰掛けていると
愛しい息子が独り、階段の下で遊んでいる
「穏やかな心を持てば悪魔は天使となって地上から魂を解き放つ」
彼は静かに息子と階段を登って逝く
音楽がひめやかでよかった