市民ケーン

Citizen Kane
1941年
アメリカ
オーソン・ウェルズ監督・脚本・製作
オーソン・ウェルズ、、、チャールズ・フォスター・ケーン(新聞王)
ジョゼフ・コットン、、、ジェデッドアイア・リーランド(ケーンの親友
ドロシー・カミンゴア、、、スーザン・アレクサンダー(ケーンの2番目の妻)
エヴェレット・スローン、、、バーンステイン(ケーンの親友)
レイ・コリンズ、、、ジェームズ・W・ゲティス(ケーンの政敵)
ジョージ・クールリス、、、ウォルター・サッチャー(ケーンの後見人)
今回も古典の名作映画について一言だけ。
まず監督、主演のオーソンウェルズ。
彼の逸話はとても多い。
知らない人でも、何か知ってしまっている。そんなヒトだ。
少なくともあの我の強そうな味のある顔は1度見たら忘れられない。
かなりの巨漢でもある。
演技も凄い。
あの貫禄からも目立たぬはずはない。
今でも日本では、「SF」が新聞の一面を飾るようなことはない(一部名物新聞を除けば)。
1938年アメリカにおいて、H・G・ウェルズが1898年に火星人の侵略を書いた『宇宙戦争』が現実に起き、パニックとなった。
当時23歳のオーソン・ウェルズの『マーキュリー劇場ラジオ・ドラマ』による事件だった。
まさにヒンデンブルク号炎上の惨事を思い起こさせるような臨時ニュースから始まり、ウェルズ自身演じる目撃者による回想を元にしたドキュメンタリー形式のドラマ進行。
前例のない構成と演出さらに迫真の演技による放送の結果、聴取者はこれを本物のニュースと信じて避難を始め、全米が大騒動に巻き込まれることとなる。
一夜にしてオーソンウェルズは一躍時の人となった。
その後、この番組には、シャンベルスープがスポンサーにつく。
ユーモアとウェットに富み、マジックが大好き。脚本に才能を発揮。
監督としても、カメラの超ローアングル(小津安二郎よりはるかにロー)どの距離にあってもフォーカスが合うディープフォーカス、広角レンズへのこだわり、鏡の効果的使用などなど映像美の追求は徹底している。また、優れたシェークスピアの演出家としても著名である。
しかし、権威の怒りに触れるような題材が多く、作品は興行的に失敗が続いた。
資金繰りに何時も苦労する映画人であった。
この市民ケーンのような出来栄えの映画ですら、批評家からは極めて高い評価を得ながら、興行的には失敗であったという。
傍若無人でやりたい事は大方やっていたわけで、かなり人生は楽しんでいたようだが、才能がどれだけ正面から評価されたかは分からない。
金集めの為もあり、存在感で売る怪優として三流映画にも幾つも出演している。
子供の頃、いじめにあって、トイレに逃げ込みそこで赤いペンキを体に塗りたくり、重症を負った姿でクラスに戻ってから、以後いじめに会うことは一切なかったと言われる。
若葉より芳し、とはよく言ったものだ。
そこで発揮された才能はずっとフィルムやラジオ放送に定着されていくこととなった。(やはりいじめも才能で回避できるのだ)
市民ケーンにおいても、実在する新聞王を題材にした為、上映に漕ぎ着けるまでが大変であったようだ。
そこに描かれた悲劇の巨人は、有る意味シェークスピア悲劇を思わせるものである。それを斬新な映像手法を用いて描ききった映画と言えよう。
とことん映像美にこだわり抜いたことは分かる。
やはり、この映像への拘りを観るにつけ、彼は監督業に1番執着があったと思える。