遠近法

遠近法は歪む。
身の丈よりも大きく。
世界は思っていたよりフラットだった。
疲労の色にフィルタリングされた明るくも暗くもない空に
投影されるものは何も残っていなかった。
雨にふやけたあやふやな身体にかけられることばもなく。
ただ並んでいるものをどければ、どこにでも座ることはできた。
うたたねでは夢は見れないが。
定まらない角度と距離。
消失点は疼く。
待つことが続く。
曖昧さを増してゆく空間。
何もかもが遅れ出す。
遅延が次々に観念を生む。
失速した観念に囚われ。
果は、待つこと自体が目的となる。
何も思い出せないのだ。
何のイメージも浮かばない。
時間が厚みを失ったのだ。
(あのざわめきはどこへいった)
ただ、塗り重ねられたフラットな建造物がやたらとこの時間、艶やかだ。

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