ディーバ Diva ~ 遥か彼方の幻影のような

Diva
1981年
フランス
ジャン=ジャック・ベネックス監督・脚本
ウラジミール・コスマ、アルフレード・カタラーニ音楽
ウィルヘルメニア・フェルナンデス 、、、シンシア・ホーキンス(アメリカのソプラノ歌手)
フレデリック・アンドレイ 、、、ジュール(郵便配達員)
リシャール・ボーランジェ 、、、ゴロディッシュ(アルバの恋人)
チュイ・アン・リュー 、、、アルバ(ベトナム人少女)
最初に観たのはいつだったか?
すくなくとも”ベティ・ブルー”よりもずっと前に観て、音楽と情景の美しさに打たれた記憶がある。
が、内容はすっかり忘れていた。
"La Wally"がこれほど感動的な曲だったことを改めて知る。
ウィルヘルメニア・フェルナンデスによるところが大きいのは言うまでも無い。
”アベマリア”も尋常ではない素晴らしさだ。
そのほか、音、画像共に印象に残るシーンの多い映画である。
この物語、常に”2”で進行していくところは面白い。
特に狙われる2本のテープ。それを狙う2人組の2組殺し屋。間の抜けた刑事のコンビ。
謎のベトナム少女と悟りの境地の男、ディーバと郵便配達の青年。
ともいえようが、後の2組は性質が異なる。
悟りの男は黒幕警視と対関係か。
謎のスーパーマンと策をめぐらす巨悪としての両極を担う存在。
ベトナム少女とディーバは悟りのスーパーマンとオペラ好き青年との関係において明らかに対称性にない。
少女と青年は一方的に相手に憧れる立場だ。
物語ー事件はひょんなことからオペラ好き郵便配達青年のバイクのかばんに組織的人身売買を暴露したテープを女が滑り込ませて殺されたことから始まる。
青年は一切の録音を許さないディーバの歌を密かに高音質で録っていたため香港マフィア?からも狙われる。
2本のテープのため2重に狙われる存在となる。
スリルとサスペンスも適度に在り、青年のバイクによる逃走もメリハリにはなっているが、全体としてあくまでも美しい。
トワイライトの中をディーバと青年がデートする場面、シンプルな高揚感のあるピアノ曲(センチメンタル・ウォーク)とともに、映画のシーンとしてもっとも幻想的で美しいもののひとつだと思う。
最後に青年がディーバにコンサートの音源を持っていることを謝るところで、彼女が「私は自分の歌を聴いたことがないの」と言い、その音源を青年と共にホールで聴くところがまた印象深い。
そう、彼女は商業ベースに自分の芸術を乗せることを徹底的に嫌っていたが、その潔癖症から自分の歌声を対象として聴いたことのないことに気付いたのだ。
青年のお陰で自分の歌をはじめて他の声として聴く彼女。
2人の距離はここで限りなく近くなった。
彼女がはじめてレコードを出すかも知れないと感じさせるところで終わる。
"La Wally"アリアが途中で切れる。