月~もう少しお付き合いください

"月"のつづき
「ある晩、四辻を歩いていると お月さんが横合からピカピカした短刀をさしむけて 『金を出せ!』
と云うので ポケットにあった金貨を一枚渡した その金貨は 夕方 デパートメントストアーの塔の上にひっついていたのを 梯子をかけて取ったのである 夕方に塔にひっついていた金貨とは勿論お月さんであった」
稲垣足穂
「へんてこの月夜の晩に
ゆがんだ建築の夢と
酔っぱらいの円筒帽子。」
萩原朔太郎
「わたしの足は月かげのたむろである
、、、、、、」
「、、、ひとつの言葉を釣らんとするには、まず倦怠の餌を月光のなかに投じ、ひとすぢの糸のうへをわたってゆかなければならぬ。そのあやふさは祈りである。永遠の窓はそこにひらかれる。、、、」
大手拓次
「月蝕を病む薄明の花
(ああ傷心の薔薇)
おちた果実の腐ってゆく匂い、、、
晩課書を誦す噴水の反復
蛭きは護摩を焚く
園丁の口笛
温室の屋根硝子は曇る
掌に描く冬眠の虫の形而上学
密鉢は蘭の透明な夢を花ひらかせる
おぼろな指さすに環る月暈
夢遊病の月下香
礼拝堂の鐘が鳴る釣鐘草」
吉田一穂
「月の光が照っていた
月の光が照っていた
お庭の隅の草叢に
隠れているのは死んだ兜だ
月の光が照っていた
月の光が照っていた
おや、チルシスとアマントが
芝生の上に出て来てる
ギタアを持って来ているが
おっぽり出してあるばかり
月の光が照っていた
月の光が照っていた」
中原中也
「半欠けの日本の月の下を、
一寸法師の夫婦が急ぐ。
二人ながらに思いつめたる前かがみ、
さてもどくどくしい二つの鼻のシルエット。
生白い河岸をまだらに染め抜いた、
柳並木の影を踏んで
せかせかと――何に追われる、
揃はぬがちのその足どりは?
手をひきあった影の道化は
あれもそこな遠見の橋の
黒い擬宝珠の下を通る。
冷飯草履の地を掃く音は
もはや聞えぬ。
半欠けの月は、今宵、柳との
逢引の時を忘れている。」
冨永太郎
「マンドリンオーケストラで幕が開くと、舞台は一面に真っ青で、そのまんなかにまん円い月がぶら下がっている。三角帽子のピエロがゼンマイ仕掛の人形のような足取りで出てくる。
ピエロの独唱
『昔私は月を見た
今晩私は月を見た
それは昔と同じ月
今も昔も同じ月
これから先も同じ月』
月の独唱
『それから先はどうなった』
ピエロの独唱
『それから先もそれだけさ』
歌が終わると同時に月からシューと赤と青の花火が噴出して、そのまま矢車になって廻り出す、、、、、、黒い幕が急に落ちる。」
稲垣足穂
こんかいはこれにて終了!
まだストックは山ほどありますゆえ。
また、次の機会に、、、。

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