インドの旅を巡って

<ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。>
メメントモリ~死を想え~ 藤原新也(情報センター出版局)より
この写真集は必需品です。
最近中谷美紀さんの「インド旅行記」を買い込み、読み始まています。文章が癖なく、とてもこなれており、スイスイと読めます。やはり女優で流麗な文章を書く人に緒川たまきさんがいますが、こちらは泉鏡花の専門家でもあり、少し文学的過ぎる面もあります。大変見事な文章なのですが、中谷さんの方がノーマルに読むことが出来ます。
切羽詰った状況から意を決して、ガイドブックには載っていないインドを旅すると言うだけあって、悪戦苦闘する筆者の様子が生き生きと伝わってきます。
もう何もできない、したくないそんな思いを振り切るように飛行機に乗ったのも、他人に自分の運命を定められたくない、自ら運命を選びとるのだという決意あってのことだそうです。それでインドに飛んでしまう。行動力のある人です。それに文のどの行を読んでも確かな効力意識をもった人だなと、つくづく思います。何かのレビューで専任ガイドをつけて旅をしていることへの揶揄がありましたが、はじめての旅でそれがなければ自由な現地での接触や体験が困難となり、やたら非効率で制限の多い貧しい旅となったはずです。これに関しては適切で当然な選択だったでしょう。旅が進むにつれ逞しくなってゆくのもよく分かります。ときに文句を言ったりユーモアをもってすり抜けたりしながら、常に何かを見出そう或いは余計なものを捨て去ろうとしているのは実感できます。そして「価値」の相対性と絶対性についての身をもっての検証が地に足をつけて行われています。あくまで等身大に内省的に。まだ3分の1のところなのでゆっくり読み込み味わいたいです。
ただ今の時点で、私だったら行かない。
どこに行っても自分がついてきてしまうだろうから。
私は旅行で何かが変わるという考えを基本的にもてないのです。
稲垣足穂の月の話のように、自分のポケットからコロコロ自分が転げ落ち、そのまま霞の中に見失ってしまうのならよいですが、多分私の場合、しっかりポケットに入ったままで帰ってくると思われます。
それでは意味がない。
私はここにいながら、ここから入ってここに出たい。
できることなら。
藤原新也のようなとてつもないヘビーなインド放浪だったら極限的な状況での変容もあるかもしれない。
でも彼の「メメントモリ」こそ出れない人のためのバイブルだと思います。
極めて鋭い写真とコピーのこの上ない融合による奇書。
中谷さんもインド旅行記の写真集を出していますが、優れた文を書き、確かな価値のある旅をする人は、カメラ―写真にも一家言ありこだわる人が少なくないですね。緒川さんもブルガリア紀行などの旅を通しカメラ―写真マニアであることも知らしめています。私のブログのお師匠も常に旅行先の大変見事な写真をブログに毎回掲載されています。
今回、言葉と写真の融合の力というものも改めて考えさせられました。
こちらも見習う必要があります。
SIGMA DP3 Merrillはやっぱりほしい。
あとは覚悟。
「つかみどころのない華鬘な日々を送っている正常なひとよりも、それなりの効力意識に目覚めている痴呆者の方が、この世の生命存在としてはずっと美しい。」藤原新也
「、、、いや、むしろどこにも答えは見つけられないような気がする。」中谷美紀
私は自分の資質において、地下世界からの展出を図りたいと思います。

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