
8.スヌーズレンの応用に向けて
1)理念の再確認
スヌーズレンとは、障害を持つ人が、心地よい照明、音楽、香りなどを醸し出す器具やそれらによって構成された環境を利用することで視覚、聴覚、触覚、嗅覚などへの様々な刺激を感じ取り、自発的に探索を始めたり、介護者とも刺激を分かち合い楽しみ、充分にくつろぎ合う活動です。介護者は、障害を持つ人の反応をありのままに受け止め、共有し合い、感覚の違いを認め、平等であることが重視されます。一方的な治療方法や教育プログラムではありません。このスヌーズレンの活動を通して、お互いを「受容」し、「共感」することが実感を伴い感じられるようになり、その精神が、ノーマライゼーションやインテグレーション等の構想とともに生活全般へと広まって行くことが期待されます。
2)補足修正と整理
前回の内容で記述・表現が不十分であったと感じるところの補足・強調をしておきます。
①
単なるリラクゼーションではなく スヌーズレンについて知識を持っている人でもそれをリラクゼーションの側面でしか捉えていないことが多く、もっとダイナミックな全体像を整理して示す必要性を覚えます。
探索行動を生むもの サイドグロウのように体に巻きつけてひたすら恍惚感を得るようなアイテムばかりでなく、白い壁や天井に映りこむ反射板を使ったモビールなどの、色や光のモザイクはとても利用者の目を引きつけ、そのランダムで動的な形態変化から探索行動を誘発するアイテムが多いことを再度強調します。
覚醒か鎮静か 
「脳の覚醒状態と発揮できる能力の関係」を示す上の図(図と括弧の文は日本スヌーズレン協会HPより引用)を見ると脳の覚醒が低くても高すぎても高い能力は発揮できないことがわかります。利用者が雑然とした刺激の中にいるなどして過度に覚醒の高まった状態なのか、眠りに近い状態なのかをみて、適切なスヌーズレン環境を選び、覚醒状態を変化させることは可能だと思われます。脳を鎮静させる必要のある利用者にはリラックスを呼ぶスヌーズレン器機を中心に構成した環境が適切であろうし、かなり低い覚醒状態にあるように窺える利用者でも「器機に手を伸ばす」、「視線を向ける」等の探索行為が見られれば、覚醒が促されたことが確認できます。
スヌーズレンにはリラックス系とアクティブ系があることはすでにで述べましたが、利用者の現在の状態を配慮した使用法が必要であるということです。
②
手作りの可能なもの 手作りの必要なものと可能なものですが、まず専用のスヌーズレン製品はボールプール198,000円、ビーズクッション(大)83,000円、ビーズクッション(小)48,000円、クッションブロックセット98,000円、ソフトルーム設計施工
要相談(笑)、、、代替品で「間に合わせる」ことが、古くからの日本の伝統文化にあります。その方が「粋」かもしれません。「見立て」等。
介護者・教師が事前に作っておくものばかりではなく、モビールなどは、十分簡単な工作として利用者と一緒に片手間に制作することの出来るようなアイテムです。風を要素として使用するスヌーズレンでは、可動性と光の反射で感覚刺激を与えることが出来るモビールは利用価値も高いものでしょう。また自ら作ればさらにそれらに対する愛着も生まれ、スヌーズレン環境に対する親和性も高まると思われます。そう考えると、作れるものは利用しながら作っていくでもよいはずです。その方が環境、利用者の実情にマッチしたものとなり得ます。
③
拘束されないこと 場所・時間・職員の限られた場所でのスヌーズレンを考えたとき、その部屋の使用をめぐってのスケジュールなどに関して前回触れておきましたが、スヌーズレンの思想から考えると、介護者・教員はいつまでに担当した利用者が何が出来るようにならなければならない等というノルマから、また利用者は介護者・教師からの介入から、そしてその部屋自体も特定の意味や目的から、すべて開放されたものであるはずです。であるのならそこに入る時間も当然自由であるべきであり、利用者が使いたいと感じたときにいつでも使えることが前提となります。実際の運営上では困難であっても理念上は確認しておくべきことです。出来る限り時間枠からははずして使用できる場にしたいものです。また、所謂保健室にそのような工夫を施したコーナーがあってもよいでしょう。
3)日常空間への展開
スヌーズレンの安価な作成法とiPod(iPhone)等のガジェットの可能性について少し触れましたが、機器に頼らずスヌーズレンをその思想的にもっと展開出来ないかも押さえておきたいです。
子供・障害者が特に反応を示さない場合は、錯綜するノイズから身を守るために閉じこもってしまっているだけで、それらを制御し、適切な刺激を与えれば(刺激を整理すれば)はっきりした応答を示すことが見られるという報告は多いです。普段窺うことのできないその子の探索する姿や興味を示すものが始めて分かり、その子の本来の姿が見えてくるかもしれません。介護者も障害者の感じる力の邪魔をしないようにすることが肝心です。そのことを基調にした上で、実際にスヌーズレンの環境を常設することは困難であっても、日常生活の中で好きなことに含まれる要素を分析して、その抽出により、精神を安定させたり、自ずと探索行動に出られるような場を作ることは工夫次第で可能であると考えられます。
日々の生活でも感覚的に妨げとなりそうな外光や景色、様々な音や声を遮断するためにドアや窓を閉めるなどして対応するはずですが、外光や窓を逆に利用し、窓上部をステンドグラスにするだけでも雰囲気が随分変わります。実際にプレイルームを随時スヌーズレンルームとして使っている療育園があり、窓にステンドグラスの加工を施しているという報告があります。効果音と香りなどをたくことでさらによい雰囲気が作れるということです。雑多なノイズがなるべくは入り込まないように出来れば、利用者の探索行動が自ずと出るような環境になり得ます。好きなものも確認しやすくなるでしょう。
幼い子供は特にそうですが、障害者も触覚に特別なこだわりや愛着を持つ人が多いです。そこからひとが精神的な安定を得ることはよく知られています。そのためスヌーズレンにおいてはもとより、日常においても汚れを気にしてビニールシートばかりを使うのではなく、触覚の上でも落ち着きを得られる手触りの質の良い布や織物などの使用は大切な心使いでしょう。
前庭刺激はひとの幼いときに誰もが必要な刺激ですが、自閉症の人にとってはとても重要な刺激であるといわれます。つまり場合によってはトランポリンやブランコも立派なスヌーズレン器具となりえます。ただ空いた時間があるのでやらせるのではなく、本人の脳の覚醒状態のコントロールの場として位置づけて行う必要があります。
車椅子のひとや幼い子供がゆったりできる環境は、日常環境に思いの他少ないです。店などにおいて買い物中、うちの娘の待つところはまだまだ少ない現状です(親の買い物中子供はとても大変です)。スヌーズレンアイテムの配置と、ここに充分にコントロールされた光や色の感覚刺激が与えられればかなり心身共に安らぐ(落ち着く)環境となるはずです。例え部屋の片隅にでもそれに近い機能のものが置かれていればと思います。余地の活かし方として最も優先して考えて欲しいことです。特に、携帯売り場の待合コーナー等。
4)結び
スヌーズレンの場は、障害の有無や年齢もちろん性別にも関係なく利用者を選ばない場であり近頃では、子供の発達支援にも利用されているといいます。特に情動の開示に見るべきものがあるようです。またその際付き添っている家族も共に楽しみを共有することで、家族関係の改善にも繋がっているとのことです。認知症の多くの人の服用している鎮静薬の投与が激減したり自傷行為が見られなくなった等の報告もウェブ上にかなりのせられています。介護者・教師の心身の健康にとっても大変有用であり、何らかの形で利用できるものにしてよいと思われます。スヌーズレンは施設などを対象にしたシステムとして販売されているだけでなく、個人レベルで様々なものを手に入れることが出来るので。
9.インクルージョンと気づき 断片補遺
スヌーズレンは重い障害を持つ人々のためだけでなく、今やさまざまなケアの領域に広がっています。普通の自然のなかではなかなか快適な刺激を享受出来ない人でも深く感覚刺激を得ることが可能な場として、子供の発育支援等でも利用されていることは前にも少し述べたとおりです。
スヌーズレンでもっとも基本的なことは、「受け容れやすい刺激を自分のペースで受け容れていく」ことです。決して指導されず、介護者や教員はあらゆるノルマも無い、Inclusive(包括的)な場は、リラックスできたり、覚醒が高まったりする場です。それは問題行動や興奮の鎮静または発声を伴う笑顔や追視活動が起こり、発育・認知行動の支援に役立つものであるが、何より両者にとって「気づき」を生む場であることを指摘しておきます。
障害を持つ人に限らずわれわれにとってもその場は、有効な[覚醒]の場であり、「人間の存在価値って何だろうとか、人間の関係とは何だろうとか、障害って一体何だろうとか、障害の有無にかかわらず人生って何だろうとかというようなこと」(新しい遊びの空間デザイン スヌーズレン紹介(山中 裕子))に想いを巡らせる機会となるという報告がWeb上(日本スヌーズレン協会HP)にも多く確認出来るものです。
10.スヌーズレンに使える小物その他 補足
「野田屋電気」ご存知ですか?そこから私はかなりのスヌーズレングッズを購入しました。勿論、そこでスヌーズレングッズとして販売しているのではありません。しかし充分それとして使える物がかなり揃っています。ここに手持ちの物を写真でお見せしようかとも思いましたが、実際にお店の品揃えをご覧になってください。
かなりの物が、ここだけで揃います。
私は野坂オートマタ美術館(伊豆) 気球オルゴール 5000円ほど(レシートを紛失)で、やはり内臓LEDがオルゴールの鳴る間、回転とともに七色に変わりながら点る物を使ってみました。今、これを打っている机上にあります。

この他オブジェ的に観れば、さまざまな形をした多肉植物、さらに人形やオルゴール類等精神を集中させストレスを解きほぐし鎮静効果を持つもの(オブジェ)も見渡せば少なくないです。
光や音を充分コントロールした環境下において、コレクションなどの趣味に浸ることもスヌーズレンに接続してきます。
その他に、扇風機、適当なフレグランス装置、LEDライト、マット、柔らかなブロック、クリスマスの電飾、タッチセンサー、シーケンサー等探せば、大変高額な専用アイテムでなくても役を演じる物はいくらでも見つかります。余裕があれば、サイドグロウとバブルジェット、さらにボールプールがあればいうことありません。手作りできるものも沢山あるので、遊べる立体芸術作品として作ってはいかがでしょう。創作好きにはたまりませんよ。

NEO BRIGHTLED LAMP CRYSTAL 光がレインボーカラーに変わるもので、白い壁や天井などに映りこみ、変幻する光の色と模様に空間が満たされる。のだや電気にて購入。4704円

バイブラランプ レッド カーボン線の柔らかい炎が絶えず揺らめき、心地よいリズムを放つ。のだや電気にて購入。2289円

エッグライト(3個セット) 2079円は内臓LEDが点灯し、七色に変化する。のだや電気にて購入。しかし現在家にはありません。
その他、ダイソーで星座を象ったセミクリスタル製3Dアートグラスがあります。 315円の同じ値段で別途販売しているLEDライトの台の上に乗せると光が七色に変化します。

にほんブログ村 今回2回分を書いたつもりです。今回をもってこのテーマは終わります。次回からは文学に浸りたいと思っています。