「TEIHEN」決定戦

面白いモノを観たい!と思ったなら、、、いや、爆笑したいのなら。
コメディ映画や生半可なお笑い番組を観てもいまひとつと感じていたなら、断然坂道系の企画ものである。
こっちを見る方が百倍笑える。
「乃木坂工事中」の「TEIHEN」決定戦を見て腹を抱えて笑い転げた。いや、のたうち回った(少し危険)。
ミルクボーイは確かに面白いが、破壊力では断然こちらである。
向かうところ敵なしの破壊力。
もう息が出来ないほどに笑った。
この完結編では「粘土細工」、「三輪車」、「絵心チェック」というのを披露するのだが、想定外なんてものではない、奇想天外、空前絶後の作品とパフォーマンスが堪能できる。予選を行い、そこから選りすぐりのメンバーが決勝戦に出場する。最下位から4人ずつ選ばれるみたいだ。
この面白さは、別にそれを狙ってやっているわざとらしいものではなく、本人が真面目にやっての結果が人を唖然とさせ不気味で不安にさせるズレなのだ。ズレそのものなのだ。そのグロテスクな空気が何故か爆笑を引き起こす。この化学変化については、そのうち考えてみたい(今は笑いこけて脱力状態なのだ)。
粘土で作ったカエルがどう見ても奇妙な亀でしかない。いや、潰れたようなプードルにもなってしまい、やっとカエルが現れたかと思ったら思いっきり気味が悪かったりして、、、。いくちゃん作のカエルの舌が思いっきり長くて気味が悪いのだ。
作品が披露されるたびに、会場からまず悲鳴が上がる。そしてわが目を疑う表情で恐々作品を見つめる。
顔をしかめながら作者の説明を聞いて、笑いが巻き起こり、MCの突っ込みで手を叩きながらの大笑いとなる。
三輪車は、、、何で三輪車なのかそれ自体訳が分からないが(笑、、、エントリーした4人皆がスタートの合図で出走できない。
全く前に漕ぎ出せないのだ。それでMCが一旦休ませ、仕切り直させる。
そうしたら、いくちゃんがこともあろうに隣レーンの山下さんの前に回り込んで行き、巻き込み事故を起こすのだ。
山下さんは倒れ、いくちゃんはそのままコースを大きく外れ、、、ここでスタジオは大盛り上がり。拍手喝采。
そのままいくちゃんがコース相当の直線距離を走破したことでゴール(笑。それに続き2人が何とかヨレヨレとゴール。
北川さんがひとり収録時間を心配するMCによりゴール寸前でカタツムリよりゆっくり進んでいる彼女に「もう帰ろ」と、競技を終了させる。ここでも大笑い。北川さんも持ち味を充分発揮した。
そして極めつけが恒例の「絵心チェック」である。
これまで何度、笑い死にしそうになったか、、、。
今年も早くもこれが見られる。いやでも期待は膨らむが、毎回期待を遥かに上回ることが約束されている。
坂口さんは今回も孤絶した、それはシュールな世界を確信をもって展開しており安定度は抜群であった。
もう涙の出るほど不気味な面白さである。最初のテーマが「らくだ」であったが、MCの言うように何がテーマであったか最初からすっ飛んでいる。「北欧の画家の作品みたい」というMCのコメントがよい。確かにこういう絵を描くシュールレアリストはいる。
そしていくちゃん(この才能のかたまりみたいな女史が必ずこういう場で活躍しているのがウケる)が、描いた三つコブラクダには悲鳴が上がり皆が眉に皺を寄せる不気味さときた。口がともかく怖い。カエルも口が不気味であったが、彼女の絵は口に特徴がある。今回も凄いものを二発も喰らった。
そして与田さんのラクダが極めつけであり、これに勝てる相手はどこにもいないと言ってよい出来栄えであった。
これは作品を見なければ話にならないが、もう狙ってもここまではプロでも描けないものだ。
狂暴、狂気、狂態がアマルガム状になったラクダである。MCが「おれがラクダだ~!」と盛り上げ、カオス状態になる。
第二戦目のテーマが「ゴリラ」であったが、ここでも坂口さんがキュビズムの手法を思わせるピカソばりの作品で皆を恐れ戦かせる。
そして堀さんである。彼女の描くラクダもゴリラも虚無的表情の人面なのだ。MCに何で人の顔なの?と聞かれ「ラクダとかには興味無いんです」という答え。元も子もない。こんなのが動物園にいたらこわいよなあ~と言っていたが、間違いなく底知れぬ恐怖を撒き散らすに違いない。
大笑いにはまず、日常の地平を破る恐怖や驚愕の爆弾が必要なのだ。その上に何とも言えない気を引く可愛さや滑稽さが乗ると、もう持っていかれる。
ここでも与田さんのゴリラが手の付けられないお馬鹿丸出しの様相を呈していた。ラクダよりも何の動物か分かるけど頭悪そう~と言われ、これでリベンジ出来ましたとすまし顔で返す。MC二人から間髪入れずに「全くリベンジになってない」ときっぱり言われる。
ずっとざわついている中で、「TEIHEN」決定戦の優勝者が言い渡される。いくちゃんと与田さんであった(爆。
「みんな細かい仕事とかあったら、この二人にやってもらいな」とMCに言われ、笑いの中で終わり、、、。
恐怖にグロテスク、そこに絶妙な可愛さが加わり、日常の文脈の一瞬の破壊~爽快さに繋がる。それは浄化でもあると感じられる。
笑いによって毒を放出する。
わたしにとっては宗教的儀式に等しい。

ここでつくづく思ったのが、形体認識~把握の難しさである。やはり日頃、記号的(言語的)な操作で生活している為、いざそれを情報的に大きく上回る形体として掴みなおそうとするともうにっちもさっちもゆかない。それを星野さんが自分の言葉で述べていた。堀さんの言う、興味がないというのもそれを裏返した答えでもあろう。与田さんは普段からカエルを手で触っていた為、カエルの造形では特別リアルなものであった。それでも底辺女王になってしまうが(笑。
櫻坂の「センス女王決め」もとても面白く、大いに笑えたが優れた作品に感動もした。
ことばのセンスが磨かれた女史が多いことが分かる。
事象に対し形体ではなく意味の関係性~繋がりにおいてかなり敏感であると感じた。
