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GOMA28

Author:GOMA28
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リバー・オブ・グラス

River of Grass001

River of Grass
1994
アメリカ

ケリー・ライカート監督・脚本・製作

リサ・ボウマン、、、コージー(30歳の主婦)
ラリー・フェセンデン、、、リー(だらしない男)
ディック・ラッセル、、、警官の父親(元ドラマー)
スタン・カプラン
マイケル・ブシェーミ


モノローグが少し煩い。
喋り過ぎ。
言葉なんてうんとそぎ落として寡黙に淡々といっても伝わる。

River of Grass002

とは言え、大変不快な映画であった。「草の川」まさにその通り、、、。
いつもは、こういう言い方をする時、映画の不出来に関する文句であるが、監督の思惑通りの作品に仕上がっていてその点では見事。だがその描く世界が余りにも不快なのだ。
わたしの世界に似ているから(爆。

その意味でやり切れない。
こんなもの観て、どうすればよいのよ?
責任取ってもらいたい。

River of Grass004

ここで、それぞれヒロインやその父やらのやってることは、誰にも届かない。
独りで誰の目にも耳にも届かないところで、しかし何者かに向け、やっているのみ。
お化粧したり踊ってみたりドラムをたたいてみたり、、、
だからある意味、モノローグも(形式上)効いているのだが、、、。

ホントの意味で孤独で虚無で不毛。
不毛な想像と白昼夢。子供と家族から離れてどこかで違う人として生きたい、、、みたいな。
鬱屈しながらそんな気持ちで自堕落に暮らしていたが。30にもなってわたしって何者なの、とかいう思いも過る今日この頃(爆。
そして或る時、何となく何者かでありたいと想う~願う。
クルマに轢かれそうになるリスクは犯した。
では、この弾みで行ってしまおう、と、、、。

River of Grass003

その車の男とその先のバーで出逢う。母と祖母と暮らす何もしてない男だ。
お互いに虚無的なぐうたら同士で直ぐに打ち解けるが。
盛り上がるようなもんじゃない。
希望とかそういうものが芽生えるような関係は生じようもないふたり。
ただ、この男、友達が銃を拾っていて、実はこの女性の父の落としたモノなのだ。
その銃を何処かで売れよと託されて持っている。
この娘は最後までその銃が父のモノとは気付かない。

River of Grass006

ただこのようなぐうたら男が銃を持つとろくなことは無い(のが世の常)。
酒を呑んで女は帰ることにするが、男が何としても友人の家のプールが使えるから30分ほど泳いで帰ろうと誘う。
余りにしつこいため、泳ぐことにしたのが、面倒の始まり。
断る時に断れないのが日頃の生活によって培われた特性だ(オーバーか?
基本、動けない人間ほどこういうものだ。わたしがそうだからよく分かる。
そして、たまたま銃を握りプールサイドに腰かけている時、その家の主が現れ、引き金を引いてしまう。
夜だから当たったかどうかよく分からないが、そして引き金も二人で押さえていたからどちらが引いたものか、、、弾みで引いたのは間違いないが。
(そもそもオヤジの銃だと分れば直ぐにそれをとりあげていただろうに)。
ビックリして塀を飛び越え、ふたりして一目散に車に乗って逃げる。
さてよく見るタイプの虚無的な男女の破滅的な逃避行かと思うが、ちっともピリッとしない。
(しかしよく赤ん坊ほったらかして何処か遠くに逃げるなんて気になれるな)。

River of Grass005

女の方は、犯罪者となったことで、ワクワクする。
何でもないモノから何者かに昇格したのだから。
という感じで、このまま行けば何処かでダーティーヒロインとして死ねるか、というところまでは、ちょっと(笑。
モーテル住いで逃げてはみるが、いつもと変わらぬ世界の表情に戸惑う。何が変わったというほどのものではないのだ。
そして男はこの前侵入した家に偵察に行くが、警察には訴えてはいたが主人はピンピンしており、殺人犯にはなっていないことを確認。なっていればこんなに温い逃亡劇などあり得ない。高速道路に入る際に料金所で金が払えずすごすごとUターン。
しかし警官には今度は小銭を用意しろよ、気をつけてな、とか言われる。
そして男は遅ればせに彼女に伝えた。死んでいなかったと。
彼女の中にぷつんと切れるものがあった。

この男それでも彼女とこの先、生活を共にする気で、北に行ってどうしようこうしようみたいなことをクドクドと喋り始める。
咄嗟に銃で男を撃ち助手席から放り出し、最初銃の見つかった場所にほぼピンポイントで捨てる(笑。
この離れ業も誰が知るものでもない。当人も全く知らぬことだし。(神の視座にいる)われわれが知るのみ。
全てがそんなもの。全てがそんなものなのだ。
そして走り去ってゆく、、、。スタイリッシュに決めた。


よく出来た映画だが、面白かったり爽快だったり気づきがあったりとか言う映画ではない。
お前の世界もこんなもんだろ、と監督に着き付けられているような作品だ。
実際こんなもんだから腹が立つ。




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レネットとミラベル/四つの冒険

Quatre aventures000

Quatre aventures de Reinette et Mirabelle
1987
フランス

エリック・ロメール 監督・脚本

ジョエル・ミケル、、、レネット
ジェシカ・フォード、、、ミラベル


「青い時間」、「カフェのボーイ」、「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」、「絵の売買」の4つの噺のオムニバス映画ということだが、ひとつの映画として自然の流れで観ることが出来た。
主演は田舎に暮らす画学生レネットとパリ出身の民俗学専攻のミラベル。
場面がサクッと変わるが、しっかり連続性を保つ。とても観易い。

Quatre aventures001

敢えて言うと、「青い時間」が断然、好きだ。
これを観た時、大当たりと、初っ端で感動してしまった。
誌的な空間が充ちているのだ。ふたりの女優さんが良い意味で素人風の淡々とした調子で好感が持てる。
たまたまパリからやって来て母の別荘から自転車で乗り出した時にパンクしてしまい通りかかった少女に直してもらう、、、
そんな出逢いもあって良い(笑。
トワイライトゾーンの一分間、自然の全ての音が止む「青い時間」をふたりで確かめる。
それを抱き合って喜び合う。こんな空間が続くとよいな、と思う。
レネットの描く絵はシュルレアリスムだが、映画空間は印象派だ(笑。

Quatre aventures002

続く「カフェのボーイ」の余りのショボさ、というよりせこさ、、、。
何でこんな詰まらんエピソードを取り上げるんだ、と落胆する。田舎から都会に出て来た瞬間これなの?
噺の流れとしてはしっかり繋がっているが、パリの~というより人のもっともセコイ部分を見せられた感じ。
田舎の農園の御夫婦の大らかな佇まいと美味しいフルーツに対するちんけなカフェの糞不味いコーヒー。
レネットの自閉的な律義さは分かる(わたしもそれに近い気質だから)。
ふたりのパリでのルームシェア生活が実り多いものであればよいが。

Quatre aventures003

そして「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」はパリの庶民に蔓延る貧困も大変なものねというところである。
庶民の貧困に対する2人の間の見解の違いや個人としての向き合い方のズレが語られるが、謂っているほど差は無い。
行動を観ると似たようなものであり、口論が好きなのね、という感じ。
ホントにお喋りは止まない。
ほぼ分かり切ったことを議論することは消耗するが、二人もよく分かっている。

Quatre aventures004

「絵の売買」は、家賃が支払えなくなった画学生レネットが民俗学専攻のミラベルの後押しで、絵を画廊に何とか売りつけることに成功する。
(何でレネットを障碍者だと嘘ついて売り込むのか、意味判らんが)。
しかし画廊の主人は彼女の絵を気に入ったという客に彼女に教えた売値の二倍額で売りつけるのだ。
彼女は売れたと言って喜んで帰ったが、半額は画廊に取られているから彼女の取り分は売値の4分の1となった。
絵の売買は所詮こんなものではある。
ここでも店主~世間は世知辛い。

Quatre aventures006

まあ、二人の絆は深まったか。
田舎の娘と都会の娘のほどよいコンビである。
お金の問題が生じても歪まない関係は大切にしないと。

Quatre aventures005

出来れば、最初の章の雰囲気で全編作ってもらいたかった。
レアリズムよりファンタジーに傾斜して欲しいのだ。
それでも充分その本質は語れる。





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ホット・シート

Hot Seat001

Hot Seat
2022
アメリカ

ジェームズ・カレン・ブレザック監督
コリン・ワッツ 、レオン・ラングフォード脚本

ケビン・ディロン、、、オーランド(元ハッカー、ITエンジニア)
メル・ギブソン、、、ウォレス(爆発物処理隊員)
シャナン・ドハティ、、、署長
マイケル・ウェルチ、、、爆弾犯人
リディア・ハル、、、警備会社OL
サム・アスガリ、、、特殊部隊狙撃者
エディ・スティープレス、、、ジャクソン(爆発物処理隊員、ウォレスの相棒)


金融機関のハッキングがなかなかスリリングであった。
ともかく、パソコン打つだけで映画一本見せるのだら力技だ。
クリスマスを祝う上に娘のバースデイでもある日に仕事に出掛けたお父さんが見事嵌められるのだけど、奥さんに叱られて休暇取ったらどうなるのか。アメリカとかならこっちのパタンの方が多いと思うけど。クリスマス休暇って普通に取るぞ。新年の一月中旬までずれ込むぞ。

Hot Seat002

とは言え、飽きることなく最後まで一気に観れた映画であった。
観ている間は(わたしは無批判に何でも受け容れて観るので)ハラハラしながら楽しむことが出来たものだ。
ただ、観終わってから、なんだかなあ、という思いは残る。

犯人は何で爆弾などをこの計画に使うのか。
シートの下に爆発物を仕掛け座ったら最後、仕事が済むまで立てなくさせるというのも分かるが、こんな計画と準備は凄く手間がかかり、その上ここでは関係ない人間も多く巻き込み、少しでもズレやトラブルがあれば、爆破したりで、リスクも大き過ぎないか。
単に家族を人質にとってやらせるだけの方が合理的でリスクも少ないのでは。
現に家族にも危害を加えると脅しそれが充分効いているのだ。
(それにこれでは、トイレにも行けないではないか。作業中にトイレの必要性は充分あり得る)。

Hot Seat003

爆弾で脅すのが、縛りみたいだが、、、犯人の趣味なのね。
(VFXはブラッシュアップした方が良かった)。
特に最初の自分が殺されたと見せかけるエレベータトリックなど、一つ間違えば自分がホントにお陀仏だぞ。
だいたい、あそこの場面で出て来る必然性が普通はない。だが、映画の上では死んでみせておく必要があったってことね。
こういう物語に対してメタレベルのわれわれ視聴者対応の配慮はリアリティを削ぐし、直ぐに真犯人だわと気づかせてしまう。
諸刃の刃と謂うより、単に上手いやり方ではないと思うが(この手の映画はほとんど観ない為、どれもこういうからくりを使うのかどうかは知らぬが)。

Hot Seat004

それにエレベータ爆破させて警察や何やら呼びこんでどうするの。
金融機関へのハッキングが目的ならそおっとやった方がよいはず。
だいたい、タイムリミットってどういう意味なの。何故そう言う縛りを作るの。
この目的と計画と仕掛けの関係が何だか分からないのよ。
趣味なのね。またはハラハラさせる「映画」作りのため?

Hot Seat005

結局、犯人のメンドクサイ趣味に付き合わされたと言う訳。
面白いイベントだったけど、それで爆破でとばっちり受けて殺されていたら堪らないわ。
それ以上に、気になるのが、こちらをひっかけるためにその物語としては通常あり得ない出来事(メタレベル対応のイベント)を組み入れる不自然さなのね。

メル・ギブソン屋上であんなに撃たれたのに大丈夫だったのは、ホッとしたけどちょっとねえ。
メル・ギブソンの役としては、今一つ。
相棒とのジョークが品が無さ過ぎ。

Hot Seat006

但し、詰まらなかったかと言われたら、面白かったと返したい。
少なくとも観てる間はハラハラできたし。
観終わって冷静になるとなんだかなあ、と思う映画(笑。
観ている間は楽しく観よう。
ただ、メル・ギブソンは主役ではないのね。
ケビン・ディロンの元ハッカーのITエンジニア振りはとても熱演で良かったけど。
(あのハッキングの演出シーンだけでワクワクする部分はある。そう言うの好きだし)。
ほぼそれだけで映画一本持たせるのだから、かなりのものだ。




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過去のない男

Mies vailla menneisyyttä002

Mies vailla menneisyyttä

2002
フィンランド、ドイツ、フランス

アキ・カウリスマキ監督・脚本・製作
レーヴィ・マデトーヤ音楽


カティ・オウティネン、、、イルマ
マルック・ペルトラ、、過去のない男
アンニッキ・タハティ、、、救世軍のマネージャー、バンドのヴォーカリスト
マルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ、、、救世軍バンド メンバー
タハティ(監督の犬)、、、ハンニバル
ユハニ・ニユミラ、、、ニーミネン
カイヤ・パリカネン、、、カイザ・ニーミネン
エリナ・サロ、、、造船所の事務員
サカリ・クオスマネン、、、アンティラ
アンネリ・サウリ、、、バーのオーナー
オウティ・マエンパー、、、銀行員


過去のない男が、寿司を食べながら日本酒呑んでいる時に日本のロックバンドのクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」がBGMで使われていた(笑。
暴漢にこっぴどく殴られた為に、記憶を失い自分の名前も家も職業も分からなくなってしまった男の数奇な物語。
だが、噺が面白く笑える部分もある。

Mies vailla menneisyyttä001

相変わらずタイトに切り詰めた映像だが内容~トピックが豊かでバンド演奏にも幅がありエンターテイメントとしても充分愉しめる。
3作の中では一番楽しく観られた。展開が面白く見応えがあるのだ。
1作目に出ていたキャストがここでも主要キャストを務める。
カティ・オウティネンは監督のお気に入り女優であるか。

過去のない男は確かに初っ端から暴漢に襲われ死ぬほど酷い目に遭うが、その後は物凄く憎たらしい悪徳警官に虐められるも、他の二作ほどの過酷な目に何度も遭うようなことはない。病院で死んだと思われ処分されそうになったり、浜辺まで逃げて昏倒していたらブーツを奪われたり、散々な目には遭うのだが、その後目障りなのは胸糞悪い悪徳警官くらいか。

Mies vailla menneisyyttä003

3作全てに謂えるが、役所や警察が実に冷たい。仕事も見つからず、やっと雇われたと思っても直ぐにクビにされ社会的弱者は、まともに生きられない。銀行などもっての外。
おまけに治安が悪い。ギャングは勿論だが、チンピラがあちこちに跋扈している。
身を守り何とか生き抜くことが如何に大変であるか。
ストレスからか皆よく酒を呷り、煙草を吹かす。一作目は特に酷かったが、もう酒と煙草が途絶えない。
健康にも当然悪く、アルコール依存症でカウンセラー通いの人もいたが。
基調となるのは只管貧しく陰鬱なトーンだ。

だが絶望に浸ってばかりではない。
身包み剥がされ記憶を失い悪徳警官には何かと金を絞り取られるが、手を差し伸べてくれる人もいる。
皆ホームレス同然の人々だが。
そして公的な機関なのか「救世軍」という自立支援組織を紹介されそこで仕事も見つけてもらい随分と助けられる。
ここの職員である(もうお馴染みの)カティ・オウティネン演じるイルマに一目惚れ。
彼女を誘うと相手もまんざらではない様子。
直ぐに2人は親しくなる。

Mies vailla menneisyyttä006

ここで面白い突飛な展開は、就職する会社の事務員、いつも良い役処のエリナ・サロから給料を振り込む口座を作るように言われ窓口に行ったタイミングで銀行強盗と鉢合わせとなる。彼は理不尽な資産凍結に怒り自分の金を奪いに来たのだった。彼が去った後、金庫に銀行員と共に閉じ込められる。銀行は北朝鮮のモノになるらしい。酸欠になりかけた時に煙草を吹かし火災報知機の作動で助けられる。だがその後、自分の名前も出身地も忘れている不審者として警察に身柄を拘束されてしまう。
しかしイルマの手配で弁護士により釈放される。この辺の警官と弁護士のやり取りが面白い。

自由を得た後、彼には気力が漲って来て、イルマの職場のバンドのマネージャーのような事をはじめ、彼らに時代遅れの詰まらぬ曲ではなく、コンテンポラリーミュージックを演奏するように勧める。
名前の無い男の案に乗りロックまで演奏し出す。
観客の受けもよくバンドもその方向にゆく。
更に溶接仕事を観て強く意識に引っ掛かるモノを感じ、その仕事の腕前で直ぐに雇われることに。
実は彼の以前の仕事がそれだったのだ。僅かではあるが出来事に触れ、思い出す部分はあった。
(この前に決まった仕事はどうなったのかは分からない)。
悪徳警官は相変わらずだが、彼の勢いに押されがちになってゆくところは笑える。
イルマともかなり接近してきたところで、警察から何と君の情報が得られたと名前と住所と妻の名まで教えられる急展開。

Mies vailla menneisyyttä005

イルマと取り敢えず別れて実家に戻ると、妻が離婚届けを作ったのに蒸発状態で種類を渡せなかったという。
おまけに妻の新しい相手も控えていて、決闘だとかいうから、頼むから大切にしてやってくれと言って戻って来る(笑。
自分がプロヂュースしたバンドがとても良い調子でパフォーマンスしている会場にいるイルマの元に帰り、二人でホッとする。

だが、夜道で人が3人に寄ってたかって殴られている場面に遭遇してしまう。かつての自分の姿だ。
ボスがお前まだ生きていたのかと言ってナイフを出して迫って来る。この地で最初に彼を迎えた連中であった。
しかしそのトリオに別の人の群れが襲い掛かって行く。これまで酷い目に遭わされてきた人々が報復に出たのだ。
例の悪徳警官が嬉々として本業である悪者退治に向って行く。

Mies vailla menneisyyttä004

名無し男は、この地に根を下ろし、イルマと幸せに過ごすことはもうはっきりしている。
何だこれもハッピーエンドではないか。
つまり厳しいのは3作目ということ、、、あの作品も僅かながら希望は匂わせていたけれども。
どれも良いのだが、本作が一番面白い。
犬が他に比べ一番活躍~演技していたのも本作である。




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浮き雲

Kauas pilvet karkaavat001

Kauas pilvet karkaavat

1996
フィンランド

アキ・カウリスマキ監督・脚本・製作・編集

カティ・オウティネン、、、イロナ (レストラン給仕長)
カリ・ヴァーナネン、、、ラウリ(イロナの夫、元市電の運転手)
エリナ・サロ、、、スヨホルム夫人 (ドゥブロヴニクのオーナー)
サカリ・クオスマネン、、、メラルティン(イロナの同僚)
マルク・ペルトラ、、、ラユネン(イロナの同僚、コックでアル中)
マッティ・オンニスマー、、、フォルストロム
監督の犬


フィンランド三部作”第一作に当たる作品。
これも悲惨路線のようで観るに当たり気は重い。

Kauas pilvet karkaavat002

だが、ソリッドな質感がとても好ましく、ストーリーがどうであっても見易いのだ。
最初は、夫婦がそれぞれしっかりした仕事に就いており、夫が運転手をしている市電にレストランで給仕長を務める妻が仕事帰りに乗り込み、家まで夫の運転で車で帰るという、素敵な光景が映される。
SONYのテレビ(スーパートリニトロン)を買って妻を驚かしたりと、何とも小市民的な幸せパタンの家庭を描いていくのだが、、、
本作も彼らをとことん奈落の底まで落とす(爆。
そういう連作ものですから、と言われれば仕方ないのだが、、、社会背景もそうした時期だし。

(その悲惨さを)いちいち書く気にもなれないが、、、
「ドゥブロヴニク」というかつて街一番のレストランで給仕長を長年務めたイロナであったが、不況の為銀行の経営方針が変わりオーナーが店を維持できなくなり、失業してしまう。それに先んじてやはり赤字路線のため夫が市電運転手をリストラされていた(経営者が籤引きで決めていたのは正解。これをヘタに理屈つけしていたら拙いことになったはず)。
しかもこの夫は不運なことに折角見つけた観光バスの運転手の口も健康診断で落とされてしまう。更にダメ押しで耳の障害が見つかったことから運転免許証まで取り上げられるのだ。夫婦そろって踏んだり蹴ったりである。
職安に行くが二人とも全くだめ。
夫婦ほぼ同時に失業で全く展望が無いという状況が続く。
但し、昨日のようにたった一人で奈落の底へというのではなく、飽くまでも夫婦で協力して励まし合えるところは、救いか。

Kauas pilvet karkaavat003

「ドゥブロヴニク」解散の夜のパーティーで踊りのバックを務めるミュージシャンがこれまたなかなか聴かせるバンドであったが、二曲くらいフルで演奏していて、このバンドのMVみたいにも感じられ些か尺が長すぎた感がある(何の映画だったか忘れそうになった)。
最初の導入部の黒人ジャズミュージシャンのピアノ弾き語りも味わい深い。
この監督、音楽へのこだわりがかなりのもの。3作目のロックバンドもそうであったが。

さて何とかせねば、と藻掻き始め更に二人は泥沼に嵌って行く。
二人とも幾つも当たってみるが不景気でどこも雇ってはくれない。
そんななかで妻は雑誌の変な求人広告を頼りにその仲介所に行くが大金を取られみすぼらしい食堂に行くことに。
ここでは給仕と厨房を独りで任され大変な目に遭う。
そこへ税務署が押しかけてきて、店主は脱税であげられてしまうようであった。当然店は畳むことに。
妻への給料が未払いのままであるため夫がオーナーの家に乗り込むと、逆に3人がかりでボコボコにされどこかの波止場みたいな場所に車で運ばれ捨てられる。
血塗れになって妻に連絡するが、姿を急に消したことで彼女は怒りまくっていた。

Kauas pilvet karkaavat004

これ以上の踏んだり蹴ったりはなかろう、と思うが、昨日よりはまだマシである。
家に戻ると、アパートの家具や電化製品全て業者が運び出していた。
妻は彼の妹のところに一時退避しているらしい。
この辺でこちらもどうなることかと流石にハラハラして来る。
妻と逢って車(ヴュイック)を売ることにする。それで金を作り保証人も立て銀行に店を出すための資金を借りに行くが、以前より条件が厳しくなっていて例のごとく断られる。そこで一発勝負に出ることに。
カジノで金を作ろうと謂うのだ。これで成功したところを映画で観たことが無く、100%全部すってしまうぞと思ったが全くその通り。
この展開が例のごとく余りに淡々としているので、許す(笑。

Kauas pilvet karkaavat005

妻が美容師の免許を活かし美容室に勤めようと出向いた時、偶然あのドゥブロヴニクのオーナーに出逢う。
そこで何と彼女が出資するからあなたの店を出してみなさいと後押ししてもらうのだ。
新しいイロナの店のスタッフは、全員ドゥブロヴニクの面々である。普通の映画なら泪の再会だろうが飄々と集まっていた。
こんな幸運をこのシリーズで使って良いのか、と思ったが、いやまだ落とし穴があるのかもと注意して見てゆくのだが、途中なかなか店に客が入らず業を煮やすところも描くが、一人入って来ると次々に淀みなくやって来て遂に団体客の予約まで来ることに。
彼女はクローク係の夫と共に、暫し店の外に出て空を見上げ安堵の表情を浮かべるのだった。

Kauas pilvet karkaavat006

完全なハッピーエンドなのでは、、、。
夫婦一緒にやったぜ。どうよ!という顔でないの。
一作目はこうだったのね。
裏切られた気がした(笑。



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街のあかり

Lights in the Dusk001

Lights in the Dusk
2006
フィンランド・フランス・ドイツ

アキ・カウリスマキ監督・脚本・製作・編集

ヤンネ・フーティアイネン、、、コイスティネン(警備員)
マリア・ヤルヴェンヘルミ、、、ミルヤ(マフィアのボスの情婦)
イルッカ・コイヴラ、、、リンドストロン(マフィアのボス)
マリア・ヘイスカネン、、、アイラ(屋台のソーセージ売り)
ヨーナス・タポラ、、、少年
ペルッティ・スヴェホルム、、、刑事
メルローズ、、、ディスコのバンド
犬(監督の犬)、、、パユ


監督の“フィンランド三部作”の第三作だそうだ。
前二作とも観ていない。いきなり第三作目を観てしまった。

Lights in the Dusk002

これがアキ・カウリスマキ監督の本領発揮なのか、どうなのか、、、凄かった。
こんな質感の映画を観てしまうと、第一作『浮き雲』、第二作『過去のない男』も是非とも観ないとなるまい。
この監督についてはまだまだ。

まるで無声映画を観るような感覚に陥る。
徹底的にそぎ落とした表現手法。
何というか、骨格だけを観ているような禁欲的な映画であり物語だ。
主人公の内的な世界そのもののような映像が沁みる。

Lights in the Dusk003

SF映画でないのに、これ程惹き付けられる映画はこれまでに余り観たことが無い。
タルコフスキーやベルイマン、、、くらいかな。後は、溝口・小津あたり、、、。アニエス・ヴァルダやゴダールも好きだけど。
兎も角、主人公がわたしみたい(笑、でもあるのだ。
動けない人間。
他人ごとではない(爆。

しかし、ひと言も文句を言わず、独りで淡々と生きている分、大変強い。
わたしはブログで文句を好きなだけ言っているが、この男は煙草を吹かすくらい。酒も呑むか。
何度も酷い目に遭わされ過酷な生活に苛まれていても希望は捨てない。
「こんなところでは、死なない」と何度貶められようと最後にも言っていた。
これぞ男の中の男だ。

Lights in the Dusk004

シンは強いことは分かるが、孤立無援の生活者は悪の権化のような奴のカモにされ易い。
悪ほど、そういう対象を見抜き操るのが得意である。
ここに出て来るマフィアのボスは、見るからに悪魔そのものだ。顔がまず悪魔だし。
そして魅入られたようにやられる主人公も典型的な存在と謂えるか。
やられるタイプは確かにある。

そもそもマフィアのボスの情婦にコロッとやられ、散々な目に遭わされるのに全く懲りない。
ここだけはどうにも共感できない一点である。
まずこの女の何処に惹かれるのか、わたしには全く分からない。魅力を感じないのだが。どちらかと謂えばファニーフェイスだぞ。
屋台の女性の方がずっとまともだと思う。彼は自分と同じ匂いを彼女に感じとる為、距離を持つのか?似た者同士かも知れない。
何にしても嵌められて酷い目に遭わされれば、普通は学習しもうお前の好きにはさせない、とか報復にも出るはずだろうに。
また直ぐ後で、いいように騙され利用される。
何でこんな女にと思うばかり、、、。彼の事を「負け犬」呼ばわりしている糞女である。
自暴自棄なのかとも思ったりするが、漠然とした希望は抱き、くたばるつもりはないのだ。

Lights in the Dusk006

彼が楽しそうに笑ったのは、情婦に騙され罪を被せられて有罪となり刑務所で過ごしていた時だけである。
警備会社でも仲間や上司から疎まれ、笑顔など全く生じる余地すらなかった。
唯一笑えたのが、社会的にみてどん底の状況下においてである。
そして仮出所して施設に身を置き、何とか皿洗いの職に就くが、またもやマフィアの目に留まり、手を回され解雇となる。
流石にボスに恨みをもち果物ナイフを持って襲い掛かるが手下に呆気なく阻まれ、ボコボコにされ重傷を負う。

浜辺で息絶え絶えになっているところを屋台の女性に助けられる。
避けて来た馴染みの女性と謂う微妙な関係であるが、彼女の手を握ったところで、映画は唐突に閉じる。

Lights in the Dusk005

全く希望が無くなったわけではない。

なかなか魅せてくれるではないか。
ストイックの極致の素敵な映画であった。

メルローズ結構聴かせるバンドである。




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スノーホワイト/氷の王国

The HuntsmanWinters War000

The Huntsman: Winter's War
2016
イギリス、アメリカ、中国


セドリック・ニコラス=トロイアン監督
クレイグ・メイジン、エヴァン・スピリオトプロス脚本
グリム兄弟『白雪姫』原作
ジェームズ・ニュートン・ハワード音楽


クリス・ヘムズワース(幼少期コンラッド・カーン)、、、エリック (ハンター)
シャーリーズ・セロン、、、ラヴェンナ(氷の王国の女王)
エミリー・ブラント、、、フレイヤ(ラヴェンナの妹)
ジェシカ・チャステイン(幼少期ニーヴ・ウォルター)、、、サラ(ハンター)
ニック・フロスト、、、ニオン
ロブ・ブライドン、、、グリフ(ドワーフ)
シェリダン・スミス、、、ミセス・ブロムウィン(ドワーフ)
アレクサンドラ・ローチ、、、ドリーナ(ドワーフ)
ソープ・ディリス(幼少期ナナ・アジェマン=ベディアコ)、、、タル(ハンター)
サム・ヘイゼルダイン、、、リーファ
ソフィー・クックソン(幼少期アメリア・クラウチ)、、、ピッパ (ハンター)
サム・クラフリン、、、ウィリアム王


キャストは実に豪華。
しかし無駄に豪華。
シャーリーズ・セロンとエミリー・ブラントとジェシカ・チャステインの3人の主演女優を持ってくるほどの噺には思えない。

The HuntsmanWinters War001

演出で面白いなと思うところはあった。
姉によって潜在能力を放たれたフレイヤの術で氷の壁を一瞬のうちに作るVFXがなかなかのものだが、その壁に透けて見える光景がどちら側から見ても彼女の思った画像が映し出されるという優れものなのだ。
ほうっと思わず感心してしまった。後でだが(笑。
詰まり氷の壁を通して見える相手~向う側の姿を想う通りの画像として生成できる。
勇敢な相手が氷を打ち破って助けに来ようとしていたとしても尻尾を巻いて退散する画像を見せることが出来る。
反対に向うに対してはこちら側の者が無残に殺されたという映像を見せて落胆させることも。
これで壁に挟まれた両者の絆は砕け散ることになる。
信頼も愛も生死においても。

The HuntsmanWinters War003

氷の女王の技としては、これ程のものはないように思える。
その後、二人が生きており、出逢ったとしても元のようにはいかない。
一度不信感をもったり、絶望して諦めたりした後で、ぼくたち愛し合ってたよねとはいくまい。
この技は凄いと思ったが、その他は単調なのだ。
特におおっと驚くほどのものはなかった。
小技は繰り出して来ても想定の範囲内。
確かにサラ役のジェシカ・チャステイン、アクション~弓矢頑張っていたが、、、。

The HuntsmanWinters War005

ほぼここはこう来るなと思ったように展開する。
こういう感じに流れるな、と思っているとそうなるパタン。
最初から鉄板フォーマットなのだと思う。
製作側からすれば、これまでにない新しいポイントを幾つも上げて来るものだと思うが、、、
(確かにこれまでになく女優陣がゴージャスだ)。
やはり驚きも発見の楽しさも特には無かった。
貫禄たっぷりの恐ろしい姉妹同士の葛藤ももっと凄みを見せつけても良かったか、、、。
流石に綺麗であったが。それは充分知っているし(笑。

The HuntsmanWinters War002

またこちらの現実への結びつきも無い。
そりゃ、ファンタジーなんだからあるはずなかろう、と言われるところだが、ファンタジーでも接続してくるものはある。
よく出来たSFだとかなりある(考えてみればSFが一番あるな。だから興味があるのだ)。
逆にリアリズムものドキュメンタリーなどは、仰々しくわざとらしかったり、上なぞりの現状確認に終わっているものは多い。
その上退屈だったり。
ファンタジーやSFものなどは、現状を激しく揺り動かして来るものが少なくない。
そこが信頼できるところだ。

The HuntsmanWinters War004

現実を深く語る~抉るには虚構や抽象が必要である。これは絶対に。
本作は原作もあり、滅多なことは出来ないのは分かる。
ファンタジーVFXをエンターテイメントとして活かし切るのが目的だ。
スリリングでダイナミックでディテールでハッとさせたりが出来ていればまずまずであろうが、、、
イマイチ感は否めない。
但し、この路線でもっと興行成績を伸ばすものをと考えるとやたらと刺激を強くしてゆく方向性しか残らないようにも思える。
AIに任せればかなりましなものが出来そうだが、限界がはっきりあり、展望は無い。
まあ枠を外せば、つまり制限がなければ、凄いものが出来るのでは、、、。
そうしたものは近いうちにお目見えするはず。

The HuntsmanWinters War006

それも含め、単なる暇つぶしに映画を観ている余裕は無いことは自覚できた。
そうしたブログを書いているゆとりもないのだ(笑。
娘二人が揃って進学は可成り、キツイ。
(自分が進学の時は、ほぼ無意識で無風であったが。こんなに大変なの(爆)。





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ロバと王女

Donkey Skin001

Peau d'âne  / Donkey Skin
1970
フランス

ジャック・ドゥミ 監督・脚本
シャルル・ペロー『ロバの皮』原作
ミシェル・ルグラン音楽

カトリーヌ・ドヌーブ、、、王妃/王女«ロバの皮»:
ジャン・マレー、、、王様
ジャック・ペラン、、、王子
ミシュリーヌ・プレール、、、赤の国の王妃:
デルフィーヌ・セイリグ、、、リラの妖精
フェルナン・ルドゥー、、、赤の国の王
アンリ・クレミュー、、、医者
サッシャ・ピトエフ、、、大臣
ピエール・レップ、、、ティボー
ジャン・セルヴェ、、、ナレーター
ジョルジュ・アデ、、、学者
アニック・ベルジェ、、、ニコレット
ルイーズ・シュバリエ、、、老婆


カトリーヌ・ドヌーブのヒロインミュージカル。曲の方はわりと控え目な感じのミュージカルだ(インドと比べてはならない)。
彼女を見初めた王子はこれと言って自分では動かず、恋煩いで寝て待つだけ。周りがあたふた。
超過保護のボンボンもいいところ。
ここでは、ドヌーブが焼いてプレゼントしたお菓子に入っていた指輪を町中の娘が試すというメンドクサイ流れに、、、。

Donkey Skin002

そんなアホな。何ともまどろっこしい。
ロバの皮の女だという事は分かっているのに、、、回りくどいことを。
指がやたらと細いのね。でも指の細さだけなら他にも該当者はいるだろうに、、、。
兎も角、ドヌーブが一番細くて良かった、のかどうなのか。

兎も角、噺などどうでもよく、美術を魅せる映画と謂える。鮮やかな色彩を。
それは確かだが、何だかね、、、。
おお美しい!、、、が愛なのだ。

Donkey Skin003

家来たちは青は皆服装だけでなく顔まで青い。乗る馬まで青い。
赤は顔も当然赤い。馬も赤い。
何だこりゃ。
ちょいと不思議の国のアリスみたいな世界を構築しているでないの。

音楽はまずまず。お城の庭園でドヌーブがオルガン弾いて唄っていた曲(テーマ)は素敵だった(歌は吹替だが)。
ロバは、お尻からザクザク宝石を垂れ流す。
財に困ることは無い。
だが、お妃が病気になり、わたしよりも綺麗な人が現れるまで再婚しないでと王に遺言して逝く。

Donkey Skin004

その言葉を守りながら再婚を勧める重臣たちに取り合わず過ごすが、何と言う美しさだという女性が見つかる。
それが娘~姫なのだ。そりゃカトリーヌ・ドヌーブ二役なんだからそうなるでしょ。
だとしても何でこの父~王はそれに気づかないの。
そしてこともあろうに娘に結婚を申し込む。
アホかい?

だがマジなのだ。余の心は決まっておると。
娘は流石に困ってしまい、リラの妖精に相談する。
妖精は国王を諦めさせるための難題を出しなさいと姫に忠告する。
結局この妖精の謂うがママの事を国王に願い出ることに、、、。
超豪華ドレスである。
しかしこの手のオーダーは全て叶えてしまうだろうに。

Donkey Skin006

晴れた空色のドレス。次は月色の輝くドレス。そして極めつけに太陽の色のドレス。皆作らせてしまう。
妖精にそそのかされて次々に父の申し出を断って行くが、最後にロバの皮をはげはキツイ。
そのロバは生かしておけばドンドン宝石をお尻から垂れ流すのに皮をはいでしまう。
ここまでされたらもう逃げるしかない。

そしてロバの皮を被り魔法の杖を妖精から貰い、身をやつして城から脱走する。
よくロバの皮なんて羽織れるなと思うが、普通に羽織って歩く。
まあ、魔法の杖があれば大概のものは出せるので困ることは無い。
下女として他の城下で身を隠して働くことに。
彼女をこき使う老婆が唾を吐くたびにガマガエルが口から落ちる。おもろい。
民衆から汚い臭いと罵られながら”ロバの皮”の呼び名でずっとこき使われて過ごす。
これもひとつのイニシエーションなのか。
そこで王子様を待つという何だか分るような分らぬ展開に。

Donkey Skin007

王子が或る時森の中で小屋を覗くと彼女を見つけ恋に落ちる。だがそれから先が意味不明のアプローチをとることに。
そして例の件で彼女に指輪を試すとピッタリなので結婚となる。初めから分かっているのだが。
すると父である国王がヘリでお祝いに駆けつける。
何と彼は自分の思惑を悉く邪魔してきたリラの妖精と結婚していた。わけわからん。
その後世界中の王たちが祝いに駆けつけ、、、
盛大な結婚祝いは3ヶ月間続いたという。めでたいことだ。

絵を愉しむ子供向け絵本のような映画であるが、まあ何だろうね。
わたしはどう愉しめばよいのよ?という映画であった。
一度は観ておこうと思っていたので、これでよし(爆。





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私の20世紀

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Az en XX. szazadom
1989
ハンガリー、西ドイツ


イルディコー・エニェディ 監督・脚本
ラースロー・ビドツキー 音楽


ドロタ・セグダ、、、りり、ドーラ、双子の母
オレーグ・ヤンコフスキー、、、Z
パウルス・マンカー、、、ヴァイニンガー
ペーター・アンドライ、、、エジソン
ガーボル・マーテー

4Kレストア版であった為、夢を見ているような綺麗なモノクロ映像であった。
ブダペストで幼くして生き別れた双子の数奇な運命を描くが、独特の美学のもとに制作されていることが分かる。
妙に古風に作られている。その拘りが形式になっているような。
エジソンの発明による電球のお披露目で人々が湧きたっている頃から始まる、、、この辺の導入から持っていかれる。
(双子はマッチ売りの少女などやっていたが、妙に芝居じみていて如何わしかった((笑)。

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双子はリリ、ドーラと名付けられ、全く違う環境下でかけ離れた人生を送っていた。
1900年にオリエント急行に偶然、上りと下りではあるが、乗ることになる。わたしの20世紀の始まりへ、、、。
第一次世界大戦前のちょっときな臭い雰囲気もあれど。(寧ろこの作品製作時期の世界情勢こそ微妙であった気がする)。
リリはちょっと頼りない小心者の革命家になっており、ドーラは詐欺師娼婦となって羽振りは良い。
ドロタ・セグダが見事に大胆に演じ分けている。
最初にそれを知らなければ、違う女優が演じているように見えてしまう。
もっとも双子(一卵性)であるから、同じ姿かたちがしっくりするが、演じ方が余りに違い同一人物には思えない。
女優が上手いに尽きるが。女性監督特有の演出も当然利いている気がする。

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パッと見ロートレックみたいな紳士(背は高い)が、何と二人を同一人物だと思って好きになってしまう。
容姿がそっくりだとしても表情や仕草、所作、振る舞い、行動、言動、姿勢、衣装、が全くかけ離れていて違うパーソナリティー(人間)である。わたしの好きな人に似てますねえ、とは謂っても、もう同じ人間と決めつけて接近は普通しないと思うが、、、。
調べて驚いたが「ノスタルジア」(余りに古い記事なのでわたしの記事には思えない(爆)のオレーグ・ヤンコフスキーであった、この人。
わたしという存在の非連続性を思い知る、、、

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二人のヒロインは20世紀を生き始めるが、エジソンその人との繋がりは全くない(笑。
エジソンは時代の象徴として登場しているようだ。
二人は、電球による夜を照らす光とも電信技術による世界を瞬時に繋ぐネットワークとも、特に関係ないように見える。
革命家はそれ以前に沢山いたし、新しい手法を取り入れて活動している訳でもない。とても古い手法で動いている。
男をたぶらかして金を巻き上げる詐欺娼婦はそれこそ、古典的な存在でもある。
テクノロジーが進歩~激変してもヒトがそれほど変わる訳でもない、といった側面を描こうとしているのかどうかは、ちょっとわからないが、、、。

リリが爆裂弾に火をつけたは良いが、投げることが出来ず、火も消えてしまったところは、実にペーソスはあるが、ショボすぎる。
エジソンの発明には絡み様がない。
「ハンガリー 女性解放論者の会」も何だかどういう意図でここまでしつこく挿入されているのか分らぬエピソードである。
繋がりに拘らなければ、まさに夢の断章であろう。それなら分かる。

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二人は鏡の部屋に紛れ込み、ロバに出会い、Z氏もロバに鞄を銜えられ鏡の部屋~りりとドーラのいる部屋に誘われる。
そこで彼は真相を知るが、それでどうなるのかは分からない。
この鏡の部屋のようなシュールな場面は随所にあるが、動物園のチンパンジーの語る自叙伝みたいな噺は、まさに夢で見るような光景だ。彼の語った噺が如何繋がるのかと思っていたが、特にそこだけのことに思える。
「好奇心はほどほどに、、」とか言っていたが、エジソンは好奇心の塊である。
わたしの観方が浅いのかしらとも思ったが、確かに3回くらいウトウトしてしまった。
決して詰まらないとかではなく、こちらも夢見心地に誘われてしまうのだ。
間違いなく一風変わった映画だ。ドロタ・セグダと謂う女優が何と言っても独特の魅力を放っていた。

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終始、絵としての形式的な美が意識された構図が光った。
猫が何故だか一時、クローズアップされたり、それが自然に文脈に収まっている。
ロバもそうだが。
今知ったが、「心と体と」の監督なのね。
これはたまげた。この映画は実に印象に残る映画であり、今BSTVで観ているフランスドラマの「アストリッドとラファエル」の自閉症のアストリッドみたいな女性ヒロインがとても素敵であった、、、。この作品が2017であるから、28年後の作品である。
どちらも形式的に美しいよく練られた作品であったが同じ作家と言われると、、、やはり飛躍は感じられる。

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最後は、エジソンの電報の実験イベントで幕を閉じる。
ここで伝書鳩を窓際に出すか、、、こんな対比は幾つも感じた。
キャストもよく不思議な感触の映画であった。音楽もしっかりフィットして心地い良い。長編処女作だそうだ。





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レディ・プレイヤー1

Ready Player One001

Ready Player One
2018
アメリカ

スティーヴン・スピルバーグ 監督
アーネスト・クライン、ザック・ペン 脚本
アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』原作
アラン・シルヴェストリ 音楽

               本体/アバター
タイ・シェリダン、、、ウェイド・オーウェン・ワッツ / パーシヴァル
オリヴィア・クック、、、サマンサ・イヴリン・クック / アルテミス
ベン・メンデルソーン、、、ノーラン・ソレント(IOI社長)
リナ・ウェイス、、、ヘレン・ハリス / エイチ
T・J・ミラー、、、アイロック
サイモン・ペッグ、、、オグデン・モロー
マーク・ライランス、、、ジェームズ・ドノヴァン・ハリデー / アノラック
フィリップ・チャオ、、、ゾウ / ショウ
森崎ウィン、、、トシロウ / ダイトウ
ハナ・ジョン=カーメン、、、フナーレ・ザンドー
ラルフ・アイネソン、、、リック


のっけのヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」からニューオーダーの「ブルーマンデー」など選曲が決まっている。
3Dアニメーションもとっても自然でなめらかで迫力充分。
アイアン・ジャイアント”や”メカゴジラ”や”ガンダム”、”キングコング”が派手に暴れまくる。ガンダムにタイムリミットがあるのが不思議ではあったが、フィギュアの再現は見事。動きも申し分なかった。

Ready Player One006

2045年に地球は飛んでもなく荒廃していた。
ちょっと早過ぎだろう、という光景。もう現実に夢も希望もない、、、。
どうしょもないスラムで暮らしている主人公ウェイドだが、VR空間「オアシス」に逃避すれば、自分の成りたいものに成り、好きなように過ごせる。戦闘ゲームで荒稼ぎしたり。しかしそれで殺されたりすると、これまで集めたものが全てクリアされ初めからやり直しとなる。これは誰もショックらしい。

Ready Player One002

ほとんど全ての人が「オアシス」に依存して生きている。そちらが主体なのだ。こころはオアシスに。
このオアシス空間とそこで活躍する自分のアバターを操る現実の身体~本体との間を目まぐるしく行き来する映像がスリリングな緊張と臨場感を生む。
何故、バーチャル空間内で完結しないかというと、この物語は、主人公がその空間で5年間誰もが探し出せなかった創始者が隠した第一の鍵を見つけたことによる。
その為、この空間を自分たちが独占したいという野望を持つIOIという企業によって現実空間の生身の本体が狙われることになったのだ。こうしてバーチャル空間と現実空間の両方をまたがっての闘いがド派手に行われることになった。

Ready Player One003

ジェームズ・ハリデーによってシステムは構築され、彼の遺言で、オアシスにしこまれたゲームで3つの鍵を手に入れた者にはオアシスの所有権と5000億ドルの資産を受け渡すとあり、誰もがその鍵を血眼で探し求めているのだ。
ゲームの入り口は見つかったが幾ら挑んでも誰もが途中でリタイヤとなっていた。
ウェイドは、生前のハリデーについての深く細やかな情報~知識を収集し「ハリデー記念館」などで熱心にヴィデオを精査し研究を進めていた。結局、聞き逃してしまうような言葉の解釈が肝心なのだった。
IOIなどの大企業もその鍵を求めて、主人公たちと熾烈なバトルを繰り広げることとなる。

Ready Player One004

兎も角、映像はヘビーな3Dバトルゲーム空間と同等なものと謂えるか。
もう目まぐるしい、と言うかとてもわたしは目で追いきれない。
速くて激しいダイナミックな動きに着いて行くのが大変(笑。
この手のゲームをやり慣れている人にはとてもフィットする映像に違いない。

Ready Player One005

キャラクターも思いっきり個性豊かな者ばかりでアニメの利点を最大限に活かしている。
そしてアバターと本体との対比もとても面白い。
ヒロインはどちらも綺麗で鋭い女性であったが、その他は何とも言えないズレが愉しませてくれる。
ウェイドよりパーシヴァルの方がずっとイケメンであり、親友の巨漢メカ男は黒人女性である。仲間の鎧の武士のダイトウはスリムな日本人青年。忍者のショウは11歳の中国人少年というアバターからは想像もつかないものばかり。
アルテミスとサマンサは別として。

最後は収斂すべき形に収まり終わり。
特に拗らせる必要はないし、ハッピーエンドで良い噺だ。
愉しく観られた。



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サクロモンテの丘-ロマの洞窟フラメンコ-

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Sacromonte, los sabios de la tribu
2017
スペイン

チュス・グティエレス監督

ロマのフラメンコのアーティストたちのドキュメンタリー。
かつては(写真で見れば)輝くスターパフォーマーであったが、今はおじいちゃん、おばあちゃんなのだ。とても味のある。
それでも凄い熱量と技量で迫ってくる。
お孫さんのような人たちがしっかり魅せるので継承されていることは分かりホッとした。
出来れば若い人のパフォーマンスをもっと観たかった。継承を超えたものをちょっと感じたからだ。
(もう洞窟は無くなってしまい普通の住居で暮らしている世代だ)。

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アンダルシア地方のサクロモンテの洞窟でロマたちがフラメンコを盛んに踊っていた。
彼らに所謂、学校とか授業と呼ばれるものは無く、皆師匠に当たる人を見て聴いて真似て技量を身に着けていたという。
洞窟ごとに何やらグレード~流派があり、継承されたフラメンコを各自極めていたようだ。
それぞれのかつての大スターから昔の栄光の噺がなされるが、こちらとしてはほとんどピンとこない。
場所名もその頃のフラメンコの大スターも分からないことで、何だか凄いみたいと感じるくらいだ。
フランク・シナトラの名前だけはわかったが。

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終盤には、3世代に渡ってパフォーマンスが観られたが、まだ年端もいかぬ娘さんが凄い歌を聴かせたのは印象的。
まあ、おじいちゃん、おばあちゃんたちも5歳くらいから歌とダンス、男子はギターも見よう見真似で誰もがやって来たそうだ。
謂わば、生活そのものが、フラメンコのパフォーマンスの一部であったのだ。
だから生きることが、常に唄って踊って弾いている状態。
考えてみれば凄いことだ。生活の細やかな機微を全て掬って歌にして唄い踊り弾いてしまうのだ。
これ程裂け目のない芸術的生活なんて、、、。もう芸術のアマルガムのなかで生きてるような。

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洞窟が大雨(水害)で崩れるなどして、977あった洞窟から4429人が立ち退き命令を受けバラックに引っ越したというが、それによりロマのコミュニティが衰退し一時、フラメンコも下火になってしまったという。
ロマたちはかなり辛い時期を過ごしたというが、、、。つまり下界に降りて普通の職業に就いて生活を営むこととなった。
今は確かに洞窟に住んでいる人はいない。洞窟コミュニティはもう存在しない。
しかしフラメンコ自体は、新たな生活形態のなかで蘇り、若い世代に引き継がれていることはこれを観て確認できた。
基本的に、政治的な要素は無く、生きる喜びを謳歌する力強いものである。ユーモアがあり下世話な部分もあり、、、。
特に第二世代の椅子に座って踊るフラメンコダンスはやたらカッコよかった。
(第三世代の若い女の子の歌も見事だったが)。

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わたしにとっては、若い世代のものがしっくりくる。
ほぼロックに近いパフォーマンスが感じられたからだ。
オランダのトレースのリック・ヴァン・ダー・リンデンがバッハを高速で弾いてまさにロックにしていたみたいに、エッジの効いたパワーで迫るパフォーマンスは同様のインパクトを感じられるところであった。
そう言えば、フラメンコを取り込んだロックアーティストも70年代かなり見られたな。
スパニッシュ・プロフレッシブ・ロックバンドが幾つもあった、、、が今確認できない。かなりディープな構築美による世界を表出していたものだが。
LP版でしまい込まれている為、どういう状態になっているかちょっと心配になって来た、、、(涙。

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もっと身近なフラメンコ・プログレ・グループでいうと”カルメン”が有名。
音もよく出来ていて演奏力も高い。何よりステージ上で映えるライブバンドであった。
イエス並みの楽曲と演奏力に加えヴォーカリストが実際にフラメンコを間奏で見事に踊ってしまう。
これは受けると早速目を付けたのが、デヴィッド・ボウイであった。やはりアンテナ張ってますな。日本で言えば坂本龍一か。
未だに彼らの楽曲は脳裏に浮かぶくらい、かなりのインパクトであった。
恐らくフラメンコの形式を取り込んで楽曲にすることで本質的なソウルもものにしているのだ。
まだギリでフラメンコの噺には乗っかっているな、、、(笑。

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ともかくこのドキュメンタリーでロマのフラメンコと切り離せない生活と洞窟文化に触れ、その独特の継承の形体を知ることが出来た。
そして元気なかつてのスターであったおじいちゃん、おばあちゃんの現在のパフォーマンスにも浸り刺激は充分受けたものだ。
が、わたしは2世代目、3世代目のパフォーマンスこそ見たい。
(余り観られなかったものだし)。
世代の繋がりと飛躍も確認したいのだ。
この続編でやってもらえたらとっても嬉しいのだが。
ただ監督の趣旨はそこにはないようだし無理ね。
何かの形で、若いロマの現在のフラメンコ観たい。




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トラベラー

The Traveller001

The Traveller

1974
イラン

アッバス・キアロスタミ 監督・脚本
カンビズ・ロシャンラヴァン 音楽


ハッサン・ダラビ(10歳の困った少年)

アッバス・キアロスタミ監督の処女作だという。
しょうもない少年を使った映画は最初からなのね。
これでこの監督の映画は確か8本目の鑑賞となるか。

The Traveller002

まあ一般人の少年の頑張ること。
これ以後の映画でも素人少年が、かなり酷使され怖い目に遭わされている。
そもそもイランには子役は少なかったりするのか?
素人を是非とも使いたいと謂う監督独自の拘りか?
イラン、トルコ、イスラエル等の大国に役者が不足しているとは思えないし、やはり監督の趣味であろう。

アッバス監督の作品では、少年の強い不安や恐れがリアルに描かれたものがとてもよい。
友だちのうちはどこ?」、「ホームワーク」等特に、、、名作である(子供たちにはたまったもんじゃなかったり)。
わたしとしては、真に迫っていて上手いのか、素朴そのままの素直さが見事に引き出されているのか、分らない部分はある。

他にも子供主体でない~出てこない作品も良い。
「桜桃の味」、「オリーブの林をぬけて」、「そして人生はつづく」、「風が吹くまま」など、、、どれも味わい深いものばかり。

The Traveller003

さて本作であるが、まあ悪ガキが学校の勉強も宿題もせず、友達と少年サッカーばかりやって過ごしている。
当然成績は悪く、落第をしているみたい。小学生で。
テストでもカンニングしてテスト用紙を取り上げられている。

そんな彼が、明日テストという日に、よりによってお目当てのチームの試合がテヘランで行われるということで、絶対に行ってやると決める。勿論学校さぼってである。テスト受けなければまた落第であろうに、、、。どういう奴なのか。TVではダメなのか。
しかしテヘランまで行き、試合会場に入るには、往復旅費と入場料金は最低必要である。
そこで家の金は盗むは、無理やりガラクタを押し売りに行くは、古ぼけたカメラを掘り出して、カメラが売れないと分ると、フィルムも入っていないのに写真を撮ってやると謂い、順番に子供たちから前金をもぎ取り一枚ずつ撮ったふりをしてゆく。相棒が肝心の写真はどうするんだよと聞くとボケて取れなかったという、と平然と応える。しかしまだまだ足りない。
そこで、何と自分たちのチームが大事にしているサッカーボールとゴールを、チームが解散したからと言って売り飛ばしに行く。
飛んでもないガキだ。
それでどうにか資金調達出来、その夜の11時のバスに乗ってテヘランへと向かうことに。

The Traveller004

バスの時間まで自宅で息を潜めて待つがちょっと眠りかけたりする。
まさか眠ってしまって乗り遅れ等しないよな、と思っているとギリで家を出る。
案の定、バスに乗り遅れ走って追いつき、ドアを叩き辛うじて乗せてもらう。
このガキ万事このペースなのだ。

そして明くる朝会場に到着し、長い列に押し込まれる。
ここでも押すなとか早く行けとか、実に何とも、、、
それで、彼の前で券は売り切れ。さあ帰れと来た(爆。これはちょっと監督やり過ぎとも思えるが(笑。
当然、納得しない悪ガキである。
そこで現れるのが、所謂チケット高額不正転売のお兄さんである。
50リアルを200リアルで売っているのだ。
当然文句を言うが相手にされない。だが落ちていた札を使い一枚買い取る。

The Traveller005

そして走って良い席を見つけ、そこでホッとして弁当を食べる。
隣りのおじさんになれなれしくテヘランの見所などを聞いたりするが、ここからは遠い。
まだ始まるまで3時間あることを知り、おじさんに席を取って置いて貰い、町の見物に出てしまう。飽くまでマイペースだ。
スポーツジムやプールなどを覗き、何故か芝生みたいなところで昼寝をしている人々がおり、そこに混じって寝てみる。
前日の疲れも手伝ったか眠りに落ちてしまう。
夢には皆に責め立てられ苦しむ自分の姿が出て来る。
ハタと目覚め会場に走って戻るが、がらんと人気のいない一面ゴミだらけに汚れた席がひろがっているだけ。
清掃員が残っているだけだった。

The Traveller006

何とも徳のない少年に相応しい空間よ。
あれだけ彼なりに頑張った仕打ちがこれである。
哀愁に充ちた絵であるが、、、何とも言えない。

いくら自分の行いの周囲に与える影響が計れない年頃とは言え、これからどうするつもりなのか。
恐らく何も考えていないだろうが、無意識的には悔悟の念は生じているようだ。
予知夢まで見ている(爆。
これから帰っても、金策で苦労をかけた相棒には、試合どうだった?としつこく聞かれるだろうし、撮影で騙した子供たちからは写真はどうなったのと催促がやまないだろうし、少年サッカーチームのメンバーたちからは、俺たちチーム解散した覚えはないぜと、恐らくボコボコにされるだろう。更にテストをさぼった付けも当然、先生から言い渡されるはずだし、お金が無くなったことを母はまだ強く疑っており、追及は続くはず。わたしなら帰る気はしないが。

この後の監督の映画に出て来る少年の中で、最もお先真っ暗な子だ。
ご愁傷様
最初からこんな感じだったのね。巨匠と謂われているが、かなりの意地悪。
ただ素人にここまでやらせるのは、凄い。




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”Bon voyage.”

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