プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
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カッシーニ グランドフィナーレⅡ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
スノーデン
シャイン
鑑定士と顔のない依頼人
英国王のスピーチ
やさしい本泥棒
末期の目
レヴェナント: 蘇えりし者
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
写真についてーⅡ
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
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岸田劉生

『驚く可きは実在の力
自分は猶これを探り進めたい』

kisida ryuusei002

「道路と土手と塀」
この坂の向うに何が控えているのか、どのような広がりがあるのか、とても怖いが好奇心は更に大きく疼く。
路に横たわる二本の黒い影が不安を煽る。

実在に迫る。
確かにそれが放つ力~面白さ~異様さに惹き付けられてゆき、想像力に接続する。
この土の路のボリューム(量感)とムーヴマン(動勢)はもはや尋常ではなく、それは想像力をエネルギーにしてせり上がる。
文字通りにせり上がる。
遊び心もあるかもしれない。
だがそれがどう展開し得るか、かなりの危うさを秘めている。

物は動いてゆくことをわれわれに思い起こさせる。

岸田劉生はデューラー(写実の極み)とウィリアム・ブレイク(幻視)に深く傾倒していたと謂うが、それは完全に血肉化されていることも分かる。
表面的に似ているなどの(影響は)感じさせない。
少なくとも彼は、ラファエル・コラン経由の折衷的(印象派と象徴派を口当たりよくミックスした)作風を西洋絵画として継承していた当時の日本油絵画家とは一線を画する。
おフランスから取り寄せたこじゃれた油彩ではない。
独自の思索を突き詰めた絵画である。


kisida ryuusei003

「麗子像」
上下に圧縮されていて手がとても小さい。
そしてこの謎の微笑は、、、。
とても日本的に思える。
自らのルーツに遡った姿が娘の肖像「麗子像」へと昇華したかのような。
いつもこの絵を観ると仏像を重ねてしまうが、よくよく見ると尚更そう見える。
有難い気持ちに何故かなる。

写実を極めた先の帰結としてのデフォルメ。
最初からピカソやマチスの真似から入ったデフォルメではない。
本物の形。

『驚く可きは実在の力』

本物の絵もこの力を持つ。


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小早川 秋聲

kobayakawa syuusei001

「國之楯」

従軍画家、小早川 秋聲の作品「國之楯」の静かな衝撃は未だに脳裏を巡っている。
はじめて見た時、ミケランジェロの「ピエタ」を想った。
しかし「ピエタ」は、神聖で荘厳な作品であるが、地続きに共感できる人間的ドラマも重ねて見ることも可能だ。
だが、この「國之楯」は、これを前にして無言で立ち尽くす以外に何もできない。
自分なりの言葉に絡めることが不可能なのだ。
何らかの形で押さえようとしても言葉が全て滑り落ちてしまう。

完全に隔絶されているのだ。
そこに見えていても、その場所は、この時空に存在していない。
全ての意味の文脈から断ち切れた。
まさに「死」の場所。
その姿が無限の重みとなっている。
顔は日の丸の旗に覆い隠され、手にも手袋をして横たわる身体は、生身を全く晒していない。
この身体は、もはや誰にも触れえないことが分かる。
如何なる言葉も受け付けない。
「死」の実相にこれほど迫った絵画があっただろうか。

小早川ほど長期に渡って兵士と同じ地平で共に過ごした従軍画家はいないと言われる。
自身、軍人であり僧侶でもあった日本画家だ。
常に兵士と行動を共にしてその最前線における生の現実を描き続けた。
つまり、突撃風景よりも寧ろ彼らの日々の生や死とそれを弔う姿~光景をすぐ隣で描いて来たのだ。
日本にいて写真などを元に戦意高揚のための観念的な絵を描いた戦争画家とは、明らかに一線を画する。
彼ら戦争画家は(例えば藤田嗣治の「アッツ島の玉砕」など)日本の兵士の死体など一切描かず、敵の死体が累々と積み重なるところを勇猛果敢な日本兵が死を恐れず突き進むといったものである。
(玉砕ならば、日本兵が全員死んだのである)。
または、真珠湾攻撃の様を上空から俯瞰した(航空写真の)構図でモニュメンタルに描いたものが傑作として残されている(これも藤田嗣治のものが有名)。

そうした絵のなかで、超然と際立つ作品である。
この作品は日本軍から受け取りを拒否された。
だが、この絵を観た兵士誰もが、帽子を取り敬礼をして動けなくなったという。

そう、それを前にして動けなくなる絵画である。




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わたしは、ダニエル・ブレイク

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I, Daniel Blake
イギリス、フランス、ベルギー
2016年

ケン・ローチ監督
ポール・ラヴァーティ脚本
ジョージ・フェントン音楽

デイヴ・ジョーンズ、、、 ダニエル・ブレイク(心臓病を患う大工)
ヘイリー・スクワイアーズ、、、ケイティ・モーガン(シングルマザー)
ディラン・マキアナン 、、、ディラン・モーガン(ケイティの長男)
ブリアナ・シャン 、、、デイジー・モーガン(ケイティの長女)
ケマ・シカズウェ、、、チャイナ(ダニエルの隣人)


制度的に給付金が支給されにくいシステムになっているのか。財政赤字から福祉関連の支出を極力抑えるように故意に手続きを煩雑にしその対象となる人々に諦めさせようとしている実情が見て取れる。
姑息な手だ。
かつて福祉大国と謂われた(揺り籠から墓場までの)イギリスもこのような為体である。
経済的に停滞が見えている先進国の多くはこう言った状況なのだろう。

ただし、どうであっても心臓に病を抱え主治医から就労を止められている者~国民に対し、何の経済的支援~保証も出来ないのであれば、最早国としての体をなすまい。
あからさまに生存権が侵されているではないか。緊縮政策のしわ寄せが福祉面に如実に表れている。
ここは大きな問題である。
国民側もサイレントマジョリティーでしかない。
であるからか、ダニエル・ブレイクが壁にスプレーで文句を書き付けた時に、如何にも経済的に底辺に暮らしているような人々から声援が自然に沸き立った。閉塞空間に小さな風穴が開いた感じだ。

I, Daniel Blake004

ダニエルが支援手当の給付の審査に赴いた時から、その後ずっと滞って話が進まないどころか、僅かな申請上のミスや不備を突かれ受給停止や罰則まで課せられる始末。
しかもバカげた質問をくどくどした挙句に就労可能という判断を下す。君は医者かねという質問に医療専門職であると事務的な答えを返す。そして彼に求職活動をして支給の審査を受けろという。
ここでは、特にお役所側は、助けを求めて長い時間並び漸く呼ばれた人を、杓子定規な言葉と理解不能な対応で遠ざけつづける。
普通の神経なら苛立つのは当然だ。
彼は実直で腕の立つ人情に篤い大工であるが、パソコンなど必要ない世界に生きて来た。
それが死活問題の手続き全てパソコンなしでは出来ないウェブ上での作業なのだ。何時間かけてもエラー音に悩まされ続ける。
お役所が国民に対し敵対しているようにしか見えない。
そんなとき大概周囲はその人に対し自己責任と謂って突き放すだけであろう。
彼はただ真面目に真っ当に生きて来ただけなのだ。それのどこが悪い?

フランツ・カフカもお役所の役人であったが、ある労働者の救済の為、自らが彼の弁護士を内緒で雇い、自分たち(役所側)が裁判で負けるように仕向けたそうだ。カフカの(自称)弟子であるグスタフ・ヤノーホの手記にあったエピソードであるが、後にそのことを知った労働者は、カフカの事を「聖者」と呼び深く感謝していたと。それは尊い行いであると思った。
しかし聖者がそこここにいるわけはなく、この噺で描かれるのは弱者同志のお互いの状況の理解と同情・共感による相互扶助、支え合いの精神の尊さである。
この人と人との関係の原点に立ち戻り、再度システムの見直し~改善をすべきではないか。
システムこそが肝心であり、何処かにいるかも知れない良い人頼みというわけにはいくまい。
現状のシステムでそのまま行けば、エアポケットに落ちてしまう人は必ず出る。
誰がそのシステムの歯車に就いても多様なニーズに応えられるものにしておかなければ悲劇は続く。
セーフティネットの完備を目指すべきである。

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しかしここではシステムには回収できない個々の生身の人間同士の触れ合いの大切さが押さえられている。
ふたりの幼い子供を抱えたシングルマザーのケイティとの出逢いはお互いにとって感情を清めるものになったはず。
不寛容に対する怒りの感情よりも同情と他利的な思考に充たされる方が人間として幸福であるのは言うまでもない。
わたしが最もショックを受け胸が熱くなったところは、ケイティが慈善団体の催すフードコートで、思わず缶詰を開け中身を食べはじめてしまい、我に返りその行いを恥じて動揺を隠せないでいる場面であった。すぐさまダニエルが駆け寄り彼女を慰め元気づけていたが、過酷な生活の耐え難い空腹からしてしまったことで酷く自尊心を傷つけてしまうのだ。
しかしこれが生活であり、そこに寄り添える相手のあることの大切さである。
これは何にも代えがたい。

I, Daniel Blake002

様々な面で、経済面・精神面に渡りダニエルはケイティ一家を援助するが、彼自身の力も尽きてしまう。
ケイティ一が強力な支援機関を探し出し、今度はダニエルに恩返しをしようと彼をその機関に引き合わせるも、そのトイレで心臓発作で倒れ、帰らぬ人となる。
彼の葬儀にケイティ一が「彼はお金で買えぬ物を与えてくれました」と述べ、ダニエルのポケットに入っていた紙のメモを読み上げた。

「わたしはクライアントでも顧客でもユーザーでもない。怠け者でもたかり屋でも物乞いでも泥棒でもない。国民保険番号でもなく、エラー音でもない。きちんと税金を払ってきた、それを誇りに思っている。地位の高い者には媚びないが、隣人には手を貸す。施しはいらない。わたしは、ダニエル・ブレイクだ。当たり前の権利を要求する。敬意ある態度と言うものを。わたしは一人の市民だ。それ以上でもそれ以下でもない」

鉛筆書きの履歴書であろう。
役所で何を学んできたのかと言われ撥ねつけられたものである。






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女神の見えざる手

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Miss Sloane
2016年
アメリカ、フランス

ジョン・マッデン監督
ジョナサン・ペレラ脚本


ジェシカ・チャステイン、、、エリザベス・スローン
マーク・ストロング、、、ロドルフォ・シュミット
ググ・ンバータ=ロー、、、エズメ・マヌチャリアン
アリソン・ピル、、、ジェーン・モロイ
マイケル・スタールバーグ、、、パット・コナーズ
ジェイク・レイシー、、、フォード
サム・ウォーターストン、、、ジョージ・デュポン
ジョン・リスゴー、、、スパーリング上院議員


ジェシカ・チャステインは「ゼロ・ダーク・サーティ」の主演女優であった。
今回は辣腕ロビイストを重厚に演じる。
凄まじい生き方だ。
その緻密に先を読んだ企画力と大胆な発想と行動力、更に自らを一つの駒として投企し勝利をものにするなんて誰も思いも及ばぬところだろう。そこまで周到な計画が立てられるのか、と唖然とするしかない。
やることの一つ一つは限度を超え冷酷無比に思えても全てを総合して最終的に見れば、社会の停滞や腐敗の悪循環を鮮烈に打ち破る破壊力を確かに発揮していた。それをもって正義と謂っても良いだろう。
(こういう人が実際にいるのだろうな、と思うと背筋が凍り付くが)。

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それにしても脚本が凄い。
観始めると目が離せない。
先の読めない展開には冷や冷やし通しである。
エリザベス・スローンのヒールな潔さに感情移入してしまい、彼女を応援しながら見ているもので、気が気でないのだ(笑。
基本彼女は自分の陣営においても孤独なのだから。
彼女の先の先を予測する目と独自の手法に誰も付いてこれないことからも。
これは飛び抜けた能力によるというより、唯一無比の個性によるものと謂えるか。
やることが尋常ではない。
ここまで稠密でスリリングなポリティカル・サスペンスは、観たことがない。
これ程超脱したヒロインも見たことがない。

内容は、銃規制法案を巡る、ロビイスト同志の闘いでもあるが、実質独りで立ち向かうヒロインの壮絶な人生の物語だ。
常に人の裏をかき出し抜き欺き、情報を操作し、ターゲットを操り誘導し、自分(たち)の政治的思惑を成功に導こうとする過酷と謂えばこれほど過酷な仕事もあるまい。
だが、彼女の場合、クライアント~大物のお得意様に依頼されれば、どんな仕事でも引き受けるというものではなく、確固たる選択基準があり、自分の意志にそぐわない仕事は引き受けない。
自分が真に正しいと信じた仕事のみを、手段を択ばずやり遂げ勝利を手にすることが、彼女の歓びであり目的なのだ。

Miss Sloane003


ジェシカ・チャステインがこれ程の女優であることはゼロ・ダーク・サーティの時は気づかなかった。
非常に役柄に説得力を感じた。
余りに凛々しく孤独すぎるが実際にいてもおかしくないリアリティを覚える。
稀に見る作品。



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ボディ・ハント

House at the End of the Street001

House at the End of the Street
2012年
アメリカ

マーク・トンデライ監督
デヴィッド・ルーカ脚本
ジョナサン・モストウ原案

ジェニファー・ローレンス、、、エリッサ・キャシディ(17歳女子高生、バンドで音楽活動)
マックス・シエリオット、、、ライアン・ジェイコブソン(隣家に住む青年)
エリザベス・シュー、、、サラ・キャシディ(エリッサの母、医師)
ギル・ベローズ、、、ビル・ウィーヴァー(警察官、相談相手)
エヴァ・リンク、、、キャリー・アン(ライアンの妹)

サラとエリッサの母娘が森の端の片田舎の家に引っ越してくる。
すぐ隣の家が3年前に父母を障害のある娘が殺すという悲惨な事件があった家だった。
そのせいで、地価は低落していて、家もお手頃な値段で借りることが出来た。
問題の家がすぐ隣であることに母は胸騒ぎを感じる。


「僕はキャリーじゃないよ」
「あなたはキャリーよ」と母の怒りに触れ殴られる。
ライアンは幼い頃、ブランコ事故で妹のキャリー・アンを喪ったことで、両親に妹の替わりとして育てられる。
(ちょうどダリが亡くなった兄の身代わりとして育てられたように)。
彼はアイデンティティを認められず、常態化した虐待の中を生きて来た。
思春期となり、力の均衡がズレ、彼は両親を殺す。
この時、彼は誰として殺したのか?キャリー・アンとして?新生ライアン・ジェイコブソンとして?
キャリー・アン=ライアン・ジェイコブソンとして殺したのか。

表向きは、事故で頭を打った障害で暴力衝動~殺意をもつキャリーが両親を殺害しそのまま行方をくらましたこととなっている。
つまりライアン・ジェイコブソン(という人物)は、惨事に逢った家族の生き残りの一人に過ぎない。
犯人の兄である。
当時、彼は叔母の家に預けられていたという(そういうことになっている)。

足枷は確かになくなった。
この時点から彼は自分自身として生きることを始めようとしたのか。
だが、直ぐにそれが可能とはならなかった。
彼は、自分のアイデンティティを成立させるために、キャリー・アンを必要とした。
なくてもやり直すことは可能であったかも知れぬが、彼には必須要素であったようだ。

どのようにして彼はキャリー・アンを調達していたのだろうか?
こんな片田舎で。
美女が一人でも失踪すれば、直ぐに街中大騒ぎになろうが。
しかもライアンは買い物すら出ることを控えるほどの引き籠りに近い生活を送っている。

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こうした猟奇ホラーには必須の地下室がここでもしっかり機能を果たす。
ここに犯人の深い闇の快楽と原罪の秘密が詰まっている。大変な情報量だ。これは誰もが怖さ見たさで入ってみたくはなる。
お化け屋敷よりずっと怖い。
向こうの人(欧米人)は、訪ねた家に人がいないときに、平気で家探しをするというところもこうした映画では必ず見られる彼らの習性のようだ。そして必ず何かを見つけ出し自ら危険に陥る。ある意味、自業自得だ。
妙に話が分かるお節介(親切)な警官が深入りして、絶体絶命の主人公にあと一歩のところであっさり殺されるところも、定石通り。

勿論それだけではない。
ライアン・ジェイコブソンが如何にもその地の住人に不当な差別を受け、謂われなき悪意を向けられているかが強調され、そのなかで、独り静かに誠実に生きているさまをこちらにそして主人公エリッサに示す。当然、それに対する同情を呼ぶ。
更にこちらには彼が秘密裏に、暴れて外に飛び出す妹を匿って養い面倒を必死で看ている様が窺える。
だが、地域で一番健気で良いヒトこそが、ホラー製造鬼なのだ、という既視感。

と謂うより、少し捻くれた感じで観てゆくと役者が幾ら上手くても、中盤くらいで薄々分かって来る。
ここでは、包丁を持って屋敷を脱出したキャリー・アンを止めようとして、首を折って死なせてしまい、何てことをしてしまったのかと悔いた後あたりから完全にこれは黒だと分かってしまう(その後、キャリーのスペアを用意するところでやっぱりねと何なんだ、である(爆)。
主人公のエリッサに疑いが過るのはもう少し先であるが、それまで贔屓をして必死に庇っていた人間が殺人犯であることに気づきショックを受ける。
そして彼が殺意をむき出しにして襲い掛かる、主人公に迫りくる最大の危機。
そこへ、もっとも(本当に)彼女を大切に思う、来るべき人が飛び込んでくる。
すんでのところで、彼女を救う。
必ず事件の流れに親子のドラマ(不和~葛藤~和解)を絡めるところも忘れてはならない。

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これぞ、ホラーの鉄板パタンなのであろう(笑。
もはや様式美の世界かも知れない(TVの水戸黄門みたいな)。
素直に観れば、上手にこちらのミスリードを誘う演出と脚本で、充分に愉しめるものだが。
ジェニファー・ローレンスのファンには、観て損はない内容と謂える。

最後、治療施設に収容されたらしいライアンであるが、彼は自分のアイデンティティが生み出せるのだろうか。






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隔離

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Solitary
2009年
アメリカ

グレッグ・デロチー監督・製作
ジャスティン・ヘイス脚本・原案

アンバー・イエガー、、、サラ
アンドリュー・ジョンソン、、、レズニック(医師)
キーロン・エリオット、、、マーク(夫)
クリスティン・サリヴァン、、、ジーナ(姉)
B・アンソニー・コーエン、、、刑事
ダルトン・リーブ、、、刑事


とても緊張感ある映画であった(字幕が変だったが)。
終盤まで、サラが幻想の内にいるだけなのか、彼女の相続する遺産を巡って周囲の者が陰謀を企んでいるのか、判然としないままに物語は深みに嵌って行く。
広場恐怖症のサラは2日前に夫マークが失踪してしまい、家を出ることが出来ないまま、手を尽くして夫の安否を探ろうとする。
だが家の周囲と室内で昼夜を問わず不審な動きや物音がする。
不穏な気配に悩まされながら夫や会社に電話をし、警察にも捜索願を出すが、一向に進展しない。
夫の幻が克明に見えたりもする。そして赤ん坊の泣き声なども聴こえた(姿を消した夫は子供を欲しがっていたが、サラはまだその要求は飲めずにいた)。
ほんの僅かでも彼女は普通に外には出られない。少しでも出たら、パニック障害で呼吸を酷く乱して家に戻らざるを得ない。

姉と高名な精神科医が彼女のケアと治療に家まで訪れる。
何度も彼らの訪問が繰り返されるうちに、サラの苛立ちは増してゆき、彼らに対する疑念が沸き上がって来た。
幻や物音だけでなく悪夢も見るようになる。
そしてジーナやレズニックに対する敵意すら湧き上がってくるのだが、ここへ来てサラ自身にも自己解体の兆しが訪れる。

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徐々に飛んでもない外傷経験から精神崩壊を免れるために彼女の意識がしいた防衛機制が解かれてゆく。
そしてずっと開けることを拒んでいた部屋をサラが決心して開けたことで、6か月前の自分の誕生祝いの日に自動車事故に遭い、夫が亡くなっていたことをようやく思い出す。
事態を知った彼女は姉に謝るが、それだけではまだ不完全であった。
自分自身についての認識が欠けたままであった。

それは無理もない。
実は彼女も無事ではなく、その事故で意識不明の昏睡状態にあったのだ。
意識がないのに夫の死をどこで悟ったのか。
それとも意識の離脱があったのだろうか。

再びパニックになり、レズニックと口論となり、彼の存在を消したいと願う。
そしてレズニックを撃ち殺した後で彼のノートパソコンを開き、全てを悟る。
潜在意識下にあって、ノートパソコンから事態を客観視するというのも、如何にわれわれの(無)意識がテクノロジーを前提にしているかが良く分かるところだ。
サラは病院のベッドで意識のないまま生命維持装置で辛うじて生きており、レズニックとジーナが懸命に彼女の意識にアクセスを試みているところが俯瞰されたのだ。
そう、幽体離脱した魂は上方から自分とそれを取り巻く人々を俯瞰するという。その角度からのパソコン映像だ。

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つまり、姉の願い~目的とは、昏睡状態の妹自身にこれから先の判断を委ねたいという切なるものなのだ。
わたしの先ごろ亡くなった叔母も7年間に渡り生命維持装置で「生きていた」のだが、こんな激しく葛藤する夢の中を生きていたのだろうか、、、。
世界の破れ目を日々感じない為、何の疑問もなく生活を営んでいるが、もしそれが多少なりとも思い当たるようであれば、今いる世界~自分を疑った方が良いかもしれない。
精神科医の遺体はキレイに消えていた。
もはやすべてが明らかであった。
これまでのサラに起きた混乱は、全て夫との関係における葛藤(主に子供の件)やサラ自身の抱える広場恐怖症なども含む実存的不安が成せる現象に相違なかった。
それが明白になったところで、彼女はこころからレズニック(の治療)にお礼を述べる。

そしてサラが開いた部屋に見た光景は、マークが以前から欲しがっていた赤ん坊を彼があやす姿であった。
その可愛らしい赤ん坊はサラによく似ており、目元は夫にそっくりであった。
最愛の子供を抱き、二人でミルクを作って与える。

外にも何の障害もなく安らかに出てゆき、陽の光を全身に浴び彼女は笑顔で全てを受け容れた。



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デッド・フレンド・リクエスト

Friend Request001

Friend Request
2016年
ドイツ

サイモン・ヴァーホーヴェン監督・脚本

アリシア・デブナム・ケアリー、、、ローラ・ウッドソン(心理学科の女子大生)
ウィリアム・モーズリー、、、タイラー・マコーミック(ローラの彼氏、研修医)
コナー・パオロ、、、コービー(ローラの元カレ、プログラマー)
ブリット・モーガン、、、オリビア(ローラの親友)
ブルック・マーカム、、、イザベル(ローラの親友)
リーゼル・アーラース、、、マリーナ・ミルズ【マリーナ・ネデファー】(黒魔術を操る女学生)
スーザン・ダンフォード、、、キャロライン(ローラの母)
ショーン・マークウェット、、、ガス(ローラの親友、イザベルの彼氏)


Jホラーのテイストであった。
これは怨念モノであり、情念モノとも謂える。
根拠もなく手あたり次第、次々に人々を最後まで殺し続ける西洋ホラーとは一線を画する。

貞子もそうだが、この時代デジタルソースに乗って、ウェブ上から波状攻撃をスピーディーに仕掛けてゆくのがトレンドだ。
黒魔術の使い手マリーナ・ネデファーも貞子と同レベルのスキルとパワーを有する。
パソコンの黒いパネルがそのまま黒魔術の黒鏡と等価の役割を果たしているようであった。

Friend Request002

マリーナ・ネデファーという突出した存在が物語を支配する。
全身火傷の瀕死の母から生まれて施設に引取られ、虐めのターゲットにされながら壮絶な幼少年期を経て孤独のまま大学にまで至る。
SNSに自分の制作した動画をアップし続けているが、友人は0であった。
明らかに黒魔術の不気味な面白い動画なので、イイねやフォローや友達申請が来てもおかしくないとは思うが、0なのだ。
(SNSにおけるフレンドの濃密さは、そのSNSの属性により大きく違う。フェイスブックの場合、実名登録で知っている人が基本友達になることが多い為、濃い関係ではある)。

一方、同じ大学のローラ・ウッドソンは誰もが憧れるアイドル的存在で、SNS上の友達数も大変な数である。
しかも研修医の彼氏もいて、親友にも恵まれ、何一つ不自由のない満たされた生活を送っていた。
この人気者の彼女に、全く孤独でいつも一人のマリーナが友達申請をして来る。
ローラはサイトの動画の出来映えを見て才能に惹かれ、申請を承諾する。

Friend Request003

はじめて出来た友達に喜びを隠しきれないマリーナであったが、ローラは実生活で特に親しく関わるつもりはなかった。
この辺の温度差は通常不可避であろう。
マリーナは、ローラとの距離を急速に詰めて来て、誕生パーティーにも呼ばれていないにも関わらず主席しようとする。
この件でローラは他者との距離感覚に乏しいマリーナとの友達を破棄する。
それを受けて、マリーナは儀式として黒鏡の前で首をくくって火で焼かれる「自殺」をして(生まれ変わり)ローラに呪いをかける。

まずはマリーナはローラのアカウントを乗っ取り、自分の自殺場面をウェブ上に拡散する。
しかし同時に自分のアイデンティティを証明する現実の全てのデーターは、抹消してしまった為、実際に彼女が実在したかどうかを訝る者も出てくる。元々影の薄い存在であったこともあり。
警察は、ローラのSNS(IPアドレス)からの発信であった為、彼女を疑うが、捜査は一向に進展しない。

メッセージ~動画のアップは、マリーナ死後も続き、ローラにも孤独を味合わせるという趣旨のメッセージが届いて来る。
その通りに実現して行く。
彼女の周りの親友たちが不審な死を遂げてゆくのだ。
ローラは、恐れ戦き焦燥しながらも何とか手を打とうとするがどうにもならない。
然もその殺害場面を撮った動画が、ローラのSNSを通して配信~拡散されてゆくのだ。
彼女は、一人また一人と親友を失い、自分の信用も失ってゆく。
文字通り、友達も激減し、支えをなくして行く。

そんななかで、ネットワーク上の問題やオカルト世界に関する調査でローラを助けて尽力してくれるのがコービーであり、精神的支えになるのがタイラーであった。
まず、彼らはSNSを解約しようとするが、ソースコードが生きて自立している為、コマンド類は全て撥ねつけられる。
しかもローラが解消したはずの友達にマリーナが戻っていた。
更に、親友が殺される直前に誰もがマリーナを友達承認していたのだ。
ローラを取り巻くこのSNSネットワークは完全にマリーナの手中にあることが分かる。

追い詰められてゆくローラたち。
そこでもう味方はコービーとタイラーだけかというところまで来るが、何とコービーはローラの腹に突然ナイフを突き立ててくる。
ずっとこの事件に関わって来た彼はマリーナがローラを独りにすることが目的であることを認識するに至った。
であれば当然、自分は最大の協力者であり友であることから殺されないはずはない。
しかし、ローラを殺せば、もう殺戮の意味も失せ自分は助かることから、彼女の存在を消そうという発想を得たのだ。
だが深手では無かった為、彼女はどうにか逃げ延びる。
タイラーはコービーに殺害される。

終盤、マリーナの呪いは遂げられ、ローラはあたかもマリーナになった(生まれ還った)かのような姿となり、大学の食堂にかつてのマリーナのように座っていた。
(マリーナはローラを欲することで、ついに一心同体になってしまったのか)。
ノートパソコンに映るSNS画面には、友達0が表示されていた。


ネットをないがしろにしてホラーはもう描けないであろうことは分かる。






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サクラメント 死の楽園

The Sacrament001

The Sacrament
2013年
アメリカ

タイ・ウェスト監督・脚本・製作総指揮
エリック・ロビンス撮影


AJ・ボーウェン、、、サム・ターナー(VICE社特派員)
ジョー・スワンバーグ、、、ジェイク・ウィリアムズ(VICE社カメラマン)
ケンタッカー・オードリー、、、パトリック・カーター(妹キャロラインを連れ戻しに来た兄)
エイミー・サイメッツ、、、キャロライン・カーター(パトリックの妹、教団信者)
ジーン・ジョーンズ、、、ファーザー(チャールズAリード、教祖)
ケイト・リン・シャイル、、、サラ・ホワイト(アーティスト、教団信者)


この映画は1978年「人民寺院の集団自殺事件」*(ガイアナ)をモチーフとしたモキュメンタリー映画である。
*918人が殺害・自殺によって命を落とした惨劇である。
POVによる臨場感は半端ではなく、実際のカルト教団の記録映画を見る生々しさであった。
突撃潜入取材の出たとこ勝負の命知らずの記者がやはり潜入によって(強固に見えて辛うじて成り立っている)共同体内部に亀裂を入れてしまう。

洗脳とはよく言われるが、ここでは麻薬もかなり使用されていたようだ。
共同体は教祖に心酔している者と覚めているが脅されて言いなりになっている者とに分かれていたが、外部から人が入って来たことにより、我慢していたなんちゃって信者がザワツキ始めた。
どんなに上辺を取り繕い貼り付けたような笑顔で暮らしていても、歪のある共同体はちょっとした外部~他者の侵食で瓦解してゆく。

The Sacrament002

思想統制と謂っても生まれた時からそこに住んでいれば、北朝鮮のように他の情報がないことで落ち着くとは思うが、これまで下界で過ごしてきてここに移り住めば不可避的に相対的な見方をするはず。
枠~システムを維持する為の抑圧装置があれば、当然反発が生まれる。
それに対する厳しい罰則があれば猶更のこと。

しかしここを出たらまた過酷な環境で惨めに耐え忍ばなければならない。
この理想郷の内部を外に曝すとアメリカ軍隊~外部の悪の象徴が、大挙してきて皆殺しにされるとか、殊更に外部を恐怖の対象として結束を固めようとする。荒唐無稽な脅しが有効性を持つこと自体、ここの成員の精神状態がどういう状況にあるのか。
日々冷静な判断の出来ない状態に追い詰められている可能性は高い。
「エデン」と名付けられたこの共同体はかなりキツイ環境となっていることが分かる。
教祖に心酔しているかに想われる人も薬漬けである可能性は高い。
それから祭り、音楽・ダンスを上手く利用する。
だが、それらに絡めとられない人はそこからの脱出のタイミングを計って堪えている。

The Sacrament003

であるから、外部からやって来て、直ぐに出てゆく人に取りすがろうとする。
内部がバラバラになって、どうしても特派員とヘリに乗って帰るという人が出てきてしまい、教祖はもう歯止めが効かぬことを悟り、集団自殺を強要する。
誰もが逆らえないなか、異を唱える者も出て来る。
自警団みたいなメンバーはマシンガンを携えていた。
素直に天国に行くことを承諾した者以外は、毒薬を強制的に飲まされたり、それを拒み逃げて行くところで次々に銃殺されてゆく。
パトリックは妹に毒を注射されて絶命し、妹は石油をかぶって焼身自殺する。
共同体の敷地に銃声が鳴り響く。
修羅場だ。死体がゴロゴロと横たわる。

The Sacrament004

恐らく、実際の人民寺院の集団自殺はもっと凄惨であったことが推察できる。
人数もこの映画より多いが、殺戮がもっと陰惨であったようだ。
下院議員と代表団、ジャーナリストも射殺されている。


この映画では結局、生き残ったのは、サムとジェイクの二人であった。
共同体の信頼性はそこからの離脱も自由であることが保証されているところにあると思う。
誰もが無意識的にも何らかの共同体~体制に属している。
それを意識化し対象化して自ら選び直す必要はあるはず。


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ヴァージニア

Twixt003.jpg

Twixt
2011年
アメリカ

フランシス・フォード・コッポラ監督・脚本・製作


トム・ウェイツ、、、ナレーター
ヴァル・キルマー、、、ホール・ボルティモア(オカルト作家)
ブルース・ダーン、、、ボビー・ラグレインジ(保安官)
エル・ファニング、、、V( ホールの夢に現れた美少女)
ベン・チャップリン、、、エドガー・アラン・ポー
ジョアンヌ・ウォーリー、、、デニース(ホールの妻)
アンソニー・フスコ、、、アラン・フロイド(牧師)
オールデン・エアエンライク、、、フラミンゴ(湖の対岸の若者グループのリーダー)
ドン・ノヴェロ、、、メルヴィン( 時計台の管理人)


コッポラ監督の幻想的な傑作に「コッポラの胡蝶の夢」があるが、それに比べれば、とてもこじんまりとした小品であった。
観ている最中に3回ほど眠ってしまった。
この作品と夢繋がりで観た気になってはいる。
ちょっと怪しいが。

何だか現実は、特にどうということもない、冴えない流れである。
とっても地味。
だが、そこに夢が侵蝕してくる。
Vという謎の美少女がボルティモアに助けを求めてくる。
ゴシックな風情であるが、ちょっと狙いすぎの演出過多で美しさに乏しい。
(折角のエル・ファニングが死んでいる。実際死んでいるのだが)。

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ほとんど夢の中の世界でホール・ボルティモアはエドガー・アラン・ポーに導かれ、二人で事件の真相を確認してゆく。
つまり次作のネタがしっかりモノに出来るのだ。
しかし何でも夢の中で解決では安易すぎないか?
エドガー・アラン・ポーが出てきてしまって、何でも聞けてしまうではないか。
Vというか、エル・ファニングまで出てくれば、夢に浸っている方が良いと思いきや、、、
大概、誰の夢でもそうだろうが、とてもダイナミックでスリリングな展開で、Vが吸血鬼の正体を現し噛みつかれるなど散々な目には逢う。

だが、ゴシックロマンとかいうほどの絵ではない。
場所がアメリカのどこだかの片田舎である。
ゴシックロマンであればヨーロッパの古いお城とかでないと雰囲気は出し難い。
それに代わる何かがあればよいが、どうも感じられない。
しかしエル・ファニングのあの様相は、それを狙っているとしか思えないのだが。

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夢の世界の出来事は、起きたらスッと消えてしまう危ういものだ、、、。
余程の夢でなければ白昼のもとに描き起こせない。
この夢が相当にビビットな出来事であることは分かるが。
彼はそれをしっかり書き留めて、新作として仕上げてしまう。
編集者にも好評で、売り上げもまずまずという、何ともどうでもよい結末であった。


ベン・チャップリン演じるエドガー・アラン・ポーがまるで本人が出てきたように肖像画そっくりで凛々しかった。
それに比べ、であるがホール・ボルティモアは終始、締まらなかった(笑。
エル・ファニングの出演した映画の中では、もっとも地味で彼女の魅力が活かされてはいなかった。
噺の上でも、自分の自堕落さが元で最愛の娘を事故死に導いてしまった自責の念から現れる娘のイメージ~霊と杭を打たれて死んだVの姿が重層してこんがらがっている。
夢が活性することで、深層の意識も無軌道に浮上した感じであろうか、、、。
単に混乱して整理がつかないようにも思える。
湖の対岸の若者たちの存在は、実際にいたようだが、何を意味しているのか今の時点ではピンとこない。
イメージの中ではそのリーダーのフラミンゴがVを殺人神父から救い、吸血鬼に変えたようだが、、、。
夢か現か分からぬ世界を描くことは、面白いが、物語の構造まで何やらあやふやで捉えどころがないものを見た印象であった。

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こうしたタイプの映画であれば、ギレルモ・デル・トロ監督が撮ったら凄いものになりそう。




暗い場面が多く、Blu-rayが鑑賞には適している。




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血のお茶と赤い鎖

Blood Tea and Red String001

Blood Tea and Red String
2006
アメリカ

クリスチャン・セガヴスケ監督・脚本

Christiane Cegavske001

監督自ら女性ストップモーションアニメーターである。
音楽・効果音も面白い。
セリフはない。
ヤン・シュヴァンクマイエルの弟子が作ったような感じの作品(笑。
アメリカ映画ということに驚く。
(監督もアメリカ生まれではある)。

Blood Tea and Red String004

人面鳥、人面蜘蛛、人面向日葵、、、のキャラクターが独自か。
そこに貴族階級を象徴する白鼠と嘴を持つ茶色い動物がいる。
そして白い人形、、、これを皆で奪い合う。
更に荷を引く亀。

Blood Tea and Red String003

人形特有の動きのぎこちなさが原初への郷愁を誘う。
それによる劇~物語を演じさせることで、ヒトへ逆照射する本源的な何かがある。
夢の文脈で騙られる物語。


Blood Tea and Red String002

~血と水は身体と地の底を巡り巡る~
テーマのようだ。
水や血を介して成される様々な行為が行われ、繰り返され、流転してゆく。
それが人形世界で夢の形で見せられる。

ビニルの水からそれが受け取れれば、この世界を堪能できると思う。






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モンキービジネス

Monkey Busines

Monkey Busines
1952年
アメリカ

ハワード・ホークス監督

ハリー・シーガル原案

ケーリー・グラント、、、バーナビー・フルトン博士
ジンジャー・ロジャース、、、エドウィナ・フルトン(妻)
チャールズ・コバーン、、、オリヴァー・オクスレイ社長
マリリン・モンロー、、、ロイス・ローレル(社長秘書)
ヒュー・マーロウ、、、ハンク・エントウィッスル(エドウィナの幼馴染)


ケーリー・グラントやジンジャー・ロジャースがよくこれ程弾けた演技をしたものだと驚く。
終盤にはチャールズ・コバーンも負けじと弾ける。
皆、青年、子供に成り切って燥ぐ。
この頑張る様をどう捉えるかで楽しみ方が決まる映画だ。
これを単に馬鹿らしいと思ったら、全く観れたものではなかろう。
素直に笑って観られるかどうか、、、。
名優がこんなに馬鹿をやっている。頑張っているなあと眺めても楽しいではないか。

Monkey Busines001

そして、ここに出てくる初期のマリリン・モンローの素敵なこと。
まだセクシー路線ではなく、ちょっと頼りないブロンド美人役の瑞々しさが良い。
やはりモンローは違う。
栴檀は双葉より芳し、である。

Monkey Busines004

バーナビー・フルトン博士は製薬会社に勤め、若返りの薬の開発に心血を注いでいた。
そして吸収率さえ上がれば効果が期待できるところまで漕ぎつくが。
まだまだ、完成まで時間を要すると思い取り敢えずの効果を試験するため自分で飲んでみると、いきなり青年時代に気持ちは飛んでしまった。つまり気持ちだけは若くなってしまったのだ。
ただしこの薬を飲んだ時、ウォーターサーバーの水も後から飲んでいる。
彼は大学生の格好をしてオープンカーを買い込み、社長秘書ロイスを乗せて遊び回る。ダイビングをプールでしたり、ローラースケートをしたり、車で無鉄砲に飛ばしまくり、ロイスのキスマークまでつけて帰宅する。
疲れて眠ると元に戻っている。

Monkey Busines002

妻のエドウィナが余りにも天才に対する理解が深く、寛容でよく出来た人だと感心していたが、彼女も若返ると手を付けられないほど我儘娘になる。
お互いに、若返りの厳しさを痛感し、よく乗り越えてきたものだと感慨に浸り、もう薬の生産はやめようとする。
(少青年期の無軌道さ、思慮のない行動ばかりを大袈裟に抽出して単純化を図っている)。

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結局2年を費やして研究開発した薬は苦いだけで実際の効き目はなく、その後飲んだ実験用のサルが見よう見真似で薬を調合した液体をウォーターサーバーに混ぜてしまったものこそが若返る効力を発揮していた、という荒唐無稽な噺である。
つまり薬を飲んで苦い為、後から飲んだ水が実は若返りに効く薬となっていた。
あり得ない馬鹿げた話だがそれを受け容れて楽しむ映画だ。
そのサルが薬を調合する仕草が実に上手い。
このシーンが大きな見所でもある。
彼が他の研究員と燥ぎ回る演技も誰よりも様になっていた。
もしかしたら、助演男優賞並みの演技であったのでは、、、。
映画に出た動物の演技では歴代1,2位を争うものではないか。

Monkey Busines006

ともかく、若返り薬を”B4”と社長が命名したり、色々とオフザケ満載の映画であった。
文字通り”モンキービジネス”インチキビジネスで如何に成功するかの社長にとっては賭けであろう。
サルを締め上げて製法を聞き出していたようだが、、、。
だが実際、これは際どい麻薬に他ならない。
そして、このような麻薬に頼ると、これまでに築いた家庭や友情など全てを壊しかねないという、最近の日本の実情にもリンクしてくる。
(トリップ時の覚醒感は捨て難いものであろうが、その依存性こそが命取りとなる)。
最後は二人の愛が一番の薬だ、みたいなところに落ち着くが、確かにそれしかないと思う。

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何と言ってもマリリン・モンローとサルの演技のポイントが高い。



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ブエノスアイレス恋愛事情

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Medianeras
2011年
アルゼンチン、スペイン、ドイツ

グスターボ・タレット監督・脚本

ハビエル・ドロラス、、、マルティン (ウェブデザイナー)
ピラール・ロペス・デ・アジャラ、、、マリアーナ (建築家、ショーウインドーのデザイナー)
イネス・エフロン、、、アナ
アドリアン・ナヴァーロ、、、ルーカス
ラファエル・フェロ、、、ラファ
カーラ・ピーターソン、、、マルセラ


雰囲気はとても良い。この空気感が心地よい。
ブエノスアイレスという都市の光景を初めて見た。
猥雑な味のある建造物の群れ。全く自分勝手に周りなど何も考慮せず建てられたビル。これがたっぷりと堪能できる。
ビルの外壁には隙あらばという感じで逞しく雑草が伸びていた。
その無計画で無秩序で無節操な荒涼とした都会で刹那的な生活を長年に渡り続けて来て心身ともに疲弊した男女の噺。
(彼らは不健康な生活に馴染みやたらと薬を呑んで、健康に対して神経質である)。
何故かニンマリしてしまう。
この街にもこの(これらの)男女にも、、、。
とても身近に感じるのだ。
別にマルティン が鉄腕アトムのフィギュアを大切そうに持っているからだけではない。
アサヒスーパードライもあったか、、、日本物があちこちで目についた。この辺からも混然とした雰囲気が受け取れる。

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マリアーナの方は、「ウォーリーを探せ」の本で街中にいるウォーリーがどうしても見つからないことに拘っている。
(そこに自分が運命の人になかなか出会えないことを重ね合わせているようだ)。
本業の仕事が無くショーウインドーのデザイナーをバイトでやっている、この独特な内とも外ともつかぬ狭間の空間というのも面白いものだ。多少は見られるが仕事である。気易く観察も出来て良いではないか。外に出るのに抵抗のある人のモラトリアム空間として適している。
この点では、マルティンが精神科医に勧められた、外に出易くなるにはカメラというアイテムが最適というのと同等であろう。
彼女がプールでちょいと出逢ったドクターに失恋し落ち込んでいると隣の部屋の住人がすかさず、ショパン「別れの曲」(エチュード10の3 ホ長調)を弾き始めるというのも何なのか、、、。これもシンクロニシティか。それにしても普通のアパートで防音装置無しのピアノは流石にキツイ。笑ってしまったが。

彼らの感じるこの閉塞感と焦燥感は身体的に共有できるものだ。
とてもわたし(われわれ)と近い環境~境遇にあるところからして。
(ずっとパソコンの前に座ったっきりとか、、、何でもウェブ上で済ますところなど同じではないか)。
そんななか、明らかに主演と分かる二人がなかなか出逢えない。
ということは最後にどのように劇的な邂逅を用意しているかであるが。
この二人やることがシンクロしていて、人となりが似ていることが分かる。
(ウディ・アレンの「マンハッタン」を同時にTVで観ながら同じように涙しているところは、笑えた。結構笑えるところが多い)。
しかも近くに住んでいてすれ違いながら、回り道をしている、、、。
(この辺はハリウッド映画でも定石だが)。
これはよしとして、、、

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彼らの出逢うところが余りに突飛なのだ。
ウォーリーを探せのウォーリーの服を着て外に出る人っているだろうか。
普段マルティンはセンスの良い格好をしているのに、、、。
それより光取りの為に開けた窓からお互いの顔を確かめ合ったのだから、そこから徐々に近づくとか、パソコンのチャットで出逢ったところから接近する方が自然で説得力はあると思う。
これなの?と正直思ったものだ。

そしてもう仲良しになっていることがユーチューブにアップされていて、デュエットで口パク唄真似でノリノリであったが、これもまたそんなに長続きしそうもないように思える。
そんなブエノスアイレスという都市の光景である。
やはりこの建造物の群れが主人公であった。
ブエノスアイレスである。





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