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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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もらとりあむタマ子

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2013

山下敦弘 監督
向井康介 脚本

前田敦子、、、坂井タマ子(ニート)
康すおん、、、坂井善次(父、スポーツ用品店経営)
伊東清矢、、、仁(中学生)
富田靖子、、、曜子(アクセサリー教室の先生)
鈴木慶一、、、坂井啓介
中村久美、、、坂井よし子


東京の大學を出て、実家の甲府に戻り、モラトリアム生活をダラダラ送る23歳女子がヒロイン。
脱力の極致を生きるが、世相に対し文句を言い、父の忠告とかには直ぐに切れる。
だが共依存の体質が見て取れ、四季を通して描かれるが、円環的に閉じている。どこかで踏ん切りをつける必要あり。
そんな感じで観る者をズルズル引っ張って行く映画。

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まあ、こんなに食べるシーンの多い映画は初めて観たかも。
ひたすら普通の食事を食べてる。それでこの父娘の家庭を実感させるとても上手い演出~運び。
この流れで、生活がいつまでも続いて行く(危うさを覚える)。

TVを観ながら「ダメだな日本は」とか言って、一日中、喰っちゃ寝て、漫画読んでゲームをしてはゴロゴロしている。
服装もそれでも年頃の女子かと言いたくなるようなもっさっとしたものばかり。
就活もしない。家事もやらない。食事作りは父が好きでやってるようだが、洗濯した下着まで父に干してもらっている。
一度、あまりの為体に父が切れて「いつ就活するんだ」と怒鳴ると、「その時が来たら動く。今はその時ではない」ときっぱり宣言する(笑。
なかなかのねーちゃんだわ(爆。

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その後、特に何があるでもなく、写真館の中学生との微妙な絡みがやたらと擽ったい。
一回だけ、父に秘密で何かのオーディション用の写真を写真館の主ではなく中学生の息子に撮らせる。秘密だぞと睨んで。
それくらいか、主体的に動いてみせたのは。
このふたりとのやりとりが殿しいのと、父との関りからお互いに離れたくないのだなというのも分かり趣深い。
わたしも完全に娘たちと別に暮らすとなると淋しいことだろう。
そして父の再婚相手候補のアクセサリー教室の先生に父の悪口を喋るところはホントにリアルで面白い。
この映画、ぼそっとした喋りが絶妙。

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そういった雰囲気が心地よくて見入ってしまう映画である。
前田敦子をはじめキャストが皆、嵌っている。
特にタマ子と中学生の関係は美味しくて笑えるのだ。
彼には途中までいつも共に行動する彼女がおり、タマ子に呼ばれて頼まれた仕事を請け負う際、彼は彼女に対し「あの人友達いないから」と耳打ちしている。これには爆笑した(中学生からも上から目線で見られている)。

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季節ごとに自堕落生活のパタンが描かれているのも楽しい。
理容室でヘアのセットを頼んだが自分が思い描いた雑誌のモデルのヘアスタイルとかけ離れていて、更に無気力感アップのところなど、細かい見どころが沢山。
実際、AKBの頃は、物凄いハードスケジュールを熟すアクティブな生活をずっと続けて来た彼女であろう。
自分が生きてこなかった全く違う生活リズムを演じるのも新鮮であったのでは。ファッションからしても(爆。
思い切りグウタラ人生をこれでもかという程やってみて彼女も楽しかったのではなかろうか。
特に凄いと思ったのは、最後の中学生とのスティックアイスを食べながらの会話である。
この喋り方は、アイドルから限りなく遠い、もうホントのグウタラ喋りでありここは何度聞いても楽しい。
そして中学生から彼女との関係が自然消滅したと聞いて、久しぶりに「自然消滅」聞いた、というのも笑った。
丁度、前の晩に父から「家を出なさい」と言われ、彼女もこれには全く口答えせず「合格」と父に返す。
中学生からどこ行くのと聞かれ夏が終わったらどっか行くでしょ、と答える。適当。

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何が起こるでもなく、急に行動を起こすでもなく、突然覚醒するでもない、重い現実が軽妙に描かれていて好感を持った。
実際、わたしも一生、モラトリアムで終わる気がしている。
そう、何をやってもモラトリアムに過ぎない。
そんなものだと思う。

観て損はない面白い映画であった。
と謂うよりお勧め映画である(最近の邦画では珍しく(笑。




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ダークレイン

THE SIMILARS001

LOS PARECIDOS/THE SIMILARS
2015
メキシコ

イサーク・エスバン 監督・脚本


グスタフォ・サンチェス・パッラ
カサンドラ・シアンゲロッティ
フェルナンド・ベセリル
ウンベルト・ブスト
カルメン・ベアト


登場人物がバスステーションに閉じ込められているのだが、わたしとしては大きな駅という感じの空間だった。
どうでもよいが、人が10人くらい楽々過ごせる閉鎖空間である。
鍵がかかっていて外には出れないのだ。
バスはいつまでも来ない。雨の為に来れないらしい。
だが、タクシーに乗ってここにやって来た人はいる。
しかし、一旦入るとここを出ることが誰も出来ない。
外は大変な豪雨で、ラジオも異常気象と学生運動についてずっと放送をしていた。

THE SIMILARS002

異変がそこに生じる。
そこにいる人全員が髭を生やした同じ顔になってゆくのだ。
確かにホラーだ。嫌だ。そんなの。
女性まで髭面の男の顔になってしまうのだから絶望して顔をナイフで切って死んでしまうのも無理もない。
なんなのこれ。と思いつつ観てゆくと、ラジオの放送で雨によるウイルス汚染みたいなことを言っている。
雨が通常の水ではない特殊な液体なのだと。

THE SIMILARS003

自然に広がったウイルスによる病か、政府による極秘実験によるものか、そういうテロなのか、異星人の仕業なのか。
この中にそれを仕込んだ者がいるのでは、と誰もが疑心暗鬼となり不安と恐怖と焦燥から極めてヒステリックになってゆく。
そのやり取りが過剰に神経質で衝動的で粗暴なため、何だか小煩いだけの映画にも思えて来る。

だが、どうやら母に連れられてやって来た病弱を装った少年による仕業のようなのだ。
最初病気の少年かと思える様相であったが、それは単に少年の恐ろしい正体をカモフラージュするもので、その実体は、、、
何だか分からないが、母に昔読んでもらった漫画の世界に囚われており、その世界そのものに現実を変えてしまえる能力が発現しているらしい。
よく分からないが(笑。余りに荒唐無稽。こうした現象は誰の視点から描いているかに依存する場合もあるが。
つまりその人間の病的な幻覚の世界が描写されてる場合もある。

THE SIMILARS004

その少年のお気に入りの漫画は、異星人がやって来て人から欲しいものを取り上げて帰って行く。
その欲しいものは感情であって個性であるらしい。
それを奪われた為に、人は皆同じ顔になってしまう。
それが何で普通の髭面の男の顔なのかよく分からないが(観客にとって)、その場にいる人間がそれぞれどう見ているのか~主観なんて原理的に分かり様がない。但し同じ顔になってしまっているのは、間違いないようだ。
皆が髭面の男の顔になってしまったと絶望している。
そりゃ女性にとってはショックだわ。

THE SIMILARS005

面白いのは、事務室に貼ってあるピンナップや雑誌の全ての顔が、その髭面の男にすげ代わっているのだ。
マリリンモンローも顔はそれなのだ。こちらはどういう顔で観ていれば良いのかと言いたくもなる。
ただ単に趣味の悪い悪戯にしか見えない。
ともかくグロテスクでキッチュ。
何なのこれ、状態であり真面目に緊迫した状況でありながら、ダレても来る。
このズレたコメディ要素が微妙なホラーである。

THE SIMILARS006

更にこの悪質な子供も「奴らに操られている!」とか嘯いているのだ。
奴らって誰だよ。それこそ異星人か。その正体は分からず仕舞い。
豪雨の外では狂犬が何度も吠えてはガラスの扉にぶち当たって来る。
皆が神経をやられ限界に来ている。
そこで、少年に操られ一人の男が最初からウイルスを持ち込んだと疑われていた男を撃ち殺す。
だが、死んだ男の持ち物を確認すると写真もその男の顔とは違い、彼が最初の犠牲者であったことが判明する。

写真も同じ顔であったものが元に戻っていた。
皆、同じ顔だということが忘却されると違う顔に見えて来るらしい。
さっぱり何言ってるのか分からんが。個性を失ったことに気付かないとかいう状況を言っているのか。
最後に外から飛び込んで来た車は何だったのか。人を轢いただけか。
人面犬までついでにやって来て何だったのか。

THE SIMILARS007

普通の光景になり翌日か、医学部の学生とその子供と母以外は皆死んだみたいであった。警察が学生運動のせいにしようとしていた。
その少年はまた何かを企んでいる笑みを零している、、、。


一言で謂えば、変な映画。
少年が気持ち悪かった。
それだけ。




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恋する日曜日 LOVE ON SUNDAY

LOVE ON SUNDAY001

LOVE ON SUNDAY
2006

廣木隆一 監督
いずみ吉紘 脚本
RCサクセション『君が僕を知っている』主題歌

水橋貴己、、、宮本晶(東京に転校する高校生、弓道部)
芳賀優里亜、、、西尾環(晶のクラスメイト、恋敵)
佐々木和徳、、、塚田楽(晶の先輩、弓道部)
若葉竜也、、、横森直(晶のクラスメイト、幼馴染)
石野真子、、、直の母
水橋研二、、、梶原一樹(晶の担任)
小山田サユリ、、、町田都(梶原の彼女)


水橋貴己のうんと若い時期の主演作。
栴檀は双葉より芳しで、やはり存在感が違うし凛々しい。
芳賀優里亜も二枚目ヒロイン女優の資質は充分窺える。
2人ともまだ洗練されておらず原石みたいな感じだが(笑。

LOVE ON SUNDAY002

ほぼ基本、高校生四人による劇。
宮本晶は東京に父の転勤で転校することが決まっている。
初っ端に、女の子が1階から屋上まで手を繋ぎダッシュで駆け上がるのを頼まれた晶がタイムを計る。
この時間によって、将来結ばれるか分かれるかが占えるという伝説があるのだという。
担任とその彼女も伏線として絡んでくるが。

晶は幼馴染の直のことが好きであり、直は環に好かれていると思い有頂天であり、環は楽先輩の事が好きで、楽は何としても晶と付き合いたい。
まあ、こんなことはよくあることで、相思相愛の方がレアなパタンだ。
それから幼馴染で恋愛感情を持つというのは、少ないと思うが。
これは所謂、恋人同士と謂うより大切な姉弟みたいな関係に近いものか。
(幼い頃、母が死んで葬式の時泣いていた晶の手をずっと握っていてくれたのが直であったという)。

LOVE ON SUNDAY003

晶が拘るのは、直が環に夢中になっている事であり、環は自分が好きな楽が晶に首ったけであることに嫉妬して晶が大切に思っている直をからかっていることに対してだ。晶はそれを知っている為、無邪気に騙されている直が気になって仕方ない。
直はそういう晶にきつく当たる。この直を見てインテリで弓道の県大会2位の先輩楽も気が気でない「あんな奴は君に相応しくない」と来る。環はあてつけがましく直に思わせ振りな態度を見せ続け翻弄する。

終盤、4人で夜の学校に忍び込む。仲良し4人組の探検みたいな雰囲気で行くが内情は全く違う(笑。
現在の膠着状態の打開を目指し、晶と楽が思い切った賭けに出た。
それは弓で勝った方が相手の言うことを聞くというもの。
当然、楽が勝てば晶は彼と付き合う。晶が勝てば、楽が環と付き合う(元カノなのでよりを戻すか)。

LOVE ON SUNDAY004

しかし途中で直と環を蔑ろにした賭けであることがバレて、直は憤慨して食って掛かる。
環が晶の弓を取り上げて、3本勝負の2本目で勝負は中断となるのだが、そのままやっていたら間違いなく楽の勝利となっていた。
ここで怒る直に対し楽が、「晶は君を傷つけないようにこうしたんだ」と言うが(わたしには)意味が分からない(笑。

そして晶が初めて逢った幼稚園の時から直のことが好きであった事を彼は知る。
夜の校舎で帰り際、晶と直は手を繋ぎ、下から屋上まで駆け上がってゆく。
タイムは分からない。
(昔、彼等の担任もこれを今の彼女とやっていた。彼らは実際に結ばれる)。
ここで2人は初めて真剣に胸の内を明かす。
結局、恋人と謂うより仲の良い姉弟みたいな思いであることが互いに分かる。
翌日、晶はスッキリとした表情で独り東京に向って去って行く。
誰も見送りに来る者はいない。

水橋貴己が若いうちに芸能界を引退してしまったことは、やはり残念である。
発するオーラが違う。
女優で言えば、他に刈谷友衣子もそうだ。何で若くして引退してしまったのか、どういう事情があったのか知らぬが、勿体ない。





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ねこにみかん

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2014

戸田彬弘 監督・脚本
上原三由樹 脚本

黒川芽以、、、小野田真知子(智弘の婚約者)
大東駿介、、、智弘(血の繋がりのない連れ子)
竹下かおり、、、児玉里美(由美のママ、家事全般)
東亜優、、、児玉由美(ママの娘、17歳)
高見こころ、、、笠松佳代子(さやかのカカ、スナック経営)
中村有沙、、、笠松さやか(カカの娘17歳、全寮制の学校)
辰寿広美、、、宇和成美(隆志のハハ、高校の国語教師)
清水尚弥、、、宇和隆志(ハハの子供17歳)
隆大介、、、上野山正一郎(チチ、釣具屋経営、3人の子の父)


上原三由樹 脚本第三弾ということで、これで最後とするつもり。
和歌山県有田川町が舞台。とっても田舎。

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何で「ねこにみかん」なのか、、、。確かにみかんとねこはいつも出て来る。
あの吐きそうになって藻掻いていたねこはミカンを食べてしまったものか?
とっても面白い光景であった。

恋人(内縁の妻)と正一郎がそのまま家庭を作って維持しているらしい。
微妙なバランスでかろうじて成立している特殊な家族と謂えるか。
真知子は婚約者である智弘のその実家に連れて来られて大いに当惑する。
そこでは家の仕事は各自でそれぞれ受け持っているが家に囚われず全くバラバラに自由に暮らしてもいた。

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3人の所謂妻がいるのだが、それぞれハハ、ママ、カカと呼ばれている。
ハハの子が隆志で、ママの子が由美で、カカの子がさやかであり、皆17歳の高校生だ。
ハハは料理担当の専業主婦か、ママは高校の先生、カカはスナックの人気ママ、、、ややこしい。
チチは釣具屋をやっているが、とても呑気に過ごしている感じ。
ちなみに隆志は勉強は得意だが登校拒否中である。
由美はしっかりもので剣道部に所属しており、冷静な大人の態度を崩さない。
さやかは歳相応の女子であるが、潔癖症で恋愛や大人は汚いという感覚をもっている。
この辺は環境を窺えば分かるところだ。

連れ子の智弘の母は若くして死んだ(チチに拒否されて死んだ模様)。
だから彼はこの家とは全く血の繋がりは持たない。皆からおにいちゃんと呼ばれている。
しかしこの家の関係性を認め、その中で自分も活かされてきたという。
チチはその時の反省から誰も死なせずに共に生きる形をこのように取ったようだ。
(役所にはどういう形で届けているのか?)
一見、とても異様だが、中にいればその人にとっては普通であり自然であることもあるものだが。

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外からやって来たばかりの真知子には直ちに呑み込めない。
少しずつ質問したりして理解し歩み寄ろうとはするが、、、。
噺は出来るようになるが、どうにも彼女にとって許せない事態に出くわす。
ハハは外で、カカは堂々と自宅で浮気?他の男とも恋愛関係にあるのだ。
この家族形体で貞節を守るとかいう道徳性はともかく、子どもたちに対する配慮が無さ過ぎる点においてであろう。

ここについては食って掛かるも、皆不思議に冷静なのだ。
そうしたこと全てを見込んだ上での共同生活ということらしい。
皆で受け止める。皆で帰りを待つ。それが真知子にも聞かれたこの家族を維持する秘訣だと。

確かに受け止め合っているとは謂うが、子どもには明らかに皺寄せが見て取れる。
ひとにどう向き合えばよいか分からなくなっていた。
恋愛を疎ましく思い、自分自身も汚いという意識を持ってしまっている(特にさやか)。
たかしは学校に行くことも出来ない。
反動形成と引き籠りと退行も感じられる。
大家族なのに下校時にはほとんど人がおらず、子どもは孤独である(さやかは週末に帰って来る)。

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打ち解けて来たところで、同級生の男子に告白されたさやかが真知子に相談する。
そうした気持ちに嫌悪感があり受け止められないと。
それに対し真知子は、男女の関係は汚いものではなくどんどん許容範囲が広がる関係だとか説明する。
どうもそれで納得とはいくまいが。

真知子の父も何故か出て来るのだが、かなり歪がある。
ネグレクト父で放りっぱなしだったのに、親の権威を手放してはいない。
はっきり結婚に反対して仕事が忙しいからと言って帰って行く。
そして家庭の愛情に憧れる彼女の受け入れ先がよりによってこの微妙な家庭である。

しかし良いのではないか。家と結婚するのではなくあくまでも相手と結ばれるのだ。
この対幻想がしっかり育まれれば、基本何の問題もなかろう。
ここにまた多様性どうこうを謂う気はないが、個と共に家庭も生きるためには様々な形があって良い。
それがそうならざるを得ないと謂うなら、受け入れその中で最善の方向を探るしかないはず。

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中村有沙のニヒリスティックな端正な横顔が印象的であった。
もう一人の東亜優の凛とした諦観漂う姿にも惹かれた。
この2人の若い女優さんがいたことでリタイヤせずに最後まで観られた感じ。






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三十路女はロマンチックな夢を見るか?

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2018

山岸謙太郎 監督・脚本
上原三由樹 脚本
Juliet「Aqua」主題歌

武田梨奈、、、荻野那奈(三十路前で焦る公務員)
久保田悠来、、、風間拓人(映画オタクの強盗)
佐生雪、、、笹川麗良(拓人の今カノ)
山村美智、、、赤城香奈恵(那奈の同僚)
秋吉織栄、、、工藤麻子(那奈の同僚、親友)
竹富聖花、、、日野まりあ(那奈の中学時代の親友)
酒井美紀、、、栗原葵(拓人の元カノ)
近藤芳正、、、油谷茂雄(課長)


昨日面白かったので、上原三由樹脚本の長い映画をひとつ。
フィリップ・K・ディックみたいな題名の映画だが、何の捻りもない(笑。
そのまんまの映画なのだが、最後に彼女らの職業にビックリ。
公務員て、そっちかい(爆。

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長々と最後まで強盗を騙して捕まえるのだが、それだったらそんな子芝居打たなくても良かろうにと思う無駄が一杯。
この極致が「コンフィデンスマン」のシリーズで、あれはナンセンスとしか言えないが、これも近い。
こちらを騙すためにその演技という感じ。
すると物語はそれ自体で成り立つものではなくなり、外から観る我々との関係を前提に成立するものになる。
これも映画特有の在り方の一つか。

噺は、3人組の銀行強盗がアパート一階の公務員の女性宅に突然押し入ったことに始まり、そこに身を隠して翌朝、彼等が車で逃げだす際に、三十路を前に独身で今の生活に疑問を持つ彼女も勢いで逃避行に混ざってしまうロードムービー調の展開となる。

まあ、共に三十路近くまで独身で来た親友がその日の朝いきなり寿退職を皆の前に告げたことで、取り残された孤独感とこのままでわたしは大丈夫なのかという迷いと焦りがピークに達していたのも確か。
状況的にこの流れは当然呑み込めるものだ(と言うかドラマ上これ以外の展開は無かろう)。

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そして何故だか彼女が進行方向を指示しパトカーや検問から車を巧に逃がしてゆくのだ。
近くであるし課長を車で送ったりする仕事柄の彼女なら土地勘から謂っても無理もない気はする。
映画オタクでいつもカメラを回している拓人とその元カノの葵と今カノの麗良とも言葉巧みに馴染んでゆく。
自分が美少女ヒロインになる夢を抱いていたが、その上を行く親友を前に自信を失い公務員を選んだことなども打ち明ける。
しかも拓人は、那奈にも思わせ振りな態度、仕草をして来る。ここは葵も見て取り那奈に対して警戒を始めるところだ。
拓人は映画で一発当てたい一心で金をつぎ込み借金が膨らみ、暴力団から借金を返すように追い立てられ(彼らの勧めで)今回の銀行強盗に及んだという。葵曰く、女より自分が好きなだけの男だと。

ちょいと驚いたのは、那奈が拓人の周りの2人の女を手にかけ亡き者にして、彼を独占してしまうところだ。
いくらこれまでの殻を破り違う自分を目指すにしても余りに極端で逸脱が激し過ぎでは。
この辺に無理を感じたが、単に三十路を前秒読み段階にきてタガが外れたかとも取ればとれる気もするところ。
何度も何度も腕時計を確認し、後三十路まで何時間何分というカウントばかり取っていた(笑。
余程、二十代のうちに何か大きな転換をしておきたい焦りが伝わってくる(もう仕事は辞めようとか言っていたが)。

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何と言っても4億円の金を持って逃亡しているのだ。
破れかぶれになってもおかしくない。
しかし拓人はこの金をやはり暴力団に渡すと言う。彼女は頻りに二人で持って逃げようと縋るが。

指定された受け渡し場所まで行くが、拓人は必ず還って来ると言う。
今回は自分たちが銀行強盗をして逃げる一部始終を全て記録しドキュメンタリーで臨場感と迫力のある映画を身を張って撮るつもりなのだ。この執念は凄い。そして策も用意しているらしい。
何と彼は自分の最期までをカメラに収めるつもりで、最後ヤクザに金を渡して撃たれるところは遠方から那奈に頼んでいる。
結構緩い流れで来ていることもあり、それ程の緊張感もないが、実際に撃たれるのかどうか気にはなるところ。

結局、撃たれて死ぬところまでカメラに収まり、最後にピンピンで生き返ってどうだったと出来栄えを彼女に聞く。
ヤクザの親分に手渡して撃たせたピストルは精巧な玩具であったのだ。

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その種明かしで拓人が得意になっているところで、那奈が真顔であなたを逮捕しますときた。
麗良も葵も警察に確保される。縛られていたり伸びていたり、の状態であったのだ。
しかしそれにしては明らかに風呂に沈めたり首を絞めたりでこちら用の映像があからさま過ぎた。
(この手のサスペンス映画では、そういった肝心な部分は匂わせるだけでそのものの映像は見せない)。
その上、非常に感情的に拓人に接したりするところも多く、「もうわたしにはあなたしかいないのよ」とまで演技する必然性があるか?
ただこちらのミスリード用の子芝居ではないか。その辺が実にわざとらしい。コンフィデンスマン程ではないが。

もう少し那奈は飄々とした姿勢で彼らの行動に淡々と関ってよく、そんなに葛藤したり感情的になるのは不自然な光景に見える。
そこまでしなくても充分拓人たちは騙せるし、実際彼女が三十路に拘っていたことは分かるがこれとどうリンクしていたのかどうも分りにくい。ともかく立派に職務を果たしたことは確かだ。

まあ、最初の職場の光景を見てそれが警察だとは気付かなかった(笑。
最後に那奈は広報課に転属し幼い頃からの憧れであった美少女ヒロインとなって悪者をやっつける芝居を町内会みたいな場で披露していたが、どうなのか。これで何かが変わった感じはしないが、、、。
警察でこの先もずっと働いて行くことは分かる。




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ソウル・フラワー・トレイン

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2013

西尾孔志 監督・脚本
ロビン西 原作
上原三由樹 脚本
:少年ナイフ 主題歌「Osaka Rock City」

平田満、、、天本薫(定年退職した男)
真凛、、、あかね(スリ)
咲世子、、、天本ユキ(娘、大阪の女子大生)
大和田健介、、、あかねの彼氏
駿河太郎、、、幻の電車の運転手
大谷澪、、、ユキの親友で恋人
和田めぐみ、、、あかねの姉


噺がよく出来ている。短編の監督作品が幾つもある上原三由樹が脚本を本作監督と共に書いている。
このパタンの長編映画が何本かあった。この映画を観たら、それらも近いうちに観たくなった。
ふたつの父と娘を巡る物語が絡みながら進行する。

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大分の田舎から都会の大阪に娘に3年ぶりに逢いに来る父。
家で採れた野菜と梅干、それからまとまったお金を持ってやって来たところでいきなり怪しいオヤジに色々と付き纏われ詮索されやたらと荷物を持たれる。これはもう金やお土産を持ち逃げされるパタンだとこちらもやきもきしながら観てゆくが、何とか被害には遭わずに済む。だがすかさず今度は、金髪の弾けたねえちゃんに大阪案内だと言って連れまわされることに。途中のロッカーで金の入ったバッグを預ける。これも冷や冷やである。ともかく人が良く無防備過ぎるカモにうってつけのおとうさんなのだ。
その後は、面白楽しく大阪巡り、然もかなりディープな体験をする。
だがしっかりあかねに用意してきたお金は取られてしまう。いつ気付くかそわそわしてしまうのだが。
そして夜には無事に娘に逢うことが出来る。この時、この威勢の良いギャルが怪訝な表情を浮かべた。

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久しぶりに逢ったところで、娘の親友の女の子と3人で外食をし、とってもいい気分の一日が終わるところであった。
だが、娘の部屋に戻ってみるとふと妙なモノを発見してしまう。それは今日の昼間にあちこち連れて行かれたところの最もディープなスポットで初めて拝んだグッズそのものであった。
それからいつまでも寝付けなくなる、、、。
そう、気になるとどんどん疑念と妄想は膨らむばかりなのだ(笑。

かなり責めている映画だ。
究極の子離れをやり遂げるべくもがき奮闘する父。
わたしも娘を持つ親として、結構どぎまぎした(爆。

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不思議なのは、二度ほど父の夢~幻想の中で電車に乗ってその運転手と対話をするところ。
その男は、大阪案内をしてくれたあかねの話していた彼女の父であろうが過剰にファンタジックで怪しく鬼気迫るのだ。
その運転手像は明らかにあかねからの情報を超えるものであり、これもまた平行世界に乗り換えであろうか。
(「娘がもうすぐ生まれるんですけど、人のものを取るような子にならなければいいです」って、この系の流れではない)。
勿論、その花電車から降りたくても降りられず、叫んで起きるのだが。
この悪夢が終盤のあかねの行き倒れて死んだ父の遺灰を軽トラの荷台から撒くところにまで収斂して行く。

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この辺のちょっと一息ついた後の不穏な空気を~女の子の親友と「まだ話せないわね」の秘密のキスから本当のアルバイト~まで膨らませ最後に自分の娘のステージ~これはバレエの発表会ではない~にまさに命がけで参加する(あかねと彼女の彼氏に必死に幾度も止められながら)カタストロフまで。
この流れに見事に乗せられる。

あかねは後半から黒髪の素顔を見せる。
彼女は、娘のユキのことを知っていた。「有名なストリッパーじゃ」。
ここから前半のスリの常習犯のギャルから非常に重い父との物語をもつ寄る辺ない孤独な女性の姿となる。

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しかしよく行ったものだ。
娘の職場に。
物凄い勇気がいる。警察に父の御骨を引き取りに行ったあかねもそうだ。
その御骨を(啖呵切って)受け取った勢いで、娘のもとに(3人で)向かう。

花電車で繋がる。
(自立とか解放とか謂っても、結局何であるのか)。
ユキは仕事のことは父に認めてもらったが、もう一つ先にハードルが控えている。
そう自立と解放と多様性が要請される。だが何にしてもそうだ。うちの娘たちの要求も全てそれが絡んでくる。
それをしっかり受け止め受け容れることしかない。
われわれに出来る事はそれしかないのだ。

平田満の演技には泣けた。良かった。
真凛も言うことなし。
咲世子という女優さんがやたらと綺麗であった。
もっと観たい女優である。



AmazonPrimeにて



モダン・ラブ

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2018
福島拓哉 監督・脚本
トルコ石 河原弘幸 音楽

稲村梓、、、ミカ
高橋卓郎、、、テル(ミカの恋人)
芳野正朝、、、シゲ(ミカの仕事の同僚)
今村怜央、、、バード(バーのマスター)
佐藤睦、、、高山
ヤン・イメリック、、、セルジ
川瀬陽太、、、前田教授(ミカの理論物理学ゼミの教授)


評判がやたら良かった映画であることは覚えている。
だが特に観ようとは思わずに来た作品。
ブルーロックを観る時に目に付いたので観ることに、、、(それにしても「ブルーロック」はメッチャ面白い)。

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劇中のBGMのセンスが大変良い(ライブステージのバンドも歪んだグルーヴ感がすこぶる良い。まるで”スミス”みたい)。
奇しくも昨日のSFみたいに階層的な並行世界が描かれる。
並行世界が階層的構造にあってもそれぞれが閉じて安定していれば、各々完結した生を送りそれでおしまいだが。
(元々干渉し合う関係性などないはずなのだ)。
ここでは、エマノンという惑星が突然現れその影響でそれぞれの世界線が交わってしまう、という設定のよう。
(ちょいと違う)ミカが3人一つの系に出現してしまう~ドッペルゲンガー。
異常気象も問題とはなっているが、これはいつも問題となっていてどうこういうほどのものでもない。
ミカの身にデジャビュが頻繁に起こり、自分の時間系がループしていることを知る。
世界線の交わりと一つの系の時間ループは別物であろうに、何やらエマノンに押し付ければよいと謂うところか。
(太陽系に新惑星である。こりゃなんでもありかも)。

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そもそもそれが起きたきっかけが、ミカのアルバイトで務める旅行会社を訪れた客が「アガルタ」に行きたいと謂うがその土地が分からず適当なツアーを紹介する。だが当人はそこを訪れたみたいで、東京に戻ってからミカに感謝の徴と土産をプレゼントしてくれる。
それが脳の模型なのだ。
脳内平行宇宙の象徴とでも、、、。
物々しくちょっとわざとらしい。
それを律義に部屋に飾っている(笑。

「起きてないことはすべて、起こり得るってことだから。」
これは参った。流石は理論物理学者である。
こう言っておけば間違いないが、ホントにそうだ。
このことばが活き活き感じられる説得力を覚える。最後には。

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ミカトリオは、それぞれまだテルと付き合っているミカとテルが失踪してテルの声と対話しながら(幻聴に親しみ)自堕落な毎日を送るミカとテルが自殺してもういない世界のミカである。基本、自堕落ミカの時間系に他の2人が出入りする形で、3人で集合もした。
(昨日の映画「あやつり糸の世界」ではないが、一番上位にいるミカの脳内幻想が自堕落ミカであり、そのミカの脳内幻想がテルと付き合い中のミカということだ。ハイパーな階層構造ね)。

ミカが一堂に会し、どう考えてもわたしたちは世界線が交差して妙な現象が起きている。そしてこの系がループしている、、、。
これでもかというほど、ループを見せつける( 涼宮ハルヒの「エンドレスエイト」みたいに少しずつ変化はしないのね。微分的に)。
こちらも確かにうんざりさせられる。
ここを抜け出さないと何も変わらない、もう逢えないけど頑張りましょう、と結論を出す。
壁の向うに出るのよ。
「行けるところまでいくつもり」。
ということで、自堕落ミカは荷物をまとめて一大決心する。

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この最後の壁の向うに出る為の旅ではミカはそれまでと違い、実にスッキリ爽やかないでたちで出掛けてゆく。
人との話し方も客相手でも親しいもの相手でもない、何やらリセットした爽やかなもの。
爽健美茶のCMにそのまま出て来そうな健康美。
しかしスペインのカタルーニャ州の「アガルタ」という立て看板のあるところでテルが地元のスペイン人となっていたのには、こっちも驚く。こうする他なかったそうだ。何で?
ミカ同様、そうなんだ、と受け取る以外にない(ミカも他に2人出て来たし。全て現実であれば受け容れる他あるまい)。
テルはミカを好きになり過ぎて離れることを選んだのだという。何で?
このロマンス部分~Loveの理論も平行世界に負けず強引で難解でありながら一種の浮遊感も感じる。
ここにRockが加わると何やらわたしらも既視感のある世界となるが、、、。
(かつてのフラワーチルドレン~サイケデリック~ネオサイケとか、、、)。

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ミカはこれからテルから吹っ切れて爽やかに生きてゆくのだろうか。

存在感ある稲村梓という女優さんを知った。
SF映画に似合う人だ。
バード役の俳優さんも何でも冷静に分かっちゃってるところが味があって良かった(笑。
それから劇中のサウンドは飛び切り良い。
ロック感覚のある監督さんだと思ったらエンディング曲、もうちょっと何とかならなかったのかな、、、これかなり厳しい(苦。

ともかく、吹っ切れた感覚になれる。
これは一度は観てよい映画だ。





AmazonPrimeにて





あやつり糸の世界

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WELT AM DRAHT
1973
西ドイツ


ライナー・ベルナー・ファスビンダー 監督・脚本
ダニエル・F・ガロイ 原作
フリッツ・ミューラー=シェルツ 脚本
ミヒャエル・バルハウス 撮影
ゴットフリート・ヒュングスベルク 音楽

クラウス・レービッチェ、、、フレッド・シュティラー博士
マーシャ・ラベン、、、エヴァ・フォルマー (フォルマー教授の娘、上位世界の存在)
カール=ハインツ・フォスゲラウ:、、、ヘルベルト・ジスキンス所長
アドリアン・ホーフェン、、、ヘンリー・フォルマー教授
バルバラ・バレンティン、、、グロリア・フロム(ジスキンス所長の秘書)
ギュンター・ランプレヒト、、、フリッツ・ヴァルファング(シュティラー博士の同僚)
ボルフガング・シェンク、、、フランツ・ハーン(シュティラー博士の同僚、心理学者)
マルギット・カルステンセン、、、マヤ・シュミット
ウーリー・ロメル、、、ルップ記者


13F]がこの映画のリメイク版であったとは知らなかった。あの映画は印象深かった。
この監督の映画は初めて観たが、確かに巨匠の大作だ。
しかし212分は長かった。途中4回寝た。これで感想書くのは心許ない(爆。

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未来研究所が「シミュラクロン」(シミュラクラやシミュレーションから来た言葉か。ジャン・ボートリヤールやジル・ドゥルーズでお馴染みの)というシステムにより作り出した我々の世界にそっくりの仮想世界を調査することで20年先の未来社会を予測しようというもの。
全人類の為の研究と謂うより特定の鉄鋼の企業と癒着し、利潤を貪ることが当面の目的のようだ。

この研究主任のフォルマー教授が妙なことを口走りはじめ突然変死する。
その後任に治まったシュティラー教授がじっくり長い時間を(4時間近く)かけて、その謎を解き立ち向かってゆく。
何に対して、、、自分たちの世界の上位層である「現実」に対して。

WELT AM DRAHT003

この辺、先に観た13Fと同様に、最初は自分たちはコンピュータの最新プログラムにより仮想世界を作った創造主のような存在である意識を持って過ごしていたが、ある時シュティラーは頭痛に悩まされ、運転中に一瞬の間、道路など外界が消えてしまう現象に遭遇する。
この後から様々な腑に落ちないことが起こって来る。
保安課長ラウゼが突然いなくなってしまうが、研究所の誰も彼の記憶がない。つまり最初から存在しないことになっており、彼に付いて知っている~記憶を持っているのがシュティラー一人なのだ。
これには混乱する。完全に彼のデータは抹消されていた。だが、仮想世界の住人(およそ9000人)の中を検索すると彼はそこでは存在しているのだ。

WELT AM DRAHT004

秘書が突然病気療養となり、代わりに所長のジスキンスから秘書が送られて来る。
このグロリアは、シュティラーの監視役であった。徐々にこの世界と仮想世界との関係にきな臭い要素が入り込んで来たようであった。しかしグロリアはシュティラーにも好意をもっており、彼がジスキンス配下の者に拘束されそうになったところで彼を助ける。
シュティラーは仮想世界にアインシュタインという連絡個体を投入していたが、「シミュラクロン」で短時間、仮想世界に自ら赴き彼とコンタクトを図り独自に捜査を進める。
そしてある時、アインシュタインが意識を他の個体に転送してもっと上位の世界に移住すると主張してきたではないか(彼はフリッツに成り済まし上位世界にやって来たのだ)。
更にシュティラーのいる世界も仮想世界でありそれを創造した「現実世界」があることを仄めかす(流石はアインシュタインという名だけのことはある)。
自らの足元の揺らぐシュティラーは混乱を極め、徹底してその真相を暴こうと動き始める。
だが関わる者ほとんどが彼を狂人扱いであった。更に彼を危険分子として消そうとする者たちが迫って来る。

基本、単なる電気信号~データの作る存在に過ぎない仮想世界の住人であっても、上位世界の存在に「意識」を転送することで、その世界の住人となれるようなのだ(ホントかい。つまり入れ替わるということ?)。
シュティラーの同僚で心理学者のフランツ・ハーンも彼と同じ認識に至り、彼を匿い行動に出たが、車ごと湖に転落させられ死んでしまう。フォルマー教授同様、知りすぎたことで消されたらしいが、シュティラーはそのフォルマー教授とハーンを殺害した疑いで警察に追われる身となった。
これでこの世界においても、研究所はクビになり、何処にもいる場所を失い逃げ惑いながら、真相を突き止めようともがくことになる。

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度々逢っていたフォルマー教授の娘エヴァを頼りにしていたが、実は彼女が上位の現実界から降りて来て監視をする(アインシュタインと同様の)役であった。しかし彼女はシュティラーを愛していて助けたいという。
まさか実体のない自分を何故愛せるのかと問うシュティラーに対し彼女は、実はわたしの現実界のあなたに瓜二つのシュティラー博士があなたのいるこの世界を創造したのだと打ち明ける。しかし性格はまるで異なると。
彼は彼女の申し出を断り、独り研究所に戻り、屋上からシュティラーの無実を主張し彼を復帰させると演説しているフリッツとグロリアに呼応する形で聴衆の前に立ち自らの無実とハメられたことを力説する。
だがそれも虚しく待機していた警察に一斉に狙撃され撃ち殺されてしまう。

車の屋根に横たわる彼の死体が映されながら、彼はエヴァによって殺害寸前に意識転送された身体に乗り移っていることも描かれる。下位世界では死体として横たわっているが、ここ上位世界ではふたりは活き活きとしてお互い見つめ合っている。
では、この男が創造主なのか。中身はその下位世界のシュティラーなのだが。
この2人が愛し合うところで終わる。
ハッピーエンドなのね。

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CGのないSFは本物が多い。これもその一つ。
鏡やガラスを多用した撮影とアーティスティックな演出で充分その世界を現出していた。
お見事。

  


WOWOWにて








炎の少女チャーリー

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Firestarter
1984
アメリカ

マーク・L・レスター 監督
スタンリー・マン 脚本
スティーヴン・キング 原作
タンジェリン・ドリーム 音楽


ドリュー・バリモア、、、チャーリー・マクギー(パイロキネシス能力を持つ少女9歳)
デヴィッド・キース、、、アンディ・マクギー(「押し」~意識を操る能力を持つチャーリーの父)
ジョージ・C・スコット、、、ジョン・レインバード(ザ・ショップのエージェント)
マーティン・シーン、、、キャップ・ホリスター
アート・カーニー、、、アーブ・マンダーズ(チャーリーたちを匿う老人)
ルイーズ・フレッチャー、、、ノーマ・マンダーズ(寝たきりの老婦人)
ヘザー・ロックリア、、、ヴィッキー・マクギー(念動力を持つチャーリーの母)
フレディ・ジョーンズ、、、ジョセフ・ワンレス博士
モーゼス・ガン、、、ピンチョット


「炎の少女チャーリー」という邦題で観る気が起きず、そのままになっていた作品を観ることにした(笑。
ホント、邦題が悪いと観る意欲が湧かないものだ。題名って大事なモノだねえ。

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「ファイヤースターター」で行った方が良かった。
1984ならVFXはもう少し行けるはず(何故かデヴィッド・ボウイの”1984”を思い出す)。
キャストは素晴らしく、物語も良く練られている分、ちょっと惜しい気がした。
8歳のドリュー・バリモア、最強である。この域までやれるのは他にダコタ・ファニングくらいか。
タンジェリン・ドリームは確かに分かるが、もう少し彼等らしいインパクトが欲しかったかなあ。

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良い作品なんだけど、もう少し感が拭えないところであった。
政府が軍事目的で人体に薬物実験を秘密裏に行っていたとかいう陰謀説は些か陳腐ではあるが(チャーリーの両親となる男女が薬物実験の被験者となったが、この二人以外は皆死亡ってどれだけ杜撰なものなの)、チャチな感じはしないくらいに丁寧に作られていたので、そこは然程引っ掛かるものではなかった。
だが、演出、VFXの点でもう少し頑張りが欲しかったのは否めない。

そしてパイロキネシス(自然発火)能力をもった娘チャーリーが生まれ、更に彼女は父の”押し”の能力と母の念動力も操れる超能力者として覚醒してゆく。
とは言え最初のうちは、力の制御が上手く出来ず、猫に火を点けてしまい、苦しがっているからと父に促されしっかり焼いてあげたりしている。
猫とかについてはスルー出来る力を身に付けておくべきだった。
政府機関の悪者たちについても父は、その連中にも家庭があるから能力は極力使わず、逃げなさいと諭す。
頭では理解するが、激昂すると手が付けられない状態になる。

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そこに政府の特殊機関(ザ・ショップ)が目を付けない訳はなく(この両親はほったらかしであったのか?この2人も立派な超能力者だが)、まずは一旦引退していた(つまりこのプロジェクトは打ち切られていたのだ)ジョン・レインバードに任務が下る。

ここでジョン・レインバードという存在は他のメンバーとは異質である。ザ・ショップのエージェントとして真っ先に送り込まれてきた男であるが、その組織に染まっているわけではない。
チャーリーの母を殺し、危ない能力の娘を生け捕りにやって来たのだが、チャーリー自身に何をか感じ、後に彼女の側に付く。ネイティブ・アメリカンならではの感性によるものか。

終盤の大詰めでは、父が組織に捕まり幽閉されているところに一人その心を読み乗り込むチャーリーである。
心を読みつつパイロキネシスで一手早く相手を焼き殺して進む。
相手もチャーリーの力を見込み何とか言いくるめて利用しようとするが、彼女は全て心の内を読んでしまう父譲りの力がある。
嘘が大嫌いなので、政府組織の連中は皆焼き殺されてゆく。
そして組織のチーフも父の命令通り2人まとめて彼女は焼き殺してしまう。
この辺から父に固く言われてきた能力の制御のタガが外れてゆく。

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だが向うも強力な防火スーツを着たり、父のこころを操作する”押し”能力を特殊コンタクトレンズで防ぐ策を講じて来る。
この防火スーツの連中を撃ち殺すのが、母の仇のレインバードであった。
彼はその後、銃を置き彼女に身を委ねる。
彼のこころを知ったチャーリーは彼を焼かずに出て行く。
そして組織の建物そのものを焼き尽くす(ここもう少し迫力が欲しい)。

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彼女が力を使い果たし水辺にしゃがんでいるところにレインバードがやって来て
手を差し伸べ彼女を抱きかかえて夜の闇に消えてゆく、、、。

タンジェリン・ドリームの音楽がもっと前面に出て演出のイマイチ感を補完出来ればよかったかも。
(せっかく彼らを使うのだからもっと大胆に導入したい)。
何にせよ、ドリュー・バリモアが圧倒的に凄い。
彼女で充分魅せてしまう映画であった。他のキャストも文句なし。
監督がちょっと弱かったかなあ、、、もう少しブラッシュアップすると間違いなく名作の域に入るものだと思うが。




AmazonPrimeにて




2020にリメイク版が出ている。

本作とどう違うか見比べてはいない。本作のDVDは品切れ状態。
恐らくVFXは改善されているのでは、、、。

斜陽のおもかげ

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1967

斎藤光正 監督
太田治子 『手記(十七歳のノート)』原作
八住利雄 脚本


吉永小百合、、、木田町子(女子高生、太宰治の遺児)
新珠三千代、、、木田かず子(町子の母)
岸田森、、、谷山圭次(太宰文学のファン、町子の彼氏)
芦田伸介、、、谷山進一郎(圭次の父)
高杉早苗、、、谷山千賀(圭次の母)
笹森みち子、、、岡見安子
北林谷栄、、、つる(太宰の幼少期の子守)
三津田健、、、津田文蔵
藤田けい子、、、津田千代(文蔵の妻)
藤田尚子、、、津田正子
鈴村益代、、、おたつ
相原巨典、、、試験主任
玉村駿太郎、、、試験員甲
広瀬優、、、試験員乙
日色恵、、、田中貞次郎(太宰の友人)
小池朝雄、、、ジャーナリスト


「斜陽」は中学の時、読んだだけで、全く頭の片隅にも残っていない(爆。
太宰の本は高校の初めの頃に固めて読んだものだが、、、。

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太宰治の遺児という立ち位置は複雑だろうな、と思う。
絵的には吉永小百合と新珠三千代の娘と母。大学生、岸田森と女子高生、吉永小百合のカップルは、共に文学的で良い(笑。
太宰が入水自殺した場所の上流を町子と圭次が散策する場面など、何とも言えない。

町子は綺麗で明朗で人気者であったし、かず子も会社のまかない婦仲間から「斜陽さん」と明るく親し気に呼ばれ共同体の中に居場所はしっかり持っている(斜陽さんと親しまれているというのも実に微妙だ。太宰にとり彼女は愛人であり娘も作りながら情死した際の相手は違う女であった)。
町子は父の文学を信じ、好きだと言っているし、母は父の文学に対し尊敬の念しかない。

これで良いではないか、と思うところだが(経済的には随分苦労して来たようだが)、いざ就職試験に行くと太宰のお妾の娘だと試験管にひそひそ噺をされて結局落とされ、付き合い始めた圭次の母からは思い切り嫌みを言われ交際は諦めるようにあからさまに釘を刺される。
この恋愛感情が芽生えてからというもの町子の気持ちは揺れ動き始める。

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自分の中で、其れまで通り、父を尊敬し作品が好きだという一途なスタンスではいかなくなる。
わたしは疎まれて生まれた子供に過ぎない、母は父との愛に確信を持っているが実際のところどうであったのか、その流れで作品自体に対する疑問も湧いて来る。
谷山圭次は一貫して太宰文学を称賛し、彼女の母をとても立派だと敬っていた。
(彼は町子の高校のOBで山岳部のコーチでもある)。

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その圭次がかつての仲間と登山に向かう(再生と言うかイニシエーションにも想える)。
兄が山で亡くなってから彼はずっと遠ざかって来たのだが、両親が何かと彼に干渉し、町子との付き合いも否定して来ると彼は自分に課した禁を破り、山に入るのだった。
時を同じくし、町子は父の生まれ故郷の津軽を訪ねていた。
この津軽の地が厳かで実に趣深い。つるの案内で父をよく知る人と何人も話す機会を得る。
風土もそうだが、登場人物がそれぞれに味がある。皆、文学的な人ばかり(笑。
壇一雄が本人役で登場し、町子に父の想い出を独特の口調で語って聞かせるシーンは教養番組のドキュメンタリー風でちょっと笑えた。
巨石を小高い丘に引き上げて作った蟹田観瀾山公園の父の文学碑には、佐藤春夫の筆による「かれは人を喜ばせるのが何よりも好きであった」が彫られている。太宰治の生家が「斜陽館」として保存されていることなども知った。イタコも観られる河原地蔵でのシーンなど結構その意味でも価値があるものだ(そう斜陽の中の文章の朗読を母娘でしていたり)。
、、、吉永小百合の太宰治聖地巡りとかいうNHK番組が一本出来そう(今作るなら芦田愛菜と巡る、であろうか(笑)。

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それにしても当時もいたのかと思わせる芸能記者みたいな怪しいジャーナリストが、危うく津田正子と木田町子を無理やり引き合わせようとしたところは、スリリングに感じた。一番この物語で町子が傷ついたところだ。
だが津軽での経験と圭次の遭難の電報で飛んで帰った山での奇跡的な彼との再会(亡くなったのは圭次の相棒の方であった)で彼女は覚醒するものがあった。
母かず子が「生きていてよかった」と二人に対して語ることばに全てが収斂されてゆく。

東京に戻り、町子は母に生まれて来てよかったと泣いて縋る。
「斜陽」もう一度、読んでみたくなった。





AmazonPrimeにて





アブダクション 忘れられた少女誘拐

Forgotten Abduction001

Mommy Is a Murderer/Forgotten Abduction
2015
アメリカ

リンジー・ハートリー 監督
ケイト・ハニオク 脚本

ブリー・ウィリアムソン、、、カリーナ(子供用品店オーナー)
ヘザー・マコーム、、、リナ/イザベル(誘拐犯、マリーの偽母)
ジェイソン・セルマク、、、ライアン(カリーナの恋人~夫)
ブルック・カー、、、キャメロン(カリーナの親友)
デヴィッド・ケルシー、、、アイバン(イザベルの元夫)
ジョージー・M・パーカー、、、マリー/エミリー(誘拐されて育てられている娘)
ジェニー・リン、、、エマ(ママ友のボス)


TVドラマみたいな映画。
2時間ドラマの風合い。
内容的にもそういったサスペンスもの。

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訳アリ母娘を巡り、どうもしっくりこない洋品店店主の女性がその疑問を追求する。
日本ドラマでもよく素人の家政婦さんとかが事件に首を突っ込んで解決に導くとかあるが、、、
このヒロインの女性も偶々出逢ったリナとマリーの母娘に深く関わって行く。
母が娘に対し異常に過保護で、パーティーにも参加せず写真も撮らせないのだ。
それも世の中が物騒であるからという。確かに誘拐事件は多発している。

そして彼女らが店に買い物に来た時にホントに娘が誘拐されそうになったのを阻止したことから、関りを深めてゆく。
だが危うく誘拐されそうになったのに警察に通報することは頑なにさせず、母娘共々引き籠ろうとしている。
ライアンに相談すると元夫から身を隠しているのだと言われるが、それにしても過剰な外界遮断なのだ。
娘の読書感想文のメダル授与式にも出席しないと言う。
そのマリーと会話をしているうちに以前の家ではエミリーという名前だった、などという不可思議な事を時折言うのだった。

この母の姿勢と娘の言動が気になり調べてゆくと、丁度マリーと同じ年になる娘が5年前に誘拐されて捜査がごく最近打ち切られ失踪扱いとなっていた。写真を観るととても似ていた。
更に背中に痣がありその位置もピッタリである。
彼女の両親はその2年後、高速道路走行中、車が制御不能となり事故で亡くなっている。

ここでちょっとばかり常軌を逸した関りというか情熱を感じるのは、ひとつはカリーナのマリーへの関心の強さである。
確かに目の前で危ない目に遭った娘であり、関心を持つのは分かるが、その心配の仕方が自分の娘に対するもののよう。
そこまで赤の他人の娘に拘る理由がはっきりしない。
この娘がいよいよ5年前に誘拐されたエミリーである確信を持ったところでその意志~情熱は危険を顧みないほど激しいものとなる。
度々、ライアンが間に立ち僕たちは親ではないからと冷静にさせるのだが。
もう一点は、エマというその一帯のママ友を仕切るボスの存在と彼女のネットワークである。
大変な圧力組織を形成しており、情報伝達力の早さは凄いもので忽ちのうちに仲間にされたり排除されたりしてしまう。
特にカリーナがマリーの件で親友のキャメロンに相談しているところに突然現れ、その件をリナに直ぐに連絡し相談相手の住所も調べあげて伝えてしまう。恐ろしいものだ。この共同体に睨まれたらこの地では暮らしてゆけまい。

そしてリナ~イザベルの尋常でない精神状態である。
元夫が言うには16で妊娠して子供を産んだが担当医から精神疾患の疑いがかけられ、アビーという娘を福祉機関に取り上げられてしまう。
エミリーは、その子の代償的存在に他ならない。社会的規範の感覚は無く、自分の母性の欲望に従うことに躊躇なかったのだ。
精神的な混乱は深まり、衝動的で制御が利かず、一歩間違えば殺人も犯しかねない暴力を厭わなくなっていた。
キャメロンは自宅のガス栓を開けられ重体になり、ライアンは殴られ気を失い、カリーナはナイフで襲われ、殴られて入院もしている。そして元夫のアイバンは危うく撃ち殺されるところであった。
自分のイザベルという名前も、さらった子と同様に変えて生活を送って来たのだ。

Forgotten Abduction002

確かに今のリナにエミリーを預けてはいられないことは確かであろう。
その点においては動機がなんであろうと、カリーナの動きは必要であったことが分かる。
最後は、カリーナとライアンのカップルに挟まれて幸せそうにしている娘のエミリーという構図で決まった。
このエミリーがとても夢見がちである意味現実逃避的なのはそれによって自我を防衛していることの現れに思える。
幼い彼女が生きてゆく知恵と謂えよう。前はエミリーという名前だったと言う他を覚えていないのも、意識下にその他の記憶を抑圧した結果か。

エミリーの下に子供が生まれると言うが。
まあこのカップルの養女ということなら長女として問題なく育ってゆけそうである。
映画と謂うよりTVドラマのノリであった。

このエミリーを演じた子役はなかなかのものである。
クロエ・グレース・モレッツのこの位の時期を彷彿させる女優であり今後の活躍が楽しみである。





AmazonPrimeにて





砂漠の鬼将軍

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The Desert Fox: The Story of Rommel
1951
アメリカ

ヘンリー・ハサウェイ 監督
ナナリー・ジョンソン 脚本
デズモンド・ヤング『砂漠の狐ロンメル』原作


ジェームズ・メイソン、、、エルヴィン・ロンメル
セドリック・ハードウィック、、、カール・シュトローリン(ストゥットガルト市長、博士)
ジェシカ・タンディ、、、ロンメル夫人
ウィリアム・レイノルズ、、、マンフレート・ロンメル(エルヴィンの息子)
ルーサー・アドラー、、、アドルフ・ヒトラー
エヴェレット・スローン、、、ヴィルヘルム・ブルクドルフ
レオ・G・キャロル、、、ゲルト・フォン・ルントシュテット元帥
ジョージ・マクレディ、、、フリッツ・バイエルライン
リチャード・ブーン 、、、ハーマン・アルディンガー
エドュアルド・フランツ、、、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク
ダン・オハーリー、、、特殊部隊隊長
ジョン・ホイト、、、ヴィルヘルム・カイテル
デズモンド・ヤング 本人
マイケル・レニー、、、ナレーター


何で「砂漠の鬼将軍」なの?「暴れん坊将軍」の親戚みたいじゃない?やめてよ。
素直に「砂漠の狐」ではダメなの?
それからここでもヒトラーがそっくりさんで似ていた(ヒトラーの絡む映画ではそこがひとつの見所でもある)。
ロンメルは、いかにもそれらしい役者が演じていた。
全員が流暢に英語を話している(当たり前か。別にドイツ語でなくとも物語がしっかり描けていれば問題ない)。

原作者が本人役で出演している。
実際に彼は北アフリカ戦線で捕虜となりエルヴィン・ロンメルに逢っているという。
憧れ(敬意を)感じる、説得力のあるものとなっている。
(ロンメル夫人が制作顧問として加わり夫の遺品も使われているそうだ)。

The Desert Fox003

その戦術から“砂漠の狐”とも呼ばれ連合国に恐れられた強敵であるが、軍人として尊敬され偶像化された存在であることが分かる。終始、ヒトラー総督との確執に苦しみつつ妻と息子を気遣う姿が描かれていた。
エルヴィン・ロンメルその人を描こうとする作品で、実際の戦闘場面や具体的な活躍を単に描写する戦争物語ではない。
(とは言え当時の思いもよらないカメラアングル~記録用の臨場感半端でないドキュメントフィルムもかなり挿入されていて、その意味での迫力は凄い。何と言うか編集~演出が巧みで本編に溶け込む流れになっている)。
飽くまで軍人に徹しようとしながらも国を思えば、この総督ではとても駄目だということは明白であり、徐々に反逆分子の意向に傾いて行く葛藤と苦悶の姿が描かれていた。
最後に読まれるチャーチルの賞賛のことばは印象的である。

ロンメル他、上層部がヒトラー暗殺に加担したのはこれを観れば無理もないことだと納得できる。
当然、アメリカ映画であるからには、そうならなければ。
しかし、ただ単にロンメルをそうしたプロパガンダに利用したというレベルのモノではない。
実際にロンメルその人に迫ろうと戦後、各方面にあたり細やかに資料を収集して作られた物語であるのは事実だ。

追い詰められたところで、総統は占星術に頼り、名匠ロンメルの言葉に耳も貸さなくなった。
(以前は彼を激賞していた時期もあったが、次第に批判的になる)。
お陰で劣勢は著しくなるが、ロンメルの前線における分析など頑なに無視し「撤退はあり得ない。勝利か死かだ。」などという中世の闘いかと呆れさせる電報を送り続けるばかり。総督には何を訴えても無駄であった。

そして実際に暗殺計画に及ぶがあれだけの仕掛けを実際に爆発したのに、肝心のヒトラーは死なない。
その後、容疑者と疑われた者が5000人処刑される。
ロンメルはジープで移動中に敵機に襲われ重傷を負いフランスの病院に入院中であった。
その責から逃れられたかと思ったが、、、。
自宅療養中に総督の意を伝えにやって来た者から反逆罪により自決を言い渡される。
ロンメルは飽くまでも裁判~軍法会議を訴えたが了承されなかった。
ヒトラーからのことばは決定事項であったのだ。
ロンメル自身はそれを受け容れなかったが、妻と息子を盾に取られては選択の余地は無かった。

The Desert Fox001

彼は使者の車の中で毒を煽り死ぬが、国民的英雄は、戦地で名誉の戦死という形でドイツ国民には周知される。
戦時中は情報操作が常態であるから、これもそのうちの一つに過ぎないと謂えるが、その事実を戦後詳細に調べて明かしたデズモンド・ヤングの情熱は何であったのか。これを観れば分かる気もする。





WOWOWにて










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