猟人日記

The Hunter's Diary
1964
中平康 監督
浅野辰雄 脚色
戸川昌子 原作
仲谷昇、、、本田一郎(電子計算機コンサルタント)
戸川昌子、、、本田種子(一郎の妻)
北村和夫、、、畑中健太郎(弁護士)
十朱幸代、、、藤睦子(畑中の助手)
小園蓉子、、、尾花常子(自殺した尾花けい子の姉)
茂手木かすみ、、、津田君子(画学生、被害者女性)
中尾彬、、、山崎幸太郎
岸輝子
山本陽子
稲野和子
高田敏江
山田吾一
鈴木瑞穂
松下達夫
庄司永建
青木富夫
丸山明宏、、、ステージ歌手
全く事前の知識もなく無作為に選び観てみたが、かなりよく出来た作品であった。
原作者がチョイ役ではなく重要な主役級の役でずっと出ているのにも驚き。
説得力あった。

本田一郎は豪邸を持ちながら安アパートも借りて二重生活を送り、ガールハントをして“猟人日記”というものをつけている。
趣味の世界ではあるが、そこに逃げ込んだというものか。
奥さんが関西物産会長の娘で彼は婿で入る。
最初身籠った子供が、骨のない奇形児で流してしまった。そのトラウマで妻が心身ともに病んでしまう。
一郎も妻と共に苦しむが、やがて現実逃避の性的放浪者となって行く。

しかし彼は重大な過ちを犯す。タイピストの女を妊娠させてしまったのだ。彼女はそれを彼に告げることが出来ず自殺を遂げる。
ここから彼の関係する女が次々に殺されてゆくという事態となる。
彼は恐れ不安に陥る。「触れた女が次々に死ぬ。俺は死を撒き散らしているのか」。
単なる偶然とは思えなくなってくる。
最初の二件までは偶然だと高をくくっていたが、3件目の画学生に至っては絞殺に使ったネクタイが彼のものなのだ。
これは明らかに彼を陥れる犯罪だと分る。そして状況証拠から当然彼が疑われることに。
おまけにアパートの方に残した猟人日記まで盗まれてしまう。
それにしてもこの本田一郎と言う男、実にモテる男である。
きまってハーフ?のフランス人芸術家とかイギリス人特派員みたいなのになって獲物をひっかけるのだ。
それが面白いように上手く行く。
だが、その外人口調が何と言うかギャグみたいでこの部分だけはニンマリしてしまうもの。
勿論、本田は真面目にこういうやり方がインテリ女性は弱いなどと確信しているのだ。いい気なものである。

犯人は周到に彼の素性と血液型を調べ、同じ希少な血液型RH(-)AB型の血液と分泌物を被害者に残してゆく。
遺留品と指紋、血液型、実際に逢った事実など状況証拠は充分であり彼は一審で死刑判決を言い渡される。
そこで義父に依頼された敏腕弁護士の畑中健太郎が彼につくことに。
余りに証拠の揃い過ぎた(綺麗に仕組まれた)猟奇的連続殺人であるが、彼が真犯人でないとするとかなり手強い恐らく怨恨による殺人事件と踏む。
畑中はやり手の助手、藤睦子と共に、血液の入手先や被害者の周辺や犯行時刻などを再度洗い直す。
畑中は記憶力の良い本田に猟人日記を書き直すことを要求する。
ふたりは、本田の記した猟人日記を元に調べ直してゆく。
そして一番最初の、まだこの猟奇殺人として報道される前のあるタイピストの自殺に注文くする。
その姉の存在が浮かび上がって来た。

実は、われわれはこの姉の無念と妹を死に追いやった男に対する恨みを映像で予め観ているため、ずっと犯人はこの姉であると思って観てきている。特に頬のほくろの特徴などもあり。彼女に関わった者皆がこのほくろを覚えていたのだ。
であるから、そこに向けて畑中と藤の名コンビがテンポよく辿り着くであろう過程を愉しむ感じで観ていた。
ところが終盤、大どんでん返しである。
確かにその展開は充分にあると思ったが、唸った(笑。
この辺、戸川昌子の怪演が際立つ独壇場である。
これまで映画の原作者が、これ程出しゃばる~ではなく活躍するのは初めて観た(恐。
凄みがあって他のところを忘れそうになったではないか。
ここの顛末は敢えて書かないで置くことにする。かなり練られている本~いや原作である。
ただ一つだけ(笑。そのどんでん返しのお陰もあり、よれよれで釈放された本田に、最後のおまけがつく。
この辺り、ホントにしつこいほどに周到である。

まだ若き丸山明宏氏の銀巴里のステージ姿を観た。ファンではないが、成程と思った。
更に十朱幸代が大変可愛らしく演技共々素敵である。
中平康監督は、「月曜日のユカ」の監督である。確かにスタイリッシュであった。
一度は、観る価値あり。
AmazonPrimeにて
