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GOMA28

Author:GOMA28
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猟人日記

The Hunters Diary006

The Hunter's Diary
1964

中平康 監督
浅野辰雄 脚色
戸川昌子 原作

仲谷昇、、、本田一郎(電子計算機コンサルタント)
戸川昌子、、、本田種子(一郎の妻)
北村和夫、、、畑中健太郎(弁護士)
十朱幸代、、、藤睦子(畑中の助手)
小園蓉子、、、尾花常子(自殺した尾花けい子の姉)
茂手木かすみ、、、津田君子(画学生、被害者女性)
中尾彬、、、山崎幸太郎
岸輝子
山本陽子
稲野和子
高田敏江
山田吾一
鈴木瑞穂
松下達夫
庄司永建
青木富夫
丸山明宏、、、ステージ歌手


全く事前の知識もなく無作為に選び観てみたが、かなりよく出来た作品であった。
原作者がチョイ役ではなく重要な主役級の役でずっと出ているのにも驚き。
説得力あった。

The Hunters Diary001

本田一郎は豪邸を持ちながら安アパートも借りて二重生活を送り、ガールハントをして“猟人日記”というものをつけている。
趣味の世界ではあるが、そこに逃げ込んだというものか。
奥さんが関西物産会長の娘で彼は婿で入る。
最初身籠った子供が、骨のない奇形児で流してしまった。そのトラウマで妻が心身ともに病んでしまう。
一郎も妻と共に苦しむが、やがて現実逃避の性的放浪者となって行く。

The Hunters Diary003

しかし彼は重大な過ちを犯す。タイピストの女を妊娠させてしまったのだ。彼女はそれを彼に告げることが出来ず自殺を遂げる。
ここから彼の関係する女が次々に殺されてゆくという事態となる。
彼は恐れ不安に陥る。「触れた女が次々に死ぬ。俺は死を撒き散らしているのか」。
単なる偶然とは思えなくなってくる。
最初の二件までは偶然だと高をくくっていたが、3件目の画学生に至っては絞殺に使ったネクタイが彼のものなのだ。
これは明らかに彼を陥れる犯罪だと分る。そして状況証拠から当然彼が疑われることに。
おまけにアパートの方に残した猟人日記まで盗まれてしまう。

それにしてもこの本田一郎と言う男、実にモテる男である。
きまってハーフ?のフランス人芸術家とかイギリス人特派員みたいなのになって獲物をひっかけるのだ。
それが面白いように上手く行く。
だが、その外人口調が何と言うかギャグみたいでこの部分だけはニンマリしてしまうもの。
勿論、本田は真面目にこういうやり方がインテリ女性は弱いなどと確信しているのだ。いい気なものである。

The Hunters Diary002

犯人は周到に彼の素性と血液型を調べ、同じ希少な血液型RH(-)AB型の血液と分泌物を被害者に残してゆく。
遺留品と指紋、血液型、実際に逢った事実など状況証拠は充分であり彼は一審で死刑判決を言い渡される。
そこで義父に依頼された敏腕弁護士の畑中健太郎が彼につくことに。
余りに証拠の揃い過ぎた(綺麗に仕組まれた)猟奇的連続殺人であるが、彼が真犯人でないとするとかなり手強い恐らく怨恨による殺人事件と踏む。
畑中はやり手の助手、藤睦子と共に、血液の入手先や被害者の周辺や犯行時刻などを再度洗い直す。
畑中は記憶力の良い本田に猟人日記を書き直すことを要求する。
ふたりは、本田の記した猟人日記を元に調べ直してゆく。
そして一番最初の、まだこの猟奇殺人として報道される前のあるタイピストの自殺に注文くする。
その姉の存在が浮かび上がって来た。

The Hunters Diary004

実は、われわれはこの姉の無念と妹を死に追いやった男に対する恨みを映像で予め観ているため、ずっと犯人はこの姉であると思って観てきている。特に頬のほくろの特徴などもあり。彼女に関わった者皆がこのほくろを覚えていたのだ。
であるから、そこに向けて畑中と藤の名コンビがテンポよく辿り着くであろう過程を愉しむ感じで観ていた。

ところが終盤、大どんでん返しである。
確かにその展開は充分にあると思ったが、唸った(笑。
この辺、戸川昌子の怪演が際立つ独壇場である。
これまで映画の原作者が、これ程出しゃばる~ではなく活躍するのは初めて観た(恐。
凄みがあって他のところを忘れそうになったではないか。
ここの顛末は敢えて書かないで置くことにする。かなり練られている本~いや原作である。

ただ一つだけ(笑。そのどんでん返しのお陰もあり、よれよれで釈放された本田に、最後のおまけがつく。
この辺り、ホントにしつこいほどに周到である。

The Hunters Diary005

まだ若き丸山明宏氏の銀巴里のステージ姿を観た。ファンではないが、成程と思った。
更に十朱幸代が大変可愛らしく演技共々素敵である。
中平康監督は、「月曜日のユカ」の監督である。確かにスタイリッシュであった。
一度は、観る価値あり。






AmazonPrimeにて












暗殺者たちの流儀

ANATOMIA ZLA001

ANATOMIA ZLA
2015
ポーランド

ヤツェク・ブロムスキ監督・脚本・製作
ルディック・ドリザール音楽

クシシュトフ・ストロインスキ、、、ルレク(カロス・Z)
マルチン・コヴァルチク、、、ワスコ
アンジェイ・セヴェリン
ピョートル・グウォヴァツキ
ミハリーナ・オルシャニスカ、、、ハリナ


大変渋い映画であった。
フランス映画に似ているが、どこがどう違うとかは、わたしの手に負えるものではない。
更に乾いた印象を持ったが、、、。
その道の評論家なら色々と指摘してくれそうなところ。
ホントにこれがフランスモノならどんな感じになるのだろう、、、。
興味深い。渋い。

ANATOMIA ZLA002

しかしこの雰囲気、トーンは好きだわ。
今、仮釈放でシャバに戻りひっそりと暮らしている老人は、腕の良い殺し屋として名を馳せていたが仲間の裏切りでムショに入っていた。世のモラルの低下を嘆くご老人である。
だが、老後を静かに暮らさせてはくれない。

警察庁長官を殺害せよと言う依頼を検事がしてくる。
アメリカの政治家から来ている危ない件らしい。
ともかくその検事は尻に火が点いているような感じで猛烈な勢いでルレクを脅して仕事をやらせようとする。
さもその警察庁長官が悪者であるような口ぶりで。失敗は出来ないからお前に頼むという。
ルレクもやらざるを得ない状況となる。しかし金は前払いではなかった。

一度引き受けると計画的に機械的に冷酷に彼は動き出す。
確かに一流の殺し屋だわと思わせる人格になる。
殺しのターゲットを狙い淡々と計画と準備を図るところは手慣れたモノ。
面白いのは、老眼でかつての射撃の腕が鈍ったため、アフガニスタンで民間人3人をタリバンと間違え射殺してしまい除隊させられた腕の良い狙撃手を雇い、2人で組んで仕事を進める運びとなるところ。バディムービー風に展開する。

ANATOMIA ZLA003

しかし新しい相棒は、殺すには大義が必要という。もう後味の悪い殺しはご免なのだ。
老人の殺し屋もシャバで完全に足を洗うつもりでいた時は、それに同調する感じの姿勢であったが、もう目的は設定しておりブレる様子もない。スウィッチが入り、やるのみモードで動いており、相棒であるワスコも従ってゆく。
ずっと一緒にいるうちに時折ぶつかりつつも良い相棒関係は築かれるもの。

間に入る検事が警察庁長官の泊まるホテルの部屋と愛人との密会の日に300m程離れた向かいのホテルを取って準備する。
丸投げでないところは結構良心的にも思うがこの男もこれにしくじると大変なことになる焦りが見て取れるところ。
犯行もテロ組織がやったように仕組めると。なかなか良い仕事をするなとルレクも評価する。
そして張っていると、愛人が現れ少し後から花束を持った長官も入って来るではないか。
やるぞ、と声をかけワスコも実に手際よく銃の準備をする。
ルレクがガラスに丸く穴を開けて待つと長官が窓を開け煙草を吸う。
そこだ、とばかりに一発で仕留める。しかしオペラ歌手の愛人は仕留めそこなう。彼はやはり大義ないモノは撃てない性格なのだ。

ANATOMIA ZLA004

そこからは上手く逃亡するが、成功報酬で検事ともめる。前金支払いを後払いに延ばしたあげく現金では2万だけ、残り8万は口座に送金するというが、この口約束など信用できるものか。ちゃんと作って来たのは高飛び用のパスポートのみ。
そこで結局相手のボディガードと撃ち合いとなり、相手は2人とも倒すが、ルレクも不意打ちを喰らい深手を負ってしまう。
彼の車で、病院に連れてゆく途上で差し掛かった橋から銃を捨てる時にルレクも事切れていたことに気付く。
仕方なく彼も橋から落とし、直ぐに高飛びすればよいものを、、、
そもそもワスコの分け前やパスポートは一切ないのだがルレクは彼への報酬はどうするつもりだったのか。
ワスコは馴染みのコールガールとのんびりしているうちに銃とルレクの遺体が引き上げられ、彼の車を使っていたことでルレクの仲間に狙われナイフで殺されてしまう。
駐車場の門番に高飛びしたなどと余計なことを言ったばかりに。

ANATOMIA ZLA005

淡々と時計仕掛けのように物語は進んでゆく。
そして終わり方も良い。
とても心地よい映画であった。




AmazonPrimeにて













インサイド・マン

Inside Man006

Inside Man
2006
アメリカ

スパイク・リー 監督
ラッセル・ゲワーツ、アダム・エルバッカー 脚本
テレンス・ブランチャード 音楽

デンゼル・ワシントン、、、キース・フレイジャー (ニューヨーク市警)
クライヴ・オーウェン、、、ダルトン・ラッセル (銀行強盗のリーダー)
ジョディ・フォスター、、、マデリーン・ホワイト (女性弁護士)
クリストファー・プラマー、、、アーサー・ケイス (マンハッタン信託銀行会長)
ウィレム・デフォー、、、ジョン・ダリウス (ニューヨーク市警)
キウェテル・イジョフォー、、、ビル・ミッチェル (ニューヨーク市警、キースの相棒)


ちょっと人を喰ったようなテーマ曲がとても気になった。面白い。

Inside Man005

オシャレな映画だった。
強盗団の描き方がシャープ。
ダルトン以外は人格を観たないかのような影みたい(これも計略のひとつだが)。
噺をしているのは彼だけだった。残りはショッカーでもよい。
まずダルトンは余程、ケイス(周辺)を調べ上げたんだね。
この時期のこの年齢の大富豪は、戦争を利用して富を形成した者は少なくない。
今は大変な慈善家で経済界で尊重される存在でもその礎を築いた頃は何やっていたか分からないものだ。
彼はナチスと組んで甘い汁を吸った。その捨てる事の出来なかった徴を隠していたというが今一つ事情が掴めなかった。
これは彼にその秘密を守ることを依頼された敏腕弁護士マデリーン・ホワイトですらはっきりとした内容は知らされないまま。
こちらが分かるはずもない(笑。

Inside Man004

ダルトン・ラッセルのほぼ同じ口上が始めと最後に流されたり、人質の尋問がまだ助けられていない物語の中ほどで挟まれたり、構成も面白いし飽きさせない。
ただ、苦悩する被害者であるアーサー・ケイスは相当な権力も持っているはずで、マデリーン・ホワイト以外のルートで強盗団を追うこともあってもおかしくないと思う。ちょっと気弱で上品すぎる気がした。元ナチスと組んでいた割に。
その分、ホワイトは可成りのやり手である。ハッキリ言ってあの程度の仕事で、ケイスから多額の口止め料までせしめ、弱みを握っていることから顧客にも登録してしまう(笑。彼女も相当な金持ちに違いない。
今回の事件を利用し、つまり実際に欠番の金庫(無いことになっている)以外からは全く何も盗まれず、人質も皆無事救出され、ニュース報道はされたもの、実質被害が無かったことで、キース・フレイジャーはニューヨーク市長から刑事の鏡みたいに賞賛されしっかり~ちゃっかり出世している。これは確かに電話で謎かけをしたり相手を読み合ったりで頭は疲れたにせよ、強盗団ひいてはダルトン・ラッセルのお陰によるところが大きい。

Inside Man003

強盗団は、結局ダイヤだけ盗んだのか?
あの欠番238から。
最後にフレイジャーに託す形でダイヤの指輪を残すという事は、俺の代わりにケイスの悪事を暴けという事?
まあ、警察のやるべきことかも知れないけど、メディアの仕事かもね。
でもそれはホワイト女史がやらせない手を打つでしょうが。
今やケイスは上客なのだし。


でも気になるのは、ダルトンはこれでどの程度、ケイスに打撃を与えられたのか?
ホワイトが言うにはダルトンがそれを使うような時は、直ぐにあなたが買い取るのよ、と言うアドヴァイスだ。
ダイヤをあれだけしこたま盗んだのだから政治(思想)だけでなく金も相当好きなはず。
どうするのだろう。
そう、あのバカでかいダイヤの指輪を託されたフレイジャーはこの事件解決後に、相棒と共に飽くまでも追及の手を緩めず頑張るのか?昇進したし彼女との結婚も控えているし、この辺にしといてやろうとなるのか、ならぬのか(笑。

Inside Man001

頭は回るが女好きでとっても軽めのデンゼル・ワシントン。
如何にもやり手の知的で腹黒い~いやミステリアスな女傑のジョディ・フォスター。
強盗なのだが、強大な富を持つ偽善者も懲らしめたいこれまた知略に長けたクライヴ・オーウェン。
もと巨悪のくせに何だか脆弱な名士みたいになってしまったクリストファー・プラマー。
どれも実に良い味を出していた。

結局、全て観きれなかったが、客の中に協力者が何人も潜伏していたのね。
犯人と一緒の服で紛らわしい形で銀行から雪崩出たけど、あれで皆助かったわけ。
(客を犯人と同じ服を着せたのもその意味があるから)。
最後の、ラッセルがわざとフレイジャーにぶつかり銀行を正面扉から出て行きゆっくり歩いて車に乗った際にあれまあと分かる。

Inside Man002

ただ、あの小部屋だが、あそこは何処にあるのか、今一つよく分からなかった。
(集中が途切れ途切れで観てしまったのがよくなかった。もっと暇な日に観るべきだったか)。
それにしても、警察の盗聴を逆手に取ったアルメニア語の大統領演説を聞かせたり、人質を殺すことは無いと踏んだ後に、屋上~距離を持ったところでトリック処刑をやって見せたり、巧妙な手で翻弄するダルトン・ラッセルの知略は思わず膝を叩いてしまった(笑。勿論、キース・フレイジャーもジャンボジェットを逃走用に要求するところに、相手方の時間稼ぎの内情を観抜くところなど、流石である。

まあ面白い映画であった。ちょっとデンゼル・ワシントンが軽めで下品なところが、わたしのデンゼルイメージとズレていたが、まだ若い時期だしね。




AmazonPrimeにて











ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

The Post001

The Post
2017
アメリカ

スティーヴン・スピルバーグ 監督・製作
リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー 脚本
ジョン・ウィリアムズ 音楽

メリル・ストリープ、、、キャサリン・グラハム(ワシントン・ポスト社主・発行人)
トム・ハンクス、、、ベン・ブラッドリー(ワシントン・ポスト編集主幹)
サラ・ポールソン、、、トニー・ブラッドリー(ベン・ブラッドリーの妻)
ボブ・オデンカーク、、、ベン・バグディキアン(ワシントン・ポスト編集局次長・記者)
トレイシー・レッツ、、、ベン・バグディキアン(ワシントン・ポスト取締役会長)
ブラッドリー・ウィットフォード、、、アーサー・パーソンズ(ワシントン・ポスト取締役)
ブルース・グリーンウッド、、、ロバート・マクナマラ(第8代アメリカ合衆国国防長官)
マシュー・リース、、、ダニエル・エルズバーグ(元アメリカ合衆国軍事アナリスト)
アリソン・ブリー、、、ラリー・グラハム・ウェイマウス(キャサリン・グラハムの娘)
キャリー・クーン、、、メグ・グリーンフィールド(ワシントン・ポスト社説編集)
ジェシー・プレモンス、、、ロジャー・クラーク(ワシントン・ポスト上級法律顧問弁護士)
ザック・ウッズ、、、アンソニー・エッセイ(ワシントン・ポスト顧問弁護士)
ジュディス・マーティン、、、ジェシー・ミューラー(ワシントン・ポスト記者・コラムニスト)


始まりからワクワクがずっと続く、とても緊張感溢れる作品である。
難解さは抑えてエンターテイメント性を大事にしているが、押さえるところはしっかり押さえている。
メリル・ストリープとトム・ハンクス。
「ペンタゴン・ペーパーズ」ときたらこのくらいのキャストでということか。
当時の新聞の印刷されるまでの工程の面白さがしっかり見られるのはとても素敵。
特に最後の立体的なループを感じる印刷シーンは一際美しい芸術作品にも見えた。

The Post002

ベトナム戦争の泥沼化というのは、わたしにもイメージとして残るところがある。
ヒッピームーブメントとして。ドラッグ、サイケデリックロック,東洋趣味と瞑想、、、TVや雑誌で賑わっていたような。
何だかやる気あるのかないのか分からないような気怠い感じの人々と、、、
ベトナム還りの精神をやられてしまった兵士の悲惨で重苦しい印象も綯交ぜになっている。

「ペンタゴン・ペーパーズ」はアメリカのベトナムへの政治的および軍事的関与を記した極秘文書であり、このスクープは戦争の舞台裏を暴いたものとして大変なスキャンダルとなる。
ニューヨーク・タイムズの大スクープに始まり、すかさずワシントンポストも同じところから記事を入手し掲載する。
勝てないことが分かっていながら嘘を報告し続けただ戦争を長引かせた内容がズッシリと。47巻構成で文字数100万語。読み切れないわな。
その辺の顛末の描かれた映画。

The Post003

当時、長引く戦争に辟易し疑問視する国民が増えて来たところに、「ペンタゴン・ペーパーズ」と来た。
こりゃ人々は怒るわ。デモをしたりヒッピーになって飛んでしまったり。
政府は、それ自体に重大な機密情報が含まれていたというほどのものではなかったが、機密文書の漏洩が安全保障の脅威に当たると言う認識でこれを厳しく追及しようというスタンスだったようだ。
ニクソン政権が記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止め要求を出すなか、ワシントンポストの社主キャサリン・グラハムは会社の経営を考え掲載するか踏みとどまるかの大葛藤となる。迷いに迷った末一大決心で掲載にGoサインを出すのだが、、、
その後の裁判で負ければ反逆罪で投獄となる大きな賭けである。
それ以前に、株式公開した直後に差し止めが決まれば会社は彼女の何度も口にしていた「緊急事態」だ。

The Post004

この過程で、真実を世に出して会社と社員の生活をダメにするつもりかという派と偽りの戦争とニクソン政権を終わりにするためにも闘おうという派との間で対立する。一番苦境に立たされるのは、社主のキャサリン・グラハムに他ならない。
社員、顧問弁護士、政治家たちは只管自分の主張を繰り広げているばかり。基本そういうものだが。
彼女の鶴の一声で掲載は決まり、反響は大きく、他の多くの新聞社も追従する。

メリル・ストリープとトム・ハンクスの動き以外に印象的だったのは、ベン・バグディキアンであった。
彼は早い時点でこの重大機密書類を持ち出した人物を割り出していた。勿論、その友人は以前の仕事は辞めている。
ベンは盗聴の網を潜り彼とのコンタクトに成功する。隠れ家に置かれた膨大な書類の山に圧倒されるがそれを厳重に荷造りして飛行機のファーストクラスの座席を二つ取ってポストに持ち込む。
弁護士からはその情報の提供者などを聴かれるが答えない。しかしニューヨークタイムズと同じであることは告げてしまう。
これで彼らポストも同罪である。終始苦悩の表情でやるべきことを粛々とやっていた。
そして当のダニエル・エルズバーグであるが、書類を持ち出して守衛の前を通り過ぎる時、足を止め呆然と考え込む~いや考えるのではなくそこで躊躇するのだ。この気持ちとてもよく分かる。これ自体、勇気と決断の正義の犯罪行為とも謂えるか。

The Post005

この書類を世に出して当然の追及を受けるが、、、
裁判には6体3で勝つ。
メディアは統治者に仕えるものではなく国民に仕えるものである、と。
これで新聞業界、ひいては報道の自由は、危機を逃れた。新聞業界全体が信用を高めた。
裁判所から降りて来る彼女を迎える人々は年齢層は違えど女性ばかりである。
戦争に駆り出された夫や兄弟の還りを待つ女性たちがこころから祝福していた。
メリル・ストリープだと殊更絵になるところ、、、。

The Post006

物語の最後は、「ウォーターゲート事件」を匂わせて終わる。
ニクソンが、ワシントンポストをあらゆる場から締め出す電話を必死に掛けているところ。
自動ロックのドアの鍵の部分にテープが貼られ明らかに侵入者のいることが警備員によって通報される。
そしてエンドロールへ。盗聴工作であるが、それがあらぬかたちへ
(この後のワシントンポストの追及でニクソンは退陣に追い込まれる)。

The Post007

夫の自殺で会社を引き継いだキャサリンを軽んじる周囲の大物に囲まれ、新たに株の公開や報道の在り方を巡る苦悩など、彼女の細やかな感情の起伏の分る繊細な演技は、物語に充分説得力を与えていた。
見応えのある映画であった。音楽はジョン・ウィリアムズ。聴かせる。





AmazonPrimeにて










ケープタウン

Zulu001.jpg

Zulu
2013
フランス、南アフリカ共和国

ジェローム・サル 監督・脚本
ジュリアン・ラプノー 脚本
キャリル・フェレ『Zulu』原作

オーランド・ブルーム、、、ブライアン・エプキン (強行犯撲滅課の刑事)
フォレスト・ウィテカー、、、アリ・ソケーラ (強行犯撲滅課の警部)
コンラッド・ケンプ、、、ダン・フレッチャー (強行犯撲滅課の刑事)
イマン・アイザックス、、、ジャネット(婦人警官)
ジョエル・カイエンベ、、、ジーナ
インゲ・ベックマン、、、ルビー (ブライアンの元妻)
ティナリー・ヴァン・ウィック・ルーツ、、、クレール・フレッチャー
レガルト・ファンデン・ベルフ、、、デビーア
パトリック・リスター、、、ジュースト・オパーマン博士
タニア・ヴァン・グラーン、、、タラ
ランドール・メイジエ、、、キャット(ギャングのボス)


実にヘビーでダークな内容。
オーランド・ブルームとフォレスト・ウィテカーの動と静の主演コンビが素晴らしい。

Zulu002.jpg

アパルトヘイト~真実和解委員会は勿論、ズールー人という民族、、、が基調にある。
この殺伐とした治安も何もない南アフリカの都市ケープタウンが舞台。

警官も含めよくもまあこんなに人があっさり殺されて(殺して)ゆくもんだと感心する。
元々治安の悪いところに、極めて悪質な薬が絡む。
この薬は、所謂(新種の)麻薬のような装いをしているが、そうではなく化学兵器の一種として秘密裏に研究開発が進められている黒人だけ殺す攻撃性や自殺願望を高める薬なのだ(アパルトヘイト時代に始められ、中断されたが再開されたという)。
しかもその人体実験にホームレスになった黒人の子供たちを使っていた。
警察も失踪~ホームレスの子供の捜査など全くしない。都合の良い実験材料だ。

Zulu003.jpg

一体どこのレベルがこの薬の開発をやらせているのか。
つまり資金の出所だが、それが形の上では、何とか警備会社とかいっていたが、実際どこなのか。
こういうところでは、いつどのような形で巻き込まれるか分からない。
普通に暮らせる場所があるのか。
アリも捜査を進める中で、過去のトラウマに何度も新たに向かい合う経験を重ねてゆく。
子供時代がフラッシュバックする。

現場を嗅ぎ回り真相を暴こうとしている刑事と少し前まで黒人を虐殺していた白人の警察上層部の意識の違い。
どうこころを整理すれば同僚として仕事が出来るようになるものか(この辺はアリのような理性がないと無理だと思う)。
上は常に事件の極めて表層の直接の実行犯だけ特定して事件の深層~構造には一切触れずに蓋をして終わりにしようとする。
このパタンはよくクライムもので目にするところだが、この映画にはリアリティが感じられた。
やはり歴史的背景は大きい。今現在もまだ問題は継続している。

Zulu004.jpg

アリ・ソケーラは自身、幼い頃に父を虐殺され自分も重傷を負わされている。そして息子の捜査に手を貸した母も殺害された。
しかし、彼は飽くまでも刑事として理性的に真摯に事件に臨んでいる。
こうした内省的で理知的な役にフォレスト・ウィテカーはピッタリだ。
彼と組む型破りのアル中で女好きの相棒ブライアン・エプキンをオーランド・ブルームがワイルドに演じる。
実に好対照だがどちらも鼻の利く勘の良い絶妙のコンビである。
ここに自主的にメカ・パソコンに強い女性警官ジャネットが加わることで情報収集力が倍増し捜査が加速する。
この力は大変大きい。敵も様々な偽装、隠蔽、目くらましを打って来る情報戦争でもある。

しかし真相に近づくことが、そのまま解決に繋がるというような単純なものではない。
警察の組織力が、上がダメな分、まるで発揮されないのだ。
もう真実に対し誠実な能力のある者だけが、謹慎処分を受けつつ事件に立ち向かわざるを得ない。
この不条理である。結局少数の分かっている者だけで闘うしかないのだ。
だから治安も悪いのだろうが。

Zulu005.jpg

最後はアリ・ソケーラはやんちゃなブライアン・エプキンの制止を振り切り、単身悪のアジト~新薬研究所に乗り込み、ケリを付けようとする。これまでの怨念が爆発した鬼気迫る表情で敵を倒してゆく。
ブライアンも後から乗り込み、アリの後方支援をするが、彼は悪の権化である生物化学兵器の開発主任である博士を砂漠の真っただ中へと只管追い詰めてゆく。もはや弾丸も切れ血だらけの素手しか残っていない。
鬼神のような顔でアリは、今や力尽きて歩けなくなった相手を無言で殴り殺す。
翌日になり、博士の遺体はブライアンの乗る軍用ヘリで発見される。
降りるとブライアンは、近くの木に寄り掛かって息絶えているアリを目にするのだった。
痛恨の極み。深手を負っていたことからの出血死かも知れない。脱水症状も絡み。

こんな犠牲を払い、この一件は本当の出資者はともかくそれを実行していた組織の壊滅に至った。
何と言うか、ダークでヘビーな物語である。
オーランド・ブルームは途轍もなくタフな役を熟したものだ。
ここまでタフな刑事はそうはいないぞ。
最後は理性も何もかなぐり捨てたフォレスト・ウィテカーのアリの心情もよく分かるが、もう死ぬしかない流れであったのは、ファンとしてちょっと残念(笑。

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余り観たくないがよく出来た映画ではあった。でももう観たくはない。
主演のコンビが言う事なし。
美しいロケーションとの絡みがヘビーさを際立たせていた。




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マトリックス レザレクションズ

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The Matrix Resurrections
2021
アメリカ

ラナ・ウォシャウスキー 監督・脚本・製作
アレクサンダル・ヘモン、デイヴィッド・ミッチェル 脚本
ジョニー・クリメック、トム・ティクヴァ 音楽

キアヌ・リーブス、、、トーマス・A・アンダーソン / ネオ(ゲームデザイナー)
キャリー=アン・モス、、、ティファニー / トリニティー
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、、、モーフィアス
ジョナサン・グロフ、、、スミス(デウス・マキナCEO)
ジェイダ・ピンケット・スミス、、、ナイオビ(アイオのリーダー)
ランベール・ウィルソン、、、メロヴィンジアン(エグザイルのリーダー)
ジェシカ・ヘンウィック、、、バッグス
ニール・パトリック・ハリス、、、アナリスト(セラピスト)
プリヤンカー・チョープラー・ジョナス、、、サティー
マックス・リーメルト、、、シェパード
アンドリュー・ルイス・コールドウェル、、、ジュード・ギャラガー
トビー・オンウメール、、、セコイア(ハッカー)
エレンディラ・イバラ、、、レキシー
ブライアン・J・スミス、、、バーグ
クリスティーナ・リッチ、、、グウィン・デ・ビア
チャド・スタエルスキ、、、チャド
エレン・ホルマン、、、エコー


かなり長い映画なのにうっかりポチっとしてしまった為、観る事となった(笑。
出て来る人もやたらと多いし、癖も強いし、実体なのかアバター(この言い方は無いようだ)なのか、コンピュータのデータに過ぎないのか、、、。
その場所も、夢か現か、仮想現実か、、、何をわたしは観ているのか、、、映画~エンターテイメントを観てるのよ(爆。

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わたしは、実は「マトリックス」の3シリーズは観ていない。確か最初の「マトリックス」(1999)は観ていたけど、、、。
これSFには違いないが、あのキアヌ・リーブスの弾丸を避ける余りにも有名なポーズだけでご馳走様となっていて、、、
キアヌ・リーブスのクールさとエージェント・スミスのしつっこさの印象しかない。
「マトリックス リローデッド」、「マトリックス レボリューションズ」は恐らく観ていないと思う。
それで4作目をいきなり観て、どうのこうの言う権利はないと言う前に、何だか分からない(爆。
ただ、キアヌ・リーブスもキャリー=アン・モスもお年は召されましたな。
モーフィアスはやはりローレンス・フィッシュバーンがしっくりくる。一度以前観ただけなのに、存在感というものは大きい。

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通常の感想の書き方は無理なので、印象的な所だけを箇条書きしたい。
若い人々がいっぱい出ているが誰が誰なのか、、、。
把握は難しいが、後半に現れるサティーと言う子がとても印象に残った。
こうした空間である。突然出て来て凄い役割を担っても不思議な感じはしない。

AIの作る仮想世界で人間の体力?が発電エネルギーとして使われているというところからして奇抜な発想。
トーマス・A・アンダーソンとトリニティーの接触によって生じるエネルギーがとりわけ凄いらしい。
接触し過ぎると危険という事で、ふたりの距離が重要なんだと、、、。
空間の安定のために。ふ~んそうなんだ(ローラではない)。

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面白いVFXだなあと思ったのは、オリジナルモーフィアスが粒子状の塊で現れた姿。
何でもプログラムが現実世界にアクセスしたモーフィアスのようで、「エクソモーフィック粒子コーデックス」と言うようだ。
だいたい、ここに出てくる人たちは、皆仮想現実の空間に現象しており、オリジナルは船の中とかで「アップルシード」みたいに首にコネクタ挿して分身を形成し活躍させている。
つまりそのフィールドには、コンピュータプログラムの実体化したモノと人間のオリジナルから形成されたモノがほぼ同様の人型で出現して会話したり争ったりしているのね。でもその確認は船?の中のモニターのデータの動きで確認しているようだ。現実的な像ではなく。

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「鏡のハッキングは大変だ」と言うのも印象に残る。
確かに鏡から出入りしていた。それ以上のコメントはわたしには無理(笑。
「モーダル」もパソコンの別窓という感じで捉えてよいようだ。
現ブラウザに対するメタレベルのブラウザ。
それで何となくわかる。こういうSFはとかくIT用語を利用する。

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ともかく、何をどうしようとか言う前に、この物語は、ネオとトリニティーの純愛物語なのね。
誰がどうなろうが、どんな犠牲を払おうが、トーマスは愛するトリニティーを救うという。
でもそれが多大なエネルギーを得る事にもなるのなら皆も協力する、という噺だったのかどうなのか、、、。

その辺、わたしにはどうもはっきりしないのだが、、、
なんせ、機械同士が電力の争奪の為に闘ったとか言っているし。
そうそう戦闘ゲームの要素も強かった。特に終盤。
あの辺、「バイオハザード」の対ゾンビの闘いのイメージに近い。照明演出も含め。

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VFXが凄いわね。初代モーフィアスの粒子状の姿など、かなりパワフルな3D造形だ。
迫力も充分であったが、格闘シーンがどうも今一つなもたつく感じであった。
もう少しシャープな動きが欲しい。
キアヌ・リーブスよりキャリー=アン・モスに切れが感じられる。

全体として緻密に煉られたSFアクション映画であった。






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ミセス・ハリス、パリへ行く

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MRS. HARRIS GOES TO PARIS
2022
イギリス

アンソニー・ファビアン 監督・脚本
ポール・ギャリコ 原作
キャロル・カートライト、キース・トンプソン、オリヴィア・ヘトリード 脚本
ラエル・ジョーンズ 音楽


レスリー・マンヴィル、、、ミセス・ハリス(軍曹である夫を失った未亡人、家政婦)
イザベル・ユペール、、、マダム・コルベール(ディオールの敏腕マネージャー)
ランベール・ウィルソン、、、シャサーニュ侯爵
アルバ・バチスタ、、、ナターシャ(ディオールのモデル)
リュカ・ブラヴォー、、、アンドレ・フォーベル(ディオールの会計係、ナターシャの恋人)
エレン・トーマス、、、ヴァイ・バターフィールド(ハリスの親友)
ローズ・ウイリアムズ、、、パメラ・ペンローズ(ハリスを頼る女優の卵)
ジェイソン・アイザックス、、、アーチ―(ハリスを見守るご近所さん)


ポール・ギャリコ原作とは。そうなんだ。と思った(笑。何がそうなのか、はともかく。
心地よい映画であった。美しいドレスは充分、目の保養になったし。
ミセス・ハリスが働く屋敷で目にした500ポンドのクリスチャン・ディオールのドレスに一目惚れする場面から惹き付けられる。
導入からしてメゾンのファッションショーで披露されるドレスに身が入る。
1950年代のパリが素敵。

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ナターシャはディオールの顔でもあるモデルをこのまま続けるか、哲学の勉強をもっと深めるか迷っている女性であるが、その役を演じたアルバ・バチスタも女優をこのまま続けるか哲学に専念するか迷っていたところだったと言う。
役と自分が一緒なので息を吹き込み易かったらしい(笑。ポルトガル語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語に堪能だと言う。
(優秀な女優さんてかなりいるのね)。
まあそれにしてもこういう美しい人がDiorを着るとこうなるのね、というのを堪能できた。

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ミセス・ハリスを演じたレスリー・マンヴィルはイギリスを代表する大女優という事だが、映画に疎いわたしは、知らなかった。
大変細やかな表情の変化で気持ちや意思を雄弁に伝える事の出来るチャーミングな女優さんである。
そして何と言ってもイザベル・ユペールの存在感の圧倒的な事。
男性陣もなかなかのものだった。特にシャサーニュ侯爵役ランベール・ウィルソンのいぶし銀の演技は冴える。
他にもリュカ・ブラヴォーの真摯で献身的な姿勢とジェイソン・アイザックスの渋さもしっかり物語を支えていた。

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ミセス・ハリスの天真爛漫な生き方が、関係する人々を全て巻き込み、彼らを解放して行くところが爽やかで清々しい。
しかしイギリスから突然やって来てDiorに紛れ込んだ家政婦がスタッフのストライキや改革を組織するのは、ファンタジー~荒唐無稽すぎるところではあるが、、、。
どうしても一つの事で成功を収めるとその殻を破って次のステージに行く~自分の更に欲する場所に進展することが難しくなる。
自分で自分を堅苦しく縛っている場合もある。
ここでは特にマダム・コルベールか。Diorというメゾンの伝統と格式にディオール自身よりも拘っていた。

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自分の改革案をディオールに伝えられずにいたアンドレもミセス・ハリスに乗せられ結局ディオールを動かしメゾンの経営状態を改善することになる。ついでに彼女のお節介で、高嶺の花であるナターシャを彼女にすることが出来る(こりゃミセス・ハリス様様だわ)。
ナターシャも本当に自分のやりたい事を選択して哲学に進む。サルトルの話ばかりしていた彼女だ。ミセス・ハリスもそれを知っていて後押しする。肝っ玉母さんみたいなヒトだ。

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しかし、必死で貯めた金を叩いて買った(作った)一点ものも超豪華ドレスをパメラに頼まれ貸してしまったお人好し振りは、最大の失敗か。
その反省的思考はシャサーニュ侯爵や家政婦として勤めていた主人に対しても示される。相手に対する敬意は肝心だ。
まさか、わざとドレスを焼いて、プロデューサーの気を引こうとするなんて、、、飛んでもない女だ。
恩を仇で返すの見本みたいなもの。

しかし色々とお世話になったDiorメゾンのスタッフたちが、また新たに高価なドレスを彼女に送ってくれる。
シャサーニュ侯爵も薔薇の花束を。
それを着て軍人何とかパーティーに毅然とした佇まいで現れ会場の注目の的となる。
アーチ―と楽しく踊るミセス・ハリス。
ファンタジーが現実となったような噺だが何だか泣けてくる場面が幾つもあった。
何と言うか所々で刺さるのだ。
ミセス・ハリスの悪戯っぽいチャーミングな笑顔と美しい絵が感性に訴える。

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キャスト皆が振る舞いも含め大変綺麗であった。
音楽もフィットしていた。
物語自体は奇想天外であってもとても心地よいファンタジーに昇華されており、後味も良い。




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ふくろう

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2004

新藤兼人 監督・脚本
林光 音楽

大竹しのぶ、、、ユミエ(母)
伊藤歩、、、エミコ(娘)
木場勝己、、、ダム作業員A
柄本明、、、ダム作業員B
原田大二郎、、、ダム監督
六平直政、、、電気屋
魁三太郎、、、電気屋上司
田口トモロヲ、、、水道屋
池内万作、、、巡査
蟹江一平、、、引揚援護課の男
大地泰仁、、、浩二(エミコの幼なじみ)
塩野谷正幸、、、警視
江角英明、、、村長
加地健太郎、、、ダム所長
上田耕一、、、電力支所長
松重豊、、、水道課長
松波寛、、、福祉課長


大竹しのぶと伊藤歩の主演ということで、失敗はないはずと、観てみた。
大当たり(笑。

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希望ヶ丘開拓村の最後の一軒屋を舞台に描く室内劇。
舞台にそのままで移行できそうな映画。
とても強かなユミエとエミコ母娘のどん底の苦境からの脱出計略が面白可笑しく展開して行く。
(大竹しのぶに負けぬ伊藤歩の身体をはった迫力の演技は際立った)。
舞台を思わせるような演技とも謂える。
非常に悲惨で重い現実であるが軽妙にコミカルに描かれてゆく。

背景としては、ヒロインの親たちは国策で夢に溢れ乗り込んだ満州であったが、戦争勃発の為引き上げとなる。
帰国後、入植することになった開拓村の土地は全く農地に向かず、彼らは疲弊し尽くし失意と極貧を背負って逃げるように出て行き、残ったのはユミエとエミコの母娘だけとなっていた。彼女らは出て行かないのではなく、何処にも行く当てがなくそこに居続けるしかなかったのだ(更なる弱者)。

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まずは飢え死に寸前のユミエとエミコの母娘の現状から始まる。
木の根なんかもう喰ってられない。全然味もしない。ドブネズミのような姿でふたりは暮らしている。
そこで一念発起。風呂に入り綺麗にして開拓村の旗・横断幕みたいなものからミシンでそれぞれふたりのワンピースを作る。
そして母がなけなしの金で電話をかけにゆくと、、、

男たちがやって来る。ひとり、またひとりと、、、。
ダム工事現場の作業員。酒が回ると公共事業の矛盾を愚痴る。国は税金をばら撒いているだけ、、、とか。
電気屋と水道屋。七曲りを登ってここまで、水道、電気を引くことの不合理を説く。税金の無駄遣いだ、いつまで居座るのかと。
それから作業員の同僚や上司、電気屋の上司。部下が失踪しているとこぼすが、財布には中間でピンハネしているらしくかなりの大金を持っている(来る客たちは皆思いの他金を持っているのだ)。

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ひとりひとり売春で金を巻き上げてゆく。
一回一回の調子に乗った晩酌噺と毒を呑まされてのオーバーアクションの死に際が面白いので飽きることがない。
(この展開が全てシステマチックなのだ。遺言を一言残すのも笑える)。
次第に彼女らの食事は豪勢メニューになってゆく。
鰻重、カレー、寿司、すき焼き、最初の頃とは段違い。喰い方も迫力ある。
止められていた電気、水道が繋がり生活に余裕も生まれて来た。
何と、ふたりで楽しそうに見ているのは世界地図である(でかい希望が芽生えて来たぞ)。

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そしてやって来るのが警官。引揚援護課の男。
この辺から少し錯綜した複雑な絡みとなる。
しかしやることは皆、同じ。
最初の頃は、母ユミエが男たちの相手をしていたが、ピントはズレているがくそ真面目で使命感を持った引揚援護課の男からは娘のエミコが相手をするようになる。こんなものチョロいわよのノリである。母37歳。娘17歳である。肝が据わっている。
そして開拓村から出て行ったエミコの幼馴染の青年。
この青年だけはふたりにとり特別な存在であった。共に国に振り回され極貧のなかをのたうち生き抜いてきた者である。
しかし着いた時は彼はもう瀕死の状態。不毛の地とは謂え故郷で死のうと独り戻って来たのだ。
噺では両親は共に生活苦の中で病死、自殺を遂げてきたという(初めてこの母娘が泪する)。

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ここで、品性下劣な男どもは母娘が皆毒殺して行くが、引揚援護課の男とエミコの幼馴染の青年は所謂、まっすぐな理想を胸に抱く者である。その2人を射殺するのが警官なのだ。国家権力によって彼女らの仲間は悉く殺されてきた構図となる。
この警官も母娘の連携で仕留め、合計9人を葬り、金も充分溜まり、ふたりはすっきりサッパリとここを出て行ったようだ。
もうこの時点で娘のエミコの方が母よりハードボイルドであっけらかんと勇ましくなっている(笑。
(きっと国外のリゾート地にでもトンずらしているのだろう)。

大竹しのぶの艶のある巧妙な演技と伊藤歩の飄々として大胆な演技を堪能する作品でもあった。
こうしたひとつの室内劇では、演者の技量が決めるところは大きい。
男性陣の演技も含め、充分面白い映画であった。






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黒振り袖を着る日

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柴山健次 監督

きっと忘れない:
2013

上田慎一郎 原作
上田慎一郎 柴山健次 脚本

門前亜里、
福田英史、
美紀乃、
小野孝弘、
藤本浩二、
白木あゆみ


これが一番、面白かった。
地方の警官が深夜呑んでしまった人の車を代行運転して農道を走っていると、ひとを轢いてしまう。
驚いて見ると女子高生なのだ。

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妻にはうり坊を轢いてしまったと連絡し帰りが遅くなることを告げる。
誰も見ていない道であり、女子高生もこの地域の子ではない。
何処かに処分しようとするが、突然朝になりむくっと起きる。
傷一つ無く、車のフロント周りも全く損傷は無い。つまりこれは警官の幻想か?

その子は、何とこの警官が東京で刑事をやっていた時に麻薬の売人逮捕の際、ピストルの誤射で殺された男の娘であった。
(この時、正当防衛として彼は特に咎められなかったという。しかし目撃者の娘の首を絞めていたはず)。
田舎の農道を深夜走っている際にタイミングよく轢かれるトリックなど出来るはずもない。
この子は、霊なのか、警官の罪悪感による幻視なのか。
かなり明確な復讐の悪意と害意の塊である。

今度生まれる子供の名を警官の妻に向け告げさせ、それで満足して消える。
最後に警官の銃声が響く。


そらぞら:
2007
田中淳一、柴山健次 脚本

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東海林愛美
加藤真弓
谷中啓太
内田愛里
納谷英樹
古守史佳
藤井寿美恵
中里文音


聖子が東京から郷里に戻ると、知恵がそこにいる。
幼馴染で歌手として東京で頑張っていたはずの彼女が何故かここにいた。
兄の葡萄園を手伝っていることを訝る。
恋人かと思うがそうでもないらしい。
歌も頼めば唄ってくれるが、、、。
或る時、自転車での坂道で酷く咳込む。
その後、彼女は病で亡くなったようだ。
今は聖子が彼女のギターを弾いている。

儚い情感を淡々と描いたものか。


黒振り袖を着る日:
2006
荒木敏子、柴山健次 脚本

金澤ゆかり
小橋川よしと
安野 遥
内田清美
神野信人
山寺正敏

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これは布団屋さんの娘と酒屋の息子が結婚するまでの噺。
娘は彼氏に対して自分の気持ちが素直に出せずにずっとくよくよしていた。
布団を仕立てて欲しいというお得意さんのおばあさんの戦時中の恋人との噺に触発される。
素直になりなさい。
その一言が沁みてそのおばあさんの仕立てた黒振り袖を着て結婚式を挙げ、その後それをおばあさんの布団に仕立て直した。
布団や振り袖そして戦時中の恋の話など、日本の古い伝統と若いカップルの葛藤を絡めて描いた作品。
言わんとしていることは伝わる。

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一番最初の噺が面白かったかな。
若い女優さんもよい味を出していた。



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トルソ

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2010

山崎裕 監督・脚本
佐藤有記 脚本

渡辺真起子 、、、ヒロコ(アパレル会社事務員)
安藤サクラ 、、、ミナ(ヒロコの異父の妹、ファッション誌関係?)
蒼井そら、、、モデル(ミナの業界で活躍する)
ARATA、、、酔っ払い男
石橋蓮司、、、レンタカーの店員
山口美也子、、母


画面の暗い場面が多くてイラつく。
暗いところでモゴモゴは極力止めて貰いたい。

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トルソ(石膏像)をデッサンしたことはあるが、風船?と言うのが珍妙。
だが、そこそこそんな形に見える。つまり彼女にとり不必要な要素のないヒトなのだ。
それを自分を慰めるために使っている女性となれば、かなり不気味にもとれるが、映像としての撮り方は結構綺麗で情感もあり神秘性も感じられた。それからこれは完全に能動的な立場で関われる(受け身はない)。
面白かったのは、ヒロコが海~他に誰もいないプライベートビーチみたいな浜岸に降りて、素っ裸になり、膨らましたトルソと共に無邪気に心底楽しそうに浅瀬で戯れている絵が実にシュールであった(笑。
かなり危ない感じに思えたが。

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変幻自在の安藤サクラ演じるミナは、ここでは素直で奔放で遠慮はないが配慮は出来る憎めない妹だ。
姉の秘密を知っても最後まで知らぬ顔で通していた。
結局、華やかな都会での夢を諦め故郷で介護職に就くことに決めるが、その際に初めて姉にも自分の外に出る事を促す細工をして出る。粋な計らいだ。
渡辺真起子演じる姉のヒロコの内向的な闇の塊感は、物語の進むにつれ親の作る環境が酷く影響していることが分かる。
父親の墓前に線香もあげる気すらない、母のあの物言いからも充分に推察できるところ。
性に対するトラウマや不安が彼女を長いこと閉じ込めている。
完全に自分が主導権を持ち統御する性の行為は癒しの過程でもあろう。
まずは安心で自由な世界の保証だ。あの海辺は印象的、、、。趣味の世界として引き摺り続ける~安住する場合も多い。

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アパレル会社の娘たちって、週一で合コンというのやってるの?
まあいくら何でも忙しないわね~。
こりゃ、ヒロコじゃなくてもちょっと距離置きたくなるでしょ。
ヒロコの場合は特にだろうけど。
彼女の場合、料理やパッチワークをしたりと趣味も多い。
無駄な時間過ごすよりは家で静かに暮らした方が良いわね。

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かなりテーマ的には重いし暗くなる噺であるが(実際画面の暗さにイラつくところはあるが)主演女優の飄々とした余裕ある演技と常にどことなくユーモア漂う演出に救われている。
寧ろ軽妙な感じで流れ、全く激昂して争うような場面もない。
そこが品があって良い。
ミナの東京での仕事ぶりももっと観たかったところ。
あの華やかな仕事を諦めるのは、勿体ない。
もうちょっと頑張れなかったか。まあそこにいたらカメラマンのDV男から離れられないこともある。
ミナにとっては暴力男とキッパリ別れることが肝心であろう。

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最後に郷里に帰ると言うミナを見送って、部屋に戻ってみると、妹が自分の誰にも知られてはいけないモノを堂々とクローゼットの中に上着を着せて飾って置くではないか。しっかり空気を入れて膨らんだ形で。
全て知っていたのだ。おくびにも出さずにいたが。
そしてヒロコは大事なトルソから卒業する決意を胸に秘める。
異なる現実へと一歩踏み出す彼女の早朝の表情が明るく、何らかの確信が窺えた。
「私たちはまだまだいけるよね」(ミナ)。
その通り、と言いたい(爆。

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この映画は、渡辺真起子と安藤サクラの両主演を堪能するものであるが、どちらの存在感も半端ではなかった。
達人の域にある演者がそのキャラクターそのものに自然と成ってしまっているというか。
もう、上手く演じているとかいうレベルではない。

あのバーで出逢いラブホで先に寝てしまった男はもしかして井浦新?
もう出る映画というか役柄選んでよ、と謂いたい(笑。




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幸せのレシピ

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No Reservations
2007
アメリカ

スコット・ヒックス 監督
キャロル・フックス 脚本

キャサリン・ゼタ=ジョーンズ 、、、ケイト・アームストロング(フランス料理店料理長)
アーロン・エッカート、、、ニック・パーマー(副料理長の後任、専門はイタリア料理)
アビゲイル・ブレスリン、、、ゾーイ(亡くなった姉の娘)
パトリシア・クラークソン、、、ポーラ(レストランオーナー)
ボブ・バラバン、、、セラピスト


噺が自然に流れる。
余り無理が感じられない。大きな起伏もない。
観る事に抵抗がないのですんなり観れた(笑。

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こういうしっかり出来ていて、サラリと鑑賞可能な映画は良い。
やたら重くて暗いのだけど内容的にそれ程でもない映画って結構多いしね。
ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』(2001)のリメイクだそうだ(そちらも観てみたい)。

キャストも良い。
主演の3人は言う事なし。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズってこういう優秀な出来る女が似合う人だわ。
アーロン・エッカートはチャラいんだけど、やるべきことはしっかり熟す頼れる男が似合う。
アビゲイル・ブレスリンは多感な複雑な心境を見事に演じていた。なかなかのもの。子役は凄い子が多い。

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やはりまだ幼い娘だと母を失くして叔母に引取られるということは、親しい間柄であっても難しいことだろう。
しかもシングルマザーの母との結びつきは大変強い。
母に拘り他を拒絶することは分かる。
多くのファンを持つ有名料理長のケイトの作るゴージャスな料理もほとんど食べない。
そう、子どもは食べないことで抵抗を示す。
(食べることは相手を認め、従属することにも繋がる)。

姪もこころをなかなか開かないが、ケイトの方も産休の副料理長の代わりでやってきた腕の良いニックに対しこころを開かない。
確かにケイトとニックは性格的にかけ離れている。拘りが強く自閉的な完璧主義の彼女とオペラを厨房に流して唄いながら料理をする明るく社交的な彼は直ぐに打ち解けるようには見えない。ただしお互い腕は認めあっている。
まあ、新しい人間関係の構築はそう容易いものではないことは分かる。
このゾーイとケイトは、頑固で似た者同士かも知れない。
ゾーイはずっと母との思いを大切にして何かと籠ってしまう。
ケイトは自分の作りあげた厨房に誇りを持ち自分の統制からはみ出る他者の存在は認められない。
能力は認め合っていても気持ちの問題は大きいものだ。

No Reservations003


だが、その気持ちの解れる発端が、厨房に姪を連れて行った時に、ニックのまかないパスタをゾーイが凄い勢いで食べたことだった。
こうした料理の映画である。充分予想がつくものだが、そうした王道的流れである。
この予定調和は心地よい。やはり料理でいかないと。
ゾーイがニックに馴染み、ケイトも彼に対しこころを開けば、良い感じに展開するが、その通りに進む(笑。
間に子供が入るのは強い。

このような義理の関係は難しいと思うが、子どもとの関係ひとつで、どれ程の事が解消し、上手く流れ出すか。
良い形でこころを開く場が成立する事が肝心である。

アメリカでは(欧米では)職場の上司がセラピーを受けなさいと言えば受けなければならないのか。
ケイトもポーラの命令でセラピーを受けていたが、セラピストがなかなか渋い気の利いたアドバイスをくれる人であったのも救いか。
「自分で作ったレシピがベストだよ」。
それだけでなくケイトの新作料理の評価もしてくれるのだから得難い人である。

No Reservations005

結局、ゾーイが間に入る形で、何度も別れる危機に瀕したケイトとニックは、これまでの高級レストランを飛び出し~解放されて、新たに3人で経営するビストロを始めることに。当然腕が良いので大繁盛である。
絵に描いたようなハッピーエンドとなった。
良いと思う。

こころを開けるひとには思い切って開くこと。
頼れる人には気軽に頼る事である。




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二人小町

Two Komachis001

Two Komachis
2021
日本・香港

曽根剛 監督
平谷悦郎 脚本
芥川龍之介 戯曲『二人小町』原案

ハンナ・チャン、、、黎小町(キャリアウーマン)
エリズ・ラオ、、、黎小町(モデル志望のアルバイト店員)
和泉素行、、、王喜龍(死神)
ウェスリー・ウォン、、、黄(社長)
キコ・レオン
カーク
ベン・サー


原作未読。ベースがしっかりしている為か、アレンジしても面白い。
香港ロケ。そちらでも愉しめるか。
香港ならではの極彩色夜景とかは特になく、観光気分には浸れない。裏通りの世界か。

Two Komachis003

死神がふたりの小町という女の欲望に翻弄されるよく出来たお噺。
ふたりの主演女優がとても良かった。
何だかやるせない死神も人間臭くてよく分かる。
「運命」を突き付けられた女性の方も、そりゃ混乱し取り乱す。
これから、という仕事もある。どちらの小町も夢が叶えられそうなところにいる。
死にたくはない。
そのじたばたに死神も呼応する。よくこれまで死神やって来れたな。

Two Komachis004

そもそも死神がふたりの同姓同名の同じ歳の女性に恋をするという奇想天外かどうかはともかく設定が強引で面白い。
死ぬ時期が迫った時に、僕は死神で君はこうして死ぬとわざわざ言う必要もあるものか。
(まあ、これを告白することで、コメディが動き始めるのだが)。
しかも女性にあなたの子供が出来たなどと言われてコロッと騙されたり。
同姓同名で歳が同じなら身代わりも効くということから、ふたりの小町への関りも深まり噺もややこしくなる。
何にしても女性に弱く優柔不断な死神って通用するのか。

Two Komachis005

女の方はどちらも計算高く強かである。しかも腹黒い。
これはすんなり死ぬような玉ではない。
特にモデル志望のとても率直で可憐に見えた小町がかなりの悪であるのも効いている。
豹変ぶりが怖い。いくら夢のためとは言え、、、。
やり手のOL小町は如何にもという感じだが。
そう執着心か。どちらの小町にも根深くあるもの。生への執着心は勿論。欲望である。
最後、ふたりで死神を拒んだことを後悔していたが、、、。
(運命に贖うことも運命であるか。こうなるとどちらをとっても不幸ではないか)。

Two Komachis006

死神がやたらと人が良く振り回されやすい男であることでコメディとして成立している。
役者も哀愁があって良い。
そしてヒロインの女優が全くタイプの違う綺麗なオーラを放っていることが魅惑的な映画にしている。
面白かった。

Two Komachis002








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